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SpaceXロケット爆発とイスラエル衛星と中国 [サイバーと宇宙]

Falcon 9-Ban.jpg1日、Space-X社のFalcon 9ロケットが発射準備中に爆発し、4日に打ち上げ予定だったイスラエル民間通信会社「Spacecom」の通信衛星「Amos-6」が失われました
Falcon 9ロケットは、2015年6月に国際宇宙ステーションへの補給物資打ち上げ後に爆発失敗しており、それに続く業務打ち上げ失敗となりました。

米国防省は安全保障関連の衛星打ち上げをULAに独占させたくないことから、競争原理の導入を狙ってSpace-X社のFalcon 9を安保衛星打ち上げ用に承認し、今後新型GPS衛星「GPS III」の打ち上げ等を同ロケットで計画しているだけに、衝撃が広がっています

原因は探求中とのことですが、同衛星は「Facebook」と「Eutelsat Communications」が組んで活用し、サブサハラ地域にKaバンドでインターネットを提供する事を担っていただけに、FacebookのZuckerberg氏も「アフリカ大陸の起業家達をつなぐ衛星打ち上げ失敗に、深く落胆している」とコメントしています

ただ影響はこれに止まらず、イスラエル民間通信会社「Spacecom」の中国企業への「身売り」契約や、イスラエル衛星産業の維持にも関わっているとの複雑な世界を垣間見る話しに発展中です。全くの興味本位ですが、生暖かくご紹介します

1日付Defense-News記事によれば
Amos-6-Zak.jpg●「Spacecom」用の通信衛星「Amos-6」は、イスラエルの準国営企業IAIが約200億円で製造した同国企業史上で最も高性能の通信衛星だった。
IAI社は、米国企業等との衛星受注争いを3年がかりで勝ち抜き、やっと「Amos-6」受注を獲得し、今後のIAIの衛星事業部門の生き残りをかけ「Amos-7」や「Amos-8」の売り込みを開始していた所だった。

●そんな最中の8月24日、「Spacecom」は「Amos-6」の打ち上げ成功を一つの条件として、中国系企業「Xinwei Technology Group」の身売りを発表した。
●仮に企業の売却が成立すれば、IAI衛星部門が今後衛星を受注する可能性はほとんど無くなると考えられて居た

●しかし今回のロケット爆発&衛星喪失で、「予期しない惨事に企業は本質的な影響を受ける」とコメントした「Spacecom」の中国企業への売却話は不透明になった
●一方でIAIにとっては、保険料を受け取る「Spacecom」からの「Amos-6」代替衛星の受注の可能性や、中国企業への身売り話消失による将来衛星受注の「夢」が膨らむこととなったと、IAI重役が語っている

Amos-6.jpg●イスラエルの軍需産業専門家は、「IAIに取っては危機でもありチャンスでもある。全てはSpacecom社の交渉力と財力にかかっている。可能性は大きいとは言えないが、代替衛星を同社がIAIに発注する可能性はある」「一方で、既存の衛星を購入して活用する手段を執る緊急対策を好むのではないか」と見ている
●Spacecom社もIAI社も今後の対応については何も言及していない。ただしIAI社は1日付声明で「通信衛星事業は、IAIだけでなくイスラエルとの国にとっても戦略的なものである。国家として通信衛星製造ノウハウの継承が可能な態勢に向かうことを望む」と国としての対応も求めている

米空軍も爆発原因調査に協力
Amos-6-area.jpg●SpaceXの依頼を受け、米空軍衛星の同ロケットでの打ち上げを予定している米空軍も原因調査に加わっており、担当する宇宙&ミサイルシステムセンター司令官Samuel Greaves中将は、「今回の事故は米空軍衛星の打ち上げではないが、安全保障衛星の打ち上げに向けた安全と信頼性確保のため協力している」と声明を発している
●またNASAは、国際宇宙ステーションへの同ロケットによる打ち上げ時期延期の有無に関し明らかにせず、「(SpaceXへの)信頼に変わりは無い。本事案は打ち上げが容易でない挑戦である事を思い出させるが、我がパートナーは成功や失敗に中から常に学んでいる」との声明を出している
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複雑な国際情勢を表す一つの事象として取り上げました。

イスラエルと中国のよく分からない水面下での関係、米国軍需産業とのイスラエル企業の争い、中東におけるイスラエルの存在と米国の姿勢、米国の安全保障衛星打ち上げビジネスの行方等々・・・興味は尽きないですが、「魑魅魍魎:ちみもうりょう」が住む世界でしょうから、これ以上の接近は危険だと思います

生暖かく見守りましょう・・・

Space-X社の参入とULAの不誠実対応
「ロケットの着陸回収に成功」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-25
「混迷の米衛星打ち上げ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-24
「10年ぶり米軍事衛星打上げに競争導入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-03
「軍事衛星打上げにSpaceX参入承認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-27

他にも問題が:露製エンジンへの依存
「国産開発が間に合わない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-29-1
「露製エンジンを何基購入?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-30-2
「米国安堵;露製エンジン届く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-22
「露副首相が禁輸示唆」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-22

イスラエルと中国関連
「中国がイスラエル製レーダーそっくりを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-24
「イスラエルと中国が大接近」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-04-1
「中国に最新軍事技術流出」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-25-1
「起業大国イスラエル」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-20

イスラエルと台湾関連
「同じ小国イスラエルと台湾の米国関係」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-07-07-1
「日本とサイバー覚書きへ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-21
「イスラエルF-35は独自装備」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-05-1
「6種類の迎撃ミサイルでBMD演習」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-07-1
「意味不明:岡崎研究所が台湾戦闘機擁護」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-23-1

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