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「Baseline 9」契約成立:日本がNIFC-CAに邁進? [Joint・統合参謀本部]

Aegis FMS.jpg8月25日付Defense-Newsは、米国のFMS計画機関が12日に日本と韓国のイージス艦に最新の防空&ミサイル防衛システムである「Baseline 9」への能力向上を行う発表を行ったと報じました。

米側の発表では、海上自衛隊の新型イージス艦あたご級2隻と韓国海軍イージス艦(KDX-III Sejong-class)3隻に「Baseline 9」搭載を行うようです
改修はニュージャージー州の「Moorestown」とフロリダ州の「Clearwater」で、2022年5月までに、米海軍システムコマンドの元で行われるようです

イージス艦は、真上から降ってくるように襲いかかる弾道ミサイルと、海面上の低空から迫り来る巡航ミサイルの両方に対処する必要に迫られていますが、従来のシステムでは同時対処が困難との大きな問題を抱えていました。この問題を解決するのが「Baseline 9」への改修です

本日は、このFMS成立を契機に関連事項を復習します

「Baseline 9」とは
Baseline 9.jpg●「BASELINE 9」は、イージス艦システムに新たなCPUチップ等を付加し、航空機、巡航ミサイル、弾道ミサイルに(柔軟に)対処できる能力を与えるものである
●旧システムでは、脅威の距離や種類に応じてレーダーを選択して対処を考える必要があった。しかし今や、対処モードの切り替えにより、BMDやIAMDや通常防空を個別に選択できるようになった

●イージス艦システムをNIFC-CA構想で空母艦載機のレーダーやISR情報と連接することにより、イージス艦レーダーの探知範囲外の目標に対処可能になる
●また、従来の射程約100nmのSM-2ミサイルに代わり、自立シーカーを備えて「打ちっ放し可能」なSM-6ミサイル(ネット情報では射程230nm)と組み合わせ、対処可能範囲を拡大する

この「NIFC-CA構想」とは
Navy-Air-War2.jpgNIFC-CA構想は、新しいネットワークで各種航空機や艦艇と敵情報をリアルタイムで共有し、強固なA2AD網を構築する中国に対処しようとする構想で、FA-18、EA-18G、E-2D、UCLASSやF-35、更には米空母やイージス艦(Baseline 9とSM-6を含む)を連接する構想や試験が進行中

●2014年5月に当時の米海軍トップが、米海軍と空軍はアジア太平洋リバランス政策遂行のため、NIFC-CA構想推進のため協力していると言及し、「今から将来に向け、各軍種の情勢認識情報と攻撃能力を一体化し、目標情報をより遠方で察知することで、米海軍と空軍は経空脅威に対処していく」と語った

●また「海軍はNIFC-CA構想の要素を、米空軍との演習であるNorthern Edge(アラスカ)やValiant Shield(グアム)などで取り入れている」、更に「エアシーバトルの考えに沿って、全てのアセット等を戦術データリンクで結び、関連リンクが共有される事に取り組んでいる」とも表現した
Greenert china.jpg●更に今後の課題について「潜水艦、他の艦艇、航空機が共通の恩恵を受けられるようにすること」と明らかにした

●更にNIFC-CAの意義も強調し「NIFC-CAでは相手の装備や拒否システムの分析も行い、米空軍がどの分野で貢献できるかも吟味する」と語り、「鍵となるのは、各アセットが戦術ネットワークに加わることである。例えば空軍のF-35Aと海軍のF-35CやFA-18E/F、空軍のJSTARSである。そのことにより、海空軍が情報を共有できる」と訴えた

日本の関与について米軍事メディアは
●新ガイドラインの策定、E-2Dの購入や「Baseline 9」への更新は、自衛隊に実戦的で政治的な能力を提供し、米空母群の新作戦構想の一部として戦うことで、打撃力や攻撃範囲を拡大することになる

●米国は、2015年6月に4機のE-2D早期警戒機を約2000億円で日本にFMS売却することを通知し、また2011年には、日本はF-35の購入を決定している
●また2015年5月末には米国防省が、あたご級イージス艦2隻に、航空機と弾道ミサイルの両方に同時対処出来る能力を付加する「Baseline 9」への改修を、約80億円で実施すると発表していた

E-2D-1.jpg●米海軍では、E-2DとF-35と「Baseline 9」搭載のイージス艦は、NIFC-CA構想の鍵となるアセットである。NIFC-CAが可能な空母打撃群は、例えばE-2DやF-35の目標情報をイージス艦やFA-18に提供し、各アセットが保有するセンサーの捜索範囲を超える敵情報を把握する
●米海軍は既に関連イージス艦やE-2Dを配備し始めているが、日本の装備調達計画からすれば、米海軍のコンセプトに加わることは容易であろう。新ガイドラインの策定により、日本は装備使用の自由度が大きく拡大する

新ガイドラインは「日米両政府は、日本に対する武力攻撃への対処において、各々米軍又は自衛隊及びその施設を防護するための適切な行動をとる」と記している
●ただし、NIFC-CAの攻撃面の中核装備であるSM-6艦対空ミサイルを日本が購入するかは不明確である

そして中谷防衛大臣(当時)は
2015年6月29日、衆議院安全保障法制特別委員会でNIFC-CAに言及し、「NIFC-CAなど米軍の新コンセプトの検討も踏まえ、ミサイル防衛体制を検討していく」と述べ、NIFC-CA導入を視野に入れていることを明らかにした
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Inada-DF.jpg中谷前大臣は、THAADについても「・・の状況も確認しつつ、ミサイル防衛体制を検討していく」と述べており、稲田新大臣はてんこ盛りで色々検討されていることと存じます。
参議院選挙も終わったし、中国や北朝鮮がたっぷり脅威をアピールしていることもあり、新防衛大臣から何か御発言があるかもしれませんね・・・

それにしても、海上自衛隊がイージス艦を導入したのが1993年で、韓国が2008年なのに、「Baseline 9」へのアップグレードが同時期なんて・・・何かイライラします。
個人的な感情は抜きにして、それだけ米国は、日米韓の3カ国によるIAMD(防空&弾道ミサイル防衛)に力を入れているんでしょう・・・

米海軍NIFC-CAと関連装備
「日本もNIFC-CAに参加?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-11
「Baseline 9 :イージス艦の進歩」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-09
「米海軍のNIFC-CAとは」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-26

「kill chainからkill webへ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-15
「SM-6でBMD対処に成功」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-05
「NIFC-CAとSM-6連携」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-27
「NIFC-CAで空軍と協力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-23

日米韓3海軍共同BMD演習で試験を!
中高度を飛行する無人機MQ-9に弾道ミサイル追尾センサーを搭載する試験が実施中で、6月末のハワイでの日米韓海軍BMD演習で実験に成功した模様。どのような運用法が想定されているのか細部不明ながら・・・
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-08-24

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