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航空機防御用レーザー兵器に動き [米空軍]

Laser NG.jpg23日、米空軍研究所(AFRL)がNorthrop Grummanと、戦闘機にPODとして搭載する自己防御用レーザー兵器の「beam control system」開発契約を約40億円で結びました
契約によれば、2021年8月末までに完成させる事になっているようです

昨年10月にご紹介したLockheed Martin社開発の関連技術の話も併せて掲載し、全般理解の参考に供したいと思います

25日付米空軍協会web記事によれば
Laser HEL.jpg●同社によれば、「beam control system」は「Shield Turret Research in Aero-Effects (STRAFE) program」の一部で、戦術レーザー兵器のエネルギー出力を極限までコスト効率的に高めることを狙う計画の一部である
●この契約は、米国防省が長期計画で推進している、米軍全体の次世代兵器にエネルギー兵器を導入しようと目標に向けた新たな取り組みの一つである

2016年度予算からも、約10億円が本契約の研究開発、試験評価費として拠出されることになっている
●同社は、他の2社を退けて契約を獲得した


昨年10月の関連記事によれば
turret laser4.jpg2015年10月15日付Lockheed Martin社の発表によれば、音速に近い巡航速度で飛行中の航空機から、機体の進行方向以外へレーザー発射を可能にする技術が約60回の試験飛行により確立された
●軍用機に対する脅威は、敵航空機にしろ敵ミサイルにしろ、あらゆる方向から襲ってくるので、自己防御用の航空機搭載レーザー兵器は全周に発射出来る必要がある

●しかし物理学の法則により、音速近くで飛行する航空機の場合、機体と大気との摩擦で生じる振動(turbulence)に対処出来ないと、レーザーを機体正面の目標にしか有効に発射出来ない
●この問題を解決するため、LM社はDARPAやAFRLの要請を受け、(機体に装着するレーザー発射装置)「laser turret」のプロトタイプ開発を成し遂げた

●「空力対処光学制御turret:Aero-adaptive Aero-optic Beam Control」は、音速近くで飛行する航空機から、360度方向にレーザーを発射可能にする初めての「turret」である
飛行試験経費を抑えるため、ビジネスジェット機に搭載して2014年から約60回行われた飛行試験で、低出力レーザーが当該turretから発射され、全ての方向でその性能が証明された

turret laser3.jpg最新の航空流体力学を生かして「turret」形状を設計し、「deformable mirrors:変形可能型ミラー」を「turret」内に活用することでビーム形成と目標照準を確実にすることで、飛行中の空気抵抗による振動の影響を局限することに成功した
●この技術により、地上車両や艦艇に装備されるレーザー兵器と同様に、航空機でレーザーの利点を活用出来る。DARPAとAFRLはこの技術を活用し、高速航空機へのレーザー兵器搭載について検討することになる
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レーザー兵器の大きな欠点は、雲や雨など気象現象に影響を受けることです。特に日本の場合は、この点は避けられません

しかし利点も多いのです
Laser NG2.jpg速度が速く、ミサイルよりも同時多数目標への対処能力が高い。従って、中国の弾道・巡航ミサイルの飽和攻撃への対処能力が高い
電力が発生源なので、弾薬やミサイルと異なり、搭載量が無限大に近いし、物資補給を考える必要が実質ない。従って、物資補給が困難で、米大陸から遠く離れた西太平洋地域での作戦に適している

直進性が有り、照準が容易。また光線の力をコントロールしやすく、多様な目標に柔軟な対処が可能
●弾薬やミサイルに比べ、1発の単価が安い

装備開発から聞こえてくる課題は
装置の小型化、装置の冷却、精密な照準を実現する機材の精密さから来る「機材の脆さ克服」、破壊力に必要な出力確保、目標を外した場合の副次的被害極限策・・・等々です
上記を克服する可能性のある「光ファイバーレーザー」を、米陸軍用に製造開始の報道も有り、「戦場の様相を根本的に変える可能性がある兵器」として、特に米国国防関係者から注目や期待を集めています
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米軍は4軍を上げてレーザー兵器の開発に取り組んでいます。
小さな事から、出来ることから、将来に向けた技術圧倒的優位の確保を目指し、費用対効果を厳しく追及し、陸海空海兵隊全てが取り組んでいます。陸で、海で、空で、あらゆるドメインで取り組んでいます

まだまだ時間が必要でしょうが、急速に技術革新が進んでいます。

米空軍とレーザー兵器
「2021年には戦闘機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-21
「ACC戦略2015では?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-12
「米企業30kwなら準備万端」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1

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