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相殺戦略の焦点:敵に近接可能な無人機にレーザー兵器を [米空軍]

Pawlikowski6.jpg23日、米空軍の研究開発も司る「Materiel Command」のEllen Pawlikowski司令官(女性大将)がCSBA等が主催した「エネルギー兵器サミット」で講演し、国防省を上げて取り組んでいる「第3の相殺戦略:Third Offset strategy」について、最終到達目標地点(pointy end)との言葉を用いて重視事項を語りました

同「サミット」のテーマが示すように、エネルギー兵器の重要性と国防省の取り組みを語っているのですが、これと自立的無人システムを組み合わせ、エネルギー兵器開発の問題点にも対応しようとの方向性が伺えます

多方面に亘る「第3の相殺戦略:Third Offset strategy」ですが、重点方向や施策の柱を知ることで頭の整理に役立ちそうな気がしますので、ご紹介します

23日付米空軍協会web記事によれば
Pawlikowski9.jpg●Pawlikowski司令官は「Directed Energy Summit」で、エネルギー兵器(レーザーやEMP兵器など)の活用は、「第3の相殺戦略」において、最終到達目標地点(pointy end)あたりを占める位置づけにあると語った
●そして同大将は、自立性を持った(無人)プラットフォームと、膨大なデータを兵士が有効活用できるようにする事が、「第3の相殺戦略」の焦点だと言及した

●上記を共に手にすることを目指すが、仮に自立的無人アセットが使用可能で全データ融合が可能だとしても、十分なパワーと正確性備えたエネルギー兵器がなければ、「第3の相殺戦略」は達成できないと同司令官は表現した
●また、エネルギー兵器は「第3の相殺戦略を決定づける兵器になり得る」と述べつつも、出力の大きいレーザー兵器を早期に手にすることは容易ではないとも語った

●しかしPawlikowski司令官は、仮に自立運用可能な無人アセットが攻撃目標に接近できれば、それほどパワーが強くなくても所望の効果を発揮でき、正確性を確保できれば付随的被害も最小限に出来ると語った
●なおエネルギー兵器に関しては、次の空軍参謀総長候補であるDavid Goldfein大将が議会証言で、議会承認を得て同職就任を認められれば、同兵器の開発を強力に推進すると述べていたところである


まだ出力が弱く自己防御用だけを目指す段階
Pawlikowski4.jpg●一方でPawlikowski司令官は、空軍の航空機搭載レーザーに対する長年の研究と膨大な研究費用に関わらず、未だ想定されている強力なレーザー兵器は完成していないと認めた
●同大将は具体的に、現状の輸送機や戦闘機への搭載を考えた場合、レーザー技術は防御用には相応の進歩を見せているが、攻撃用には不十分だと表現した

●更に、より強力なレーザーはより複雑でより大量の電力を必要とすると述べ、米空軍は空対空戦闘での自己防御用「Shield計画」に着手しているものの、敵航空機を撃墜するほどのパワーには達していないと述べた
●同司令官は、より強力な電力を得ようとすれば、何かを犠牲にしなくてはならない状態にあると現状を表現しつつ、我々が理想を追求していけば、必要な能力をいつか前線兵士に届けることが出来ようと未来を見据えた

25日付Defense-Newsは他講演者の発言を
●米空軍特殊コマンド司令官Heithold中将は、「次の新兵器はエネルギー兵器で、AC-130への搭載だ」と述べたが、一方で「必要な予算を獲得するには、手押し車一杯の書類が必要で、書類準備に忙しい」と皮肉を述べた
●同司令官は一方で、レーザー兵器の交戦規程が必要だとも語り、技術の進歩に政策が追い付いていないと指摘した。無人機を攻撃するのか、航空機を狙うのか?

Laser HEL.jpg●また、現在もAC-130が搭載する弱い緑色レーザーは、レーザーポインター程度の出力しかないが、相手に向けただけで、敵は後に続く攻撃を恐れて大混乱に陥り、戦力発揮が不可能になる。このような効果も踏まえてエネルギー兵器の使用法や訓練シラバスを煮詰める必要がある

●本土防空を担当する第1空軍司令官Etter中将は、音速の5倍以上で飛来する超超音速ミサイルの迎撃はミサイルでは難しく、レーザー兵器が必要だと期待を示した
●一方で、空の安全に関する懸念を語った。弾道ミサイル迎撃への活用が想定されるが、目標に命中しなかったレーザー光線はどうなるのか? 友軍機や民間航空機に命中する恐れはないか? また宇宙空間の衛星を傷つけることはないか?・・・と疑問を披露した
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レーザー兵器を中心とするエネルギー兵器の特長は、電力が確保できればほぼ無限回数攻撃を継続可能で、かつ光速で目標の到達するので効果が即効であることから、想定される敵の同時大量攻撃や連続的に変化する戦場環境への対処が可能な点にあります

Third Offset.jpg一方で雨や雲の影響を受けたり、大出力レーザーの航空機搭載がまだまだ困難な状況にあり、そこを何とかしたい・・・との思いは良く理解できますし、この点を「第3の相殺戦略」をの最終到達目標地点の一つだと示して頂くと、頭の整理に役立ちます。

レーザー兵器を揶揄する慣用表現である、「いつまでたっても完成まであと5年」状態から完全には抜け出せていないのですね・・・
でも、この女性将軍の的確で正直な表現は、米空軍への信頼性を高めてくれると思います。F-35のBogdan中将のように・・・

7月1日に就任するであろう、新しい米空軍参謀総長Goldfein大将の本件に関する発言にも今後注目致しましょう!!!

第3の相殺戦略:Third Offset strategy関連
「次期政権と相殺戦力」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-04
「宇宙とOffset Strategy」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-04-01
「空軍研究所で関連研究確認」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-07
「慶応神保氏の解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-01-26

「CNASでの講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15
「11月のレーガン財団講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15
「9月のRUSI講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-12
「Three-Play Combatを前線で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-09

エネルギー兵器関連
「米陸軍が本格運用試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-14-1
「米企業30kwなら準備万端」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-17-1
「2012年には戦闘機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-21

「米陸軍は2016年前線に投入」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-16
「ACC戦略2015では?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-12
「米空軍幹部が議論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-29
「米国DEW兵器開発の課題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-23

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