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米海軍沿岸戦闘艦LCSに前倒しで衝撃耐久テスト [Joint・統合参謀本部]

久々に旗色の悪いLCSの話題です・・・

LCS-Jackson.jpg10日、米海軍の沿岸戦闘艦(LCS)が、その脆弱性を懸念する議会等からの要求もあり、通常の新造艦より早いタイミングで近傍爆発による衝撃テストを開始しました。
今回は、計3回実施される同様の衝撃テストの初回です。

沿岸戦闘艦LCSは、小型で小回りが利き、沿岸地域での多様な任務を想定して導入が開始された艦艇で、任務に応じた多様な装備をモジュラー化して積み替え可能な方向を目指しています。
米国のアジア太平洋リバランス政策でも、シンガポールに4隻をローテーション配備することを米国防長官等が事ある毎にアピールしている話題の艦艇です(のはずです

しかしご多分に漏れず・・というか、機種選定の段階からゴタゴタで、争った2艦種(Freedom型とIndependence型)が両方採用される前代未聞の異例中の異例な結果となり、更に実際の開発段階でも遅れや経費の超過が発生し、マケイン上院議員(米海軍出身)が、これほど恥ずかしい装備品導入案件を聞いたことが無いと酷評している代物です

その後実際の製造・配備が始まってからも、中国等の脅威を考えた場合、あまりにも火力が貧弱で艦の構造も脆弱だとの意見が「今更ながら」議会で強まり、調達隻数の削減や改修を求める声に米海軍が懸命に対応している状況です

そんな中、そんなに脆弱ではないことを示すため、このような試験(FSST:Full Scale Shock Trials)を前倒しで行うことになったわけです。
なお前回このような試験を行ったのは2008年で、対象となったのは「San Antonio級のamphibious transport docks」だったそうです

16日付Defense-News記事によれば
LCS-2ship2.jpg沿岸戦闘艦(LCS:littoral combat ship)には2艦種(Freedom型とIndependence型)があるが、10日に初回の試験を行ったのはIndependence型(LCS-2)のJacksonvilleである。今後は2回目を6月22日に、3回目を7月8日に実施予定である
●なお、Freedom型への同試験は、艦艇Milwaukeeを対象として、8月9日から9月13日の間で計画されている

●試験では、10000ポンドの爆雷をLCSの近傍で爆発させ、艦艇に取り付けた約260個もの測定機材で多方面から艦艇への影響を調査する。爆発地点の艦艇との距離は明らかにされていないが、2回目以降の試験ではより近い場所で爆発させる模様である
●同艦艇には約50名の試験関係者が乗船し、国防省の試験評価室OT&Eのメンバーも多く含まれているが、試験が行われたフロリダ沖の状況に詳しくイルカ等への影響を懸念する海洋生物学者も乗船している

●米海軍報道官のThurraya Kent大佐は10日の試験に関し、「想定外の事態は発生しなかった」とコメントした。他の関係者は、細部の分析が必要だが、想定していたよりもLCSは爆破の衝撃に強いとの印象を受けたと語っている
●同艦艇は必要な修理やデータ分析のため、一度Mayport港に戻る。なお今回の爆破試験の前に、艦艇に使用されている各部品に対しては、個々に耐久性や荷重の影響試験が実施済みである

試験前倒しの背景など
LCSindep.jpg●この様な衝撃耐久試験(FSST)は大部分の新型艦艇に対し行うことになっているが、LCSに関しては、Michael Gilmore国防省試験評価室長から議会への働きかけもあり、計画されていたよりも前倒しで実施されることになったものである
●Gilmore試験評価室長も、3回目の試験に乗船する予定である

6月30日から8月4日の間に実施されるRIMPAC演習にも、Freedom型とIndependence型の両方のLCSが参加する予定である。その後、Independence型のCoronadoが同タイプとしては初のシンガポール派遣に参加し、約18か月間の活動を行う予定である
●なお、現在シンガポールに展開中ながら、1月にエンジン事故でディーゼル機関が使用不能になっているFreedom型のFort Worthは、非効率な運用になるが、残ったガスタービン機関を利用してサンディエゴに戻して修理を行うこととなった
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昨年12月末段階では、なおLCSにはLockheed Martin製の「3,300-ton Freedom級」とAustal USA製の「2,800-ton Independence級」があり、6隻が就航、14隻が建造段階で、別の6隻が契約段階にありました。

LCS-2ship3.jpg同記事には、LCSの改良が進んでおり、見通し線外の目標にも発射可能な能力を備えた海軍初の「ハプーン」搭載や、「SeaRAM Rolling Airframe Missile」の試験が終了したこと、「Raytheon/Kongsberg Naval Strike Missile」も搭載予定であること等も記されています

ヘーゲル国防長官時に、LCSの能力強化を図る方向で落ち着いたように見えますが、まだまだ「脆弱だ」の意見は根強いようです。試験の結果に注目です

沿岸戦闘艦LCS関連の記事
「LCSは能力強化で決着か?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-18
「LCS調達隻数を巡る激論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-20
「LCS批判に反論」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-23

「F-35化する沿岸戦闘艦LCS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-09
「LCS機種選定泥沼」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-24
「次世代の米艦艇LCS」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-31

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