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東欧4カ国へNATO軍4個大隊「交代」派遣決定 [安全保障全般]

東欧4カ国へNATO軍4個大隊「交代」派遣決定

7月8日のNATOサミットで決定!
NATO Summit16.jpg8日付Defense-News記事によれば、兼ねてより計画が議論されていた対ロシア抑止のための地上部隊ローテーション派遣が、8日のNATO首脳会議で合意されました。同日Stoltenberg事務総長が記者会見で明らかにしました

本計画は6月13日のサミット事前会見で、同事務総長が検討を明らかにしていたものですが(記事後半を参照)、ロシアの脅威におののく東欧4カ国(ポーランド、バルト3国)へ、計4000名規模の4個大隊をローテーション派遣する計画です

具体的には・・・
カナダ軍がラトビア派遣を担当
ドイツ軍がリトアニア派遣を担当
英国軍がエストニア派遣を担当
●そして米軍がポーランド派遣を担当

5月16日付の記事(http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-17)では、ローテーションは6カ月交代が基本構想だと報じている

同時に会見でNATO事務総長は、「ロシアを孤立化することはできないし、させてはならない」と対ロシア関係にも配慮を見せ、7月13日から大使級レベルの「NATO-Russia Council」を開催する計画だとも述べ、NATOが建設的な対話をロシアと追求していくと付言した

6月13日の事務総長発言に関する記事
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-14 

以下は、5月20日の記事「NATOサミット論点紹介」
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Warsaw summit.jpg16日付Defense-News記事が、7月8~9日にポーランドのワルシャワで開催予定のNATO首脳会議の論点をポーランドやバルト3国防衛の視点から紹介しつつ、多様な課題に加盟国の意思統一が難しい状況を紹介しています

なおNATOワルシャワ首脳会議は、2014年ウエールズ会議以来のNATO首脳会議で、60の各種国家団体、5000の参加者、2000名の報道陣が集まる一大安全保障会議となります

なお同記事はNATOの多様な課題として、ポーランドやバルト3国防衛強化と併せて、「対IS作戦」「南部NATO諸国の課題(難民)」「迅速な軍事決断メカニズム」「ハイブリッド戦争」「サイバー戦」「国防予算GDP2%目標」「マケドニアの加盟問題(29カ国目)」「北極圏での懸念」が議論の卓上に上るだろうと言及しています

ポーランド首脳陣の問題認識
Warsaw summit2.jpgポーランド首相、国防相、外務相は外国メディアを集めた昼食会を開催し、NATOの東正面に恒久的な軍事プレゼンスが必要だと訴え、国防相は「ロシアは攻撃的な国家で、ロシア軍は展開兵力を増やし、弾道ミサイルの配備も強化している。我々は備えなければならない」と語った
●首相と外相も、NATOワルシャワ会議に於いて、ロシアがポーランドやバルト3国を「破壊」する脅威に、確固たる対策を導かなければならないと訴え

2月のNATO国防相会議に於いて、NATO事務総長は、国防相達が東正面の軍事プレゼンス強化に合意し、そのプレゼンスが多国籍部隊であって、同部隊への攻撃が全同盟国への攻撃を意味する事を明確にすると発言していた

●そして現在NATOは、恒久的な部隊展開の案として2つを検討している。一つは約800~1000名の大隊をポーランド及びバルト3国の各国それぞれに配備する案で、もう一つは1個の大隊を同地域に置く案である
●この大隊は、2004年から4ヶ月交替で戦争機部隊が「Baltic air policing」を行っているように、6ヶ月交替でローテーションする構想である

Warsaw summit3.jpg●国防相は、カリーニングラード(バルト3国とポーランドの隙間の飛び地ロシア領)にロシア軍が短距離弾道ミサイルSS-26(Iskander)を展開し、ポーランドだけでなくドイツも射程に収めている事への「回答が必要だ」と懸念を示している
●外相は関連で、核兵器の配備は求めないが、有事にはポーランドに核兵器を提供配備をする「nuclear sharing」を検討したいと述べ、戦争時のみ、その手段を検討する事だと念を押した

●ポーランド外相は、「ロシアにNATO団結のメッセージを本首脳会議で送る・・・NATO加盟国は異なる多様な課題に直面しているが・・」と、南部NATO諸国が異なる問題を抱えていることにも理解を示した
●また記者からの「エストニアのために西欧人は命を投げ出せるか?」との質問に、「誰も他人のために死にたくはないが、私はアムステルダムのためにそうできるよ」と答えた
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ポーランド首脳の発言だけを取り上げましたので、NATO全体での「温度感」が判りませんが、大きな格差がある2つの案には「温度差」を感じます

Warsaw summit4.jpg欧州や中東で安全保障問題が山積する中、重要会議であるはずのであるはずのNATO首脳会議が、「大山鳴動してネズミ一匹」で終了するのはもったいないですが、米国の政権交代が迫る中、致し方ないのかも知れません(勝手にあきらめてはいけませんが)

「nuclear sharing」ですか・・・。ポーランド外相が言及した「sharing」だけでなく、色々考えられるかも知れません。トランプ大統領誕生時のオプションとして、日本でも頭の体操にはなるかも知れませんし・・・

NATO諸国関連の記事
「対露大演習でNATO大編隊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-06-14
「ドイツ軍が1.8万人増強へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-05-12
「欧州を主戦場にサイバー演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-11
「米軍が北欧でも演習強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-29

「欧州に米陸軍装備の事前集積強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-10
「欧州を主戦場にサイバー演習」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-11
「露軍は鉄の壁arc of steelを構築中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-07

「黒海NATO演習と露軍反応」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-03
「露軍の電子戦に驚く米軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-03-1
「ウクライナで学ぶ米陸軍」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-02

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バルト三国もロシア系住民が25%くらいいるし南オセチアやウクライナ問題は他人事ではないでしょう
最近リトアニア首相もロシアによる不安定化工作を受けていると発言してますし

旧ユーゴなど欧州各地への民族主義グループへのロシアによる支援や工作も目だってきています
西欧の極右グループなどにもロシア財閥などを通して表立って資金提供までしており欧州分断を画策中の模様
難民問題もナショナリストであるプーチンロシアへの親近感を増す要因に
by お名前(必須) (2016-05-20 09:37) 

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