SSブログ

米国防省の「Goldwater Nichols法」改正案 [カーター国防長官]

CSIS GN.jpg5日、カーター国防長官がCSISで講演し、米国防省と統合参謀本部等の役割や位置づけを1986年に定めた「Goldwater Nichols法」の改正案の概要を明らかにしました。

統合運用の形を整え、軍人と文民の役割を明確に規定した議員立法の同法は、湾岸戦争以降の米軍の戦いに大きな役割を果たしたと高い評価を受けていますが、さすがに成立後30年が経過し、脅威や時代ニーズの変化に応じた改正が必要だと、カーター長官は提案の背景を説明しています

しかしカーター長官の頭には、国防省が考えるより「大きな変化」を求めるマケイン上院議員を筆頭とする議会軍事委員会の動きがあり、なんとか米国防省や米軍が受け入れられる程度の改革に収めたいとの思いがあります

米国防省が好まない提案を多く含むが、議会と国防省がともに理解できる改革も多く含む」と表現される議会側の提案は5週間以内に出るようですが、本日は取りあえず米国防省側の提案をご紹介します

5日付Defense-News記事によれば
Goldwater-Nichols.jpg●カーター長官は「冷戦時代や単一脅威を想定すればよい時代とは異なり、過去25年間で安全保障環境は劇的に変化した。重要な組織枠組みに対し、その精神と意図を受け継ぎながら、実践的な更新を考える時である」と述べ、5つの視点から改革案の概要を説明した

第1に、統合参謀本部議長の役割の明確化である。現在ダンフォード大将が勤める職は、大統領や国防長官に対する軍人最高位のアドバイザーとして、全軍の状況を把握し、国家安全保障に関する必要な助言を文民指導者に提供する役割を担う
●しかし今日の世界では、その職責や任務はそのような狭い定義ではないはずだ。毎日のように、米軍部隊の配置やどの様な任務を与えるかを議長と議論しているし、皆が議長に期待し、議長が既に遂行している役割を明確に規定すべきだと考える

第2は、装備品や物資調達に関する改革である。昨年議会が国防省に調達改革を検討するよう指示した事も受け、各軍種の長官がより大きい権限を持つ事に焦点を置いて改革したい
●現在35名で構成される「国防調達評議会:Defense Acquisition Board」の役割を最精査し、意志決定に至る階層を削減し、官僚的障害を乗り越え、浮いたスタッフを有効に活用したい

第3に、地域戦闘コマンドの統合が話題となっているが、複雑でそれぞれに独特の特徴を持つ紛争が進行中の中で、そのような統合は意味がないと考える
●地域コマンドを統合して同盟国や友好国との関係に負の影響を与えるよりも、各地域コマンドの兵站や情報や作戦計画機能を効率的に融合し、能力を失うことなく無駄な重複を無くした

CSIS GN2.jpg第4に、「US Cyber Command」の位置づけや役割の変更を考えるべきと述べ、サイバーコマンドを「full combatant command」に格上げすることを示唆した
●対ISIL作戦でサイバーコマンドは初めて実戦に投入されており、その機能の重要性を日々目にしている
●同時に、現在大将ポストとなっている職で、中将ポストで十分なポストがあるのではないかと精査している

最後に、統合職ポストを一定期間経験することが軍人の昇任や上級職への条件となっているが、その条件が狭くて厳格すぎることが課題となっている
●そこで、職務自体が統合の色彩が強い作戦運用、情報、輸送、戦力保全、統合調達などの職の経験を「統合職経験」と見直す方向を考えている
●また、「統合職」勤務の要求期間を3年から2年に短縮する事も提案している

議会側の動きや対応
●カーター長官はCSIS講演の最後に、同法律の改正は国防省の安全保障任務遂行を害するような方向であってはならないと(議会への)警鐘を発した
●同時に長官は、マケイン上院議員(上院軍事委員長)や議会有力メンバーと、本件について話し合う機会を複数回持ったと明らかにし、マケイン議員も良い協議が出来たと語っている

McCain3.jpgマケイン議員は、サイバーコマンドの格上げや統合参謀本部議長の役割強化など国防省と同じ部分もあるが、「更に深く改革を進め」、国防省が望まない内容も考えていると語っている
●「米国防省が好まない提案を多く含むが、議会と国防省がともに理解できる改革も多く含む」とマケイン議員は表現した
///////////////////////////////////////////////////////

地域戦闘コマンドの整理統合や大将ポストの削減、調達改革に絡む権限の委譲やスタッフの削減などなど・・・この辺りが議会側の提案でしょうか。

現在の上下院軍事委員会のメンバーは、近年まれに見る素晴らしい構成」だと、前CSBA理事長のクレパノヴィチ氏が日本公演で語っていました。
でも、欧州と中東、中国と北朝鮮など、複数正面で複雑な緊張に直面している米軍ですので、円満でスムーズな改革案とりまとめを期待いたしましょう

CSISでのスピーチ
http://www.defense.gov/News/Speeches/Speech-View/Article/713736/remarks-on-goldwater-nichols-at-30-an-agenda-for-updating-center-for-strategic

GN法改正関連の記事
「国防省がGN法改正検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-03-05
「国防長官が同法改正に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2016-02-03
「統合参謀本部の削減検討」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-16

地域コマンドの再編に関する記事
「地域コマンド改革私案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-24
「情報筋:コマンド再編案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-12

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0