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ありがちな誤解:中国軍分析の注意点 [中国要人・軍事]

CRS China.jpg24日、米議会調査局CRSが「The Chinese Military: Overview and Issues for Congress」とのレポートを発表し、米国で活動する中国ウォッチャーが陥りやすい誤解や誤った見方について注意喚起しています。
「両軍の活動範囲の違い」「任務の違い」「ミラーイメージ」「信頼できない指導者の言葉」、「不透明性から来る誤解」「宇宙やサイバー空間での先制攻撃」など、中国や中国軍を分析したり議論する際に見失いがちな視点を紹介しています。

執筆者はIan E. Rinehartとのアジアの安全保障を担当する比較的若手(写真の見た目)の研究者で、2012年にCRS所属する以前は、「East-West Center」や「Washington CORE」で同分野を研究していたようです。
Rinehart CRS.jpgRinehart氏が指摘している「注意点」は、自分では理解しているつもりでも、つい忘れがちで誤解しがちなポイントだと思いましたので、29日付Defense-News記事を活用してご参考まで紹介致します

CRSは「Congressional Research Service」の略です。各項目のタイトルは、まんぐーすの独断で付けました。ご注意を!

両軍の地理的活動範囲の差に注意
米軍は欧州や中東までを含む広大な任務領域を抱えている。
●従って米軍は、中国との紛争の際にも限定的な戦力しか投入できないが、中国にはその様な制約はない

似たような装備や兵器でも任務の違いに注意
●中国軍を見る際は、当該部隊がどのような任務を与えられているかを確認し、その上でその能力を評価すべきである。
米軍と中国軍の能力を比較するような際は、両軍の任務が全く異なるので、この点に注意すべきである。(同じような装備や兵器を保有しているからと言って、同じ土俵で単純な比較は出来ない

中国指導者の発言は必ずしも信頼できず
習近平.jpg中国指導者達が通常行う軍に対する発言や国防白書での記述は、多くの場合、一般化された(特別の深い意味を持たない)発表で、海外や国内対策用にプロパガンダ的側面を持っており、中国指導者の軍に対する意図を読み取るにはあまり正確でない可能性が高い

一方で全ての発言や発表を「ポーズ:posturing」と採るべきではない。中国指導者が「核心的利益」や彼らの体制保持のため中国軍を活用する意図に関して発信する場合は、真実(本心)である事が多い。台湾や南シナ海に関する発言がそうである
●見せかけと真意の発言の見極めが課題である。どのような軍事力を保有していると見せかけようとしているのか、それら能力と発言がどのように関係しているのか、いないのか、をよく観察分析することが本課題への答えにつながる

透明性が不十分だから見誤るな
中国全体に関する不透明性が、中国指導層の意図と軍事能力の見積もりや分析を複雑にしている。
●この点について米国防省は(中国軍事力に関する議会報告書で)「中国における増大する軍事力と戦略的意思決定の不透明性が、中国の意図に関する地域の懸念を増している。この懸念は中国軍の近代化進展に伴い、更に大きくなろう」と表現している

「ミラーイメージ」で中国を見るな
もの考え方や価値観が、米国と中国では異なっている。これらを同じだとの前提で相手の行動を分析したり、将来を予測することで、相手に関する見積りの信憑性が低下する

宇宙やサイバー領域での先制攻撃に注意
Rinehart CRS2.jpg中国の軍事戦略家は、紛争に置いて先手や主導権を握ることをとても重視している。中国軍がこの考え方を現代戦のサイバーや宇宙ドメインでも重視していると考える専門家もおり、ネットワークへの攻撃を予期している
●また中国軍は、多様な宇宙兵器や対衛星兵器を準備しており、極超音速無人機の開発も進めている。中国にとって先制第一撃はあり得べき選択肢で有り、これにより戦いを有利な立場で進める事を狙っている
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このCRSレポートは、「米国に拠点を置く中国ウォッチャー:US-based China-watchers」が陥りがちな過ちを指摘し、議会関係者に注意喚起することを目的としたものです。
日本人は中国人への警戒心がより強いので、米国研究者より「免疫」が強いかも知れませんが、軍事情報は「米国発」が圧倒的く、また米国研究者の発言や分析に影響を受けやすいので、十分注意する必要がありましょう

USCC3.jpgそんなレポートの指摘に「宇宙やサイバー領域での先制攻撃に注意」とあるのは、米国の中国研究者の中に「同ドメインでの先制攻撃」の可能性に対する認識が低いと言うことでしょうか?
ちょっと意外な気がしますが、「似たような装備や兵器でも任務の違いに注意」「ミラーイメージ」との視点のチェックが必要なのでしょう

なぜか「台北発」の報道ですが、いずれにしても、参考になるチェックリストですのでご紹介しました。

レポート現物(46ページ)
https://www.fas.org/sgp/crs/row/R44196.pdf

先制攻撃を予期する米国防省「中国の軍事力」レポート
「2015年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-17
「2014年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-06-06
「2013年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-08

「2012年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-19
「2011年版」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-08-25-1

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