SSブログ

極超音速兵器の開発で中国が優位か? [米国防省高官]

久々に「hypersonics技術」のお話しです

Hypersonic4.jpg9日、Work国防副長官が米空軍協会のMitchell研究所で講演し、極超音速技術(hypersonics technology)について中国に先を越されており、中国の同技術関連研究施設の充実ぶりを紹介しつつ危機感を訴えています

極超音速技術は、音速の5倍以上の速度で大気圏内を飛翔する技術で、スクラムジェット技術や姿勢制御技術等が重要な要素となるものです。

米軍では、米空軍の「X-51 Waverider」等が研究開発され、4回ほど試験(2回成功2回失敗)が行われましたが、その後の予算制約から進捗が滞り、その間に中国が極超音速飛翔体の試験に成功した等のニュースが報じられている状況です

Hypersonic3.jpg米軍では、極超音速技術を実用化したCPGS(通常兵器による世界即時攻撃:1時間以内に世界の何処でも攻撃可能な体制確立)構想を目指す動きもありましたが、「金の切れ目が縁の切れ目」状態に置かれて居るのが現状かと思います

実現出来れば、その速度で多くの防空網を突破可能で、かつその運動エネルギーを利用した新タイプの兵器として「Game Changing」な可能性を秘めています

11日付米空軍協会web記事によれば
●11日、Work国防副長官は講演で、極超音速技術(hypersonics technology)は「Third offset strategy」の一部をなすもので、敵対者に対する技術優位確保を目指しているが、相手も多くの資源を投入していると危機感を訴えた
●Work副長官は他国の極超音速技術開発レベルについて「中国は本分野で米国より進んでいるが、ロシアは米国より遅れている。米国は中露の中間にいる」と表現した

Hypersonic.jpg●また「中国は数百の極超音速風洞を保有している」、「中国がどのようにして過剰とも思える装置を維持しているのか分からないが、中国は非常に大規模に同技術を追求しているのだ」と副長官は語った
●そしてWork副長官は、米国としても敵の拒否領域や防空網を突破できるスピードを持つ極超音速兵器が欲しいし、強固な防御に対処するためある程度の自立能力が必要だと考えていると述べた

元米空軍首席科学技術監で現在IDA科学技術研究所の所長であるMark Lewis氏は、極超音速技術の専門家として、中国の風洞装置に関する副長官の言及をその通りだと語った
●そして「中国は小型の風洞を基礎研究に使用し、大型風洞を具体的装備の設計開発に活用している」、「中国最大の極超音速風洞は、米国が保有する同風洞の2倍の規模である」とLewis氏は現状を語った

●一方でLewis氏は、米国の研究レベルについて副長官ほど悲観的ではなく、米国のレベルは他国より数年は上回っているとの見積もりを披露し、この僅かな優位を更なる投資で維持拡大すべきだと訴えた

Mark Lewis氏は米軍の取り組みを非難
Hypersonic2.jpg●同氏は、米空軍研究機関が「X-51 Waverider」試験開発で蓄積した知見を有効活用していないと語り、将来鍵となる戦略的技術蓄積を無駄にする恐れがあると米空軍協会総会で訴えた
●そして同氏は、米空軍研究所AFRLが「X-51ブースター」とスクラムジェットを二つの別の試験装置に分けて試験し、「X-51」としての教訓を無駄にしていると表現した

●中には、二つの試験を同時に進める事は予算枠から出来ないと言い出すものも表れ、悪い方向に向かっているようで危惧しているとLewis氏は主張した
●「X-51はミサイルではないが、それにつながる開発装備であり、継続開発することに計り知れない価値がある」「わずか25億円程度の追加試験で、芸術的とも言える技術優位を確保できたのに」と嘆いた
/////////////////////////////////////////////////////////////

ミッチェル研究所の関連レポート(約2MB)
極超音速兵器の優位性を訴える1月発表のレポート
http://media.wix.com/ugd/a2dd91_b7016a5428ff42c8a21898ab9d0ec349.pdf

今年に入り、「極超音速兵器」に関する米国関係者の発言を良く耳にするようになりました。背後に、Work副長官が推進する「Third offset strategy」があるのかも知れませんし、Work副長官が焚きつけているのかも知れません

WU-14.jpg中国はなぜ多数の風洞を保有しているのでしょうか??? この分野に「Game Changing」な可能性を感じているのでしょうか??? それとも風洞製造企業のトップに、党幹部の子息が就任し、賄賂代わりにみんなで買ったのでしょうか??? 

なお、中国の「WU-14」と呼ばれるスクラムジェット推進の「極超音速飛翔体」(hypersonic glide vehicle (HGV))は、2014年1月に初試験を行い、2015年10月に試験を成功したと報じられており、この時間差をもって「米国から2年遅れ」と見られているのかも知れません
そんなに簡単だとも思わないのですが・・・

3月15日ロッキードCEOが極超音速兵器開発に自信たっぷり発言
http://www.defensenews.com/story/defense/air-space/2016/03/16/lockheeds-marilyn-hewson-touts-breakthroughs-hypersonic-weapons/81836070/

X-51 Waverider試験開発の様子
「X-51最後の試験は成功」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-07
「X-51 3回目の試験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-08-16-2
「X-51A:2回目試験は」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-16
「X-51A:1回目の実験」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-23

CPGS(通常兵器による世界即時攻撃)関連の記事
「PGSに少し明るい話題」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-18
「パネッタ長官はPGSに期待」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-06-16
「対中国もう一つの柱PGSは」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-03-03
「PGSのHTV-2試験失敗」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-27
「核抑止の代替?PGSのCSM」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-25

nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0