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全米世論調査:軍事費や空母やF-35削減を支持 [安全保障全般]

Kull2.jpgメリーランド大学が全米の7000名以上を対象とした軍事費に関する世論調査(全米レベル数値の統計誤差1.4%)を昨年12月から今年1月にかけ実施し、米国民は多くの分野で「modest」な規模の軍事費削減を望んでいるとの結果を発表しています

個々の主要事業の予算額を調査対象者に提示し、増額か削減か、どの程度の増減かを尋ねる質問方式だったようですが、支持政党別の結果も公表したようで、米国内の一般国民の雰囲気を見る一つの参考となりそうです

大統領予備選挙での「トランプ旋風」が示す、米国社会や国民意識の変質や変化に驚き→あきれ→不安感に襲われる今日この頃でもあり、軍事問題に関する素人も多く含まれると考えられる一般国民の意識調査ですが、そのデータは必ずしも侮れない気がしますのでご紹介します。

9日付Defense-News記事によれば
Kull3.jpg●調査結果によれば、(恐らく年度予算額から、)陸軍で約4500億円、海軍で約2300億円、空軍で約2300億円、ミサイル防衛で約1200億円程度の「穏やかな」軍事費削減を米国民の過半数は望んでいる
●一方で、海兵隊と特殊部隊予算については、増減両方に意見が分かれ、過半数を示す傾向は確認できなかった

●(恐らく年度予算額総額(約62兆円)から、)約1兆4000億円程度を削減することを米国民の過半数は望んでいる。支持政党別に結果を見ると、共和党支持層は現状維持、民主党支持層は約4兆円削減、無党派層では2兆3000億円削減を望む者が過半数を占めた。なお民主党支持層は、陸軍と空軍からそれぞれ1兆3000億円の削減を望んでいる
●米軍のアフガニスタン派遣勢力5500名の規模に関しては、全米で56%が現状維持を支持した。

F-35計画に関しては、年度予算で約8000億円、今後20年間で約12兆円の予算が必要とのデータを示して質問したところ、全米で54%がF-35計画全廃を支持し、州レベルでも全州でF-35をキャンセルして現有戦闘機の能力向上を望む声が過半数を超えた
●一方で、空軍の次期爆撃機LRS-B(B-21に名称決定)については全体で56%が支持しており、各州毎でも全州で過半数が支持する結果となっている

空母に関しては過半数が現状の11隻体制から1隻以上の削減を望んでおり、全米でも11隻体制を維持を支持者が過半数を超えた州は無かった。ちなみに、Newport海軍造船所を持つバージニア州は、11隻体制支持の比率が45%と全米で最も高かった
Kull.jpg戦略原子力潜水艦については新型戦略原潜を導入して現状12隻から8隻体制にする案に対し、今後10年間で2兆円近くの予算削減が期待できるにも拘わらず、54%が反対の意向を示した。なおニューヨーク州だけが削減案への賛同者が過半数を超えている

●調査を実施した同大学の国民の声を政策に反映することに取り組む「Voice Of the People」機関の理事長で、公共政策部長のSteven Kull氏は、「国防予算の全ての分野で、現在の計画より増加を望む声が大きくなかったことに驚いた。共和党支持層でも増加を望んでいないのだ」とコメントを発表している
国防予算の米国GDP比率の推移に関する印象を質問したところ、18%が予想より大きい、28%が予想していた程度、54%予期していたより低いと回答している

自由裁量が許された予算額の規模について、国防予算総額から見てどう考えるかとに質問には、56%が規模が大きいと考え、35%が想定していた程度、8%が予想より小さいと回答している
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軍事の話題が一般報道されることも多い米国の一般国民といえども、質問内容に詳しい国民が多いとは思えないので、質問の仕方により、答えが変化する可能性も否定できません

しかし、軍事費は削減方向が好ましく、「Boots on the ground」でない長距離ステルス爆撃機や戦略原潜を応援する姿勢にはイラクやアフガンの戦いへの疲れが見え、海兵隊や特殊部隊を重視する辺りには対ISILの必要性理解が広がっているとも解釈できます

また、F-35や空母に対する優しくない視線は脅威や兵器技術の変化への理解が、一般国民にも広がっている様子を伺わせます
個人的に意外だったのは、「アフガン派遣規模」に関する「現状維持」を支持する比率の高さです。これまでの苦労や米兵の犠牲が広く報道され、簡単に「撤退」を許容できないとの思いがあるのかも知れません

Kull4.jpg過去5年ほど「Defense-News」を見ていますが、この種の本格的世論調査を見るのは初めての気がします。質問の仕方には種々意見があると思いますが、サンプリング等、調査手法は「プロの仕事」に見えます。

中間層の崩壊が急速に進み、ヒトラーを生み出した当時のドイツ社会と「トランプ旋風」を生んでいる現在の米国社会が似ているとの分析を見聞きするようになりました。そんな米国社会を見る一つの視点としてご紹介しておきます

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