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発表:中国安全保障レポート2016 [中国要人・軍事]

Report 2016 NIDS.jpg4日、防衛省の防衛研究所(防研)が、今回で6回目の発行となる中国の軍事・安全保障動向に焦点を当てた研究レポート「中国安全保障レポート2016」(約60ページ)を発表しました。

あくまでも防研の執筆研究員独自の見解で有り、日本政府や防衛省や防研の公式見解ではないとしていますが、同日付でwebサイト上に、日本語、英語、中国語で全文が同時掲載される力の入れようで、今後、中国を含む諸外国との意見交換でも活用される資料です

過去の5回では、それぞれ「中国全般」「中国海軍」「軍は党の統制下か」「中国の危機管理」「非伝統的な軍事分野」をサブテーマとして、トピックを絞り込んで紹介してきた同レポートですが、今回は「拡大する人民解放軍の活動範囲とその戦略」とのテーマで、各軍種(陸軍をのぞく)と統合の動きを広く紹介しています

具体的には、4つの章でそれぞれ「海軍」「空軍」「ロケット軍(旧第二砲兵)」「統合作戦能力の強化」を取り上げ、「人民解放軍が今後も東アジアにおける米軍プレゼンスに挑戦を続け、それが功を奏した場合、東アジアにおける既存の安全保障秩序が一変する可能性がある」と危機感を示しています

「コピペ」が出来ない「堅固」な「PDFファイル」で公開されていますので、手抜きで各章の概要紹介を試みます

第1章:遠海での作戦能力を強化する中国海軍
China-Navy2.jpg●「近海防御・遠海防衛(護衛)」に転換しつつある中国海軍は、大陸沿岸から東&南シナ海、更に西太平洋やインド洋にその作戦海域を拡大しつつあり、空母、水上艦艇、潜水艦、航空機の近代化を進めている
●中国海軍は今後、近海では領土主権問題で優位に立つため海空域でのプレゼンス強化を図り、西太平洋域では「核心的利益」に対する米国の干渉を防ぐため、新型原子力潜水艦や高性能対艦ミサイル駆逐艦の配備やISR強化を図る
●また、海外に進出した中国企業や海上交通路を守るため、インド洋への進出を進める

第2章:空軍の戦略的概念の転換と能力の増大
J-31 Zhuhai.jpg●「国土防空」から「攻防兼備」に転換している。主にロシアからの輸入により第4世代機の配備を進めているほか、地上攻撃能力を持つ作戦機の導入に力点を置いている
●また長射程巡航ミサイル搭載爆撃機の航続距離延伸を図り、ISR能力拡充のため早期警戒管制指揮機を初めとする様々な作戦支援機を導入している
●今後の方向としては、弱点の大型輸送機や給油機の充実、ステルス機や無人機等による攻撃能力の増強、防空・BMDシステムの導入、宇宙への攻撃能力開発などの注力するだろう

第3章:ミサイル戦力の拡充
DF-26 2.jpg●昨年12月末に第2砲兵は「ロケット軍」に改編され、核戦力のみ扱う軍種から「核常兼備」軍種へと変化した。なお中国の核戦略は、政治の優位、核の先制不使用、核弾頭の漸増、平時は核弾頭を取り外して保管といった特徴がある。ただ「先制不使用」を今後も継続するかは注目すべき
確実な第2撃能力保持を目指し、弾道ミサイルの固体燃料化、車両移動式への転換、MIRV化を着実に推進している。

●1990年代以降の特徴は、通常ミサイル戦力を大幅に増強し、核とは異なり攻勢的な概念が提起され、機先を制して相手の急所となるC4ISRや戦力投射結節点に精密攻撃を加えることが重視されている
短距離・中距離弾道弾を充実させ、精密打撃力が高まっている。また海空プラットフォーム搭載の巡航ミサイルの充実も図り、中国A2AD能力の中核を構成している。この様な中国ミサイル戦力は、地域の安全保障環境を複雑化させている

第4章:統合的な作戦能力の強化
China Cyber.jpg●人民解放軍PLAは国防白書で「情報化局地戦に勝利すること」と「海上における軍事闘争」を重視する姿勢を打ち出した。「機械化戦争」とは異なり「情報システムに基づく体系作戦能力」の強化を図っている
●「情報システム」においては、ISR能力の向上、効率的な指揮統制の実現、ネット・電磁対抗力の強化などで宇宙空間の軍事利用を推進。

●「体系作戦能力の強化」においては、陸海空第2砲兵(ロケット軍)を統合的に運用する事を目指している
●習近平主席はこの戦略実現のため、陸軍司令部、ロケット軍や戦略支援部隊の設立、中央軍事委員会の組織改編など、軍の体制・編制改革を推進している。これら改革の今後に注目
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第6回目となるとトピックの選定が難しいのか、軍事力全般の紹介になっています
防衛白書の第1章「国際情勢」の拡大版のような内容ですが、断片的な報道ばかりが乱れ飛んでいる中、有り難い資料です

習近平.jpg「要約」部分の概要をご紹介すると、中身が薄く見えますが、防衛白書の第1章「国際情勢」よりは詳しくなっていますので、中国軍事力の概要を把握するには良い資料です

第4章が取り上げている習近平主席が打ち出した「軍の体制・編制改革」は、習近平の軍への影響力や主席としての力のバロメータともなり得ますので、来年の7回目では「その後の軍の体制・編制改革」がサブテーマになることを期待致しましょう

過去の「中国安全保障レポート」紹介記事
1回:中国全般→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-19
2回:中国海軍→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-02-17-1
3回:軍は党の統制下か?→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-23-1
4回:中国の危機管理→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-02-01
5回:非伝統的軍事分野→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-22

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matsuda hikaru

「コピペ」が出来ない「堅固」な「PDFファイル」で公開 
との解説ですが、印刷は許可されているので、google chromeで再度pdf形式にwebプリントすると保護のないpdfがパソコンに生成できます。pdfはAcrobatそのものがパソコンにインストールされている必要があります。Acrobat Readerではだめだと思います。老婆心まで。スペースライブラリ 松田
by matsuda hikaru (2016-03-14 14:49) 

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