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CSISが議会要請でリバランスに提言レポート [安全保障全般]

CSIS rebalance2.jpg19日、シンクタンクCSISが米議会から委託されたアジア太平洋リバランスに関する提言レポート「Asia-Pacific Rebalance 2025」(約270ページ)を発表し、国力を増す中国を主要な脅威と捕らえ、オバマ政権による戦略も資源配分もなく、ただ演説や形容詞に満ちた抽象的な文書だけが飛び交う現状を厳しく捕らえ、大きく4つの提言を行っています

4つの提言は大まかに言うと、「戦略を明示せよ」「地域同盟国等の能力強化を図れ(特に日本)」「米軍プレゼンスを増強せよ」「軍事危機に対処する技術革新を」の4つで、レポート全体を読んだわけではありませんが、お馴染みの事項です

GreenCSIS.jpgただし、270ページもあれば多数のデータや図が提示されていると考えられ、いろいろと参考になりそうですので、取りあえず19日付Defense-News記事で、4つの主要提言をご紹介します。

なお、レポートを中心となってまとめたのは「お馴染みMike Green, Kath Hicks、Mark Cancian」ですが、10数名が関係協力者として名を連ねています

CSISの関連webページ
http://csis.org/publication/asia-pacific-rebalance-2025

なお米国防省は「アジア太平洋リバランス」特設webページのトップページに同レポートを掲載し、結論に賛同し、提言に取り組んでいると紹介
http://www.defense.gov/News/Special-Reports/0415_Asia-Pacific-Rebalance

その前にレポートの情勢認識
●中国内の不安定要因により、中国の経済、軍事、地政学的影響力の成長が今後も持続するかは「up in the air」だし、過去2年間の攻勢的な姿勢が、中国の隣国を米国よりに向かわせた事は確かである
北朝鮮とロシアも、アジア太平洋地域で米国の目標達成を阻害する要因である

提言1:「戦略を明示せよ」
obama.jpg●一貫性のあるメッセージを発せよ。演説や形容詞に満ちた抽象的な文書だけが飛び交い、米国政府のリバランス戦略に関する中核ステートメントがない
●本レポート作成のため、複数の政府指導者にインタビューしたが、リバランスが何を意味するかが不明確だった
●この状況を打開するため、「アジア太平洋戦略レポート」を作成し、議会に働きかけ、戦略と資源配分を結びつけ、同盟国等との協力促進に活用し、中国との信頼情勢と危機管理を強化せよ

提言2:「同盟国等の能力強化を(特に日本)」
●最近国防省が力を入れてはいるが、地域の同盟国等の安全保障に関する容量、能力、強靱性、相互運用性を増強せよ
●一般的に言われている同盟国等の能力強化に加え、米国は海洋安全保障に関する「joint task force」を構築せし、日本に「joint operations command」を編成するよう働きかけよ

提言3:「米軍プレゼンスを増強せよ」
LRS-B4.jpg●アジア太平洋地域の米軍のプレゼンスを増強せよ。特に中国が強化しつつあるA2AD能力により米国の接近が困難になることがないように
水上艦艇の増強、水中戦力の改善、着上陸輸送能力を追加して危機対処能力を強化、
●継続して航空戦力運用基盤の多様化、地域BMD能力強化、米陸軍の「Regionally Aligned Forces concept」の深化と適応、
兵站上の課題への対処、重要な弾薬等の事前集積強化、同盟国等とのISR協力強化

提言4:「軍事危機に対処する技術革新を」
●国防省は最も重大な軍事的危機に対処するため、革新的な能力やコンセプトを追求せよ。特に2つの分野が重要
Aegis.jpg●一つは弾道ミサイル脅威に対処する技術、もう一つは米国に「非対称で、敵対者にコストを課すような」能力につながる技術である。
●必要な技術革新に関する部分は、Work副長官が取り組む「Third Offset strategy」での検討事項と似ている。「high-end guided munitions」を鍵とするところなどがそうだ
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サマリーも読まずにご紹介するは気が引けますが、ご興味のある方はじっくり270ページご覧下さい(約30ページの短縮バージョンもあります

日本に関する要望事項の多くは、すでに各種の日米間協議で提案されているのかもしれません。「joint operations command」が何を指すのか? 米軍と一体となる意味での「Joint」何でしょうか?
本文を読めば判るのでしょうが・・・疲れました・・・

CSISの関連webページ
http://csis.org/publication/asia-pacific-rebalance-2025

Work副長官のThird Offset strategy説明
「CNASでの講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15
「11月のレーガン財団講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15
「9月のRUSI講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-12
「Three-Play Combatを前線で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-09
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コメント 2

FUJI

「joint operations command」が何を指すのか?
重要なご指摘だと思います。
英語が苦手でまだ当レポートを読んでいないので第3次アーミテージ報告からの類推で申し上げると、直接的には、「イージス艦や補給船を両国で一体化運用して中国に対する抑止力を強化しよう」ということだと思いますが、これには裏の意味もあると思います。例えば北朝鮮が沖縄米軍基地上空に人工衛星と称する弾道弾を打ち上げた場合、米国のイージス艦が撃ち落としたのでは直接の米中衝突になりかねない。そこで早期警戒システムに組み込んだ日本のイージス艦から迎撃ミサイルを発射すれば、最悪のケースでも紛争の範囲はアジア内に留まるのではないかと考えていると思います。(今回は韓国内に迎撃ミサイルサーズ?を配備することで収まったようだ)こうして日本をはじめ豪印が中核となってフィリピンやベトナムと協力して中国の拡大抑止の防波堤となるNATOのような体制を築き、米国の肩代わりをして欲しいと考えているに違いありません。早い話が昔ながらの「代理戦争」ならぬ「代理抑止力」として自衛隊が国際展開することを望んでいるのだと思います。ヨーロッパにおける英国のような同盟国の役割をアジアでも日本に期待しているのです。
それにしても、政治家や国際政治学者の方々から全文翻訳してWEBに掲載してくださるボランティアがなぜ現れないのか不思議でなりません。
(ホームページはもっておらず、SNSにも入っておりません)
by FUJI (2016-03-21 20:21) 

まんぐーす

米国防省webサイトの「アジア太平洋リバランス」特設ページがこのCSISレポートをトップページで取り上げ、「米国防省の立場を表現しているわけではない」としながらも、「米国防省のアプローチと方向を同じくしている」と歓迎している姿勢を示しています。

つまり、国防予算に冷たいオバマ政権の姿勢を批判し、同盟国に煮え切らない態度のホワイトハウスをたしなめる同レポートの内容を、国防省として歓迎し、みんなに読んで欲しいと訴えているわけです

同特設ページでご確認下さい
http://www.defense.gov/News/Special-Reports/0415_Asia-Pacific-Rebalance
by まんぐーす (2016-03-21 20:56) 

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