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前半:米国防省の2015年10大ニュースを考える [カーター国防長官]

2015 Review2.jpg米国防省webサイトが「2015 Year In Review」との特設サイトをオープンし、順序を着けるように番号を付けて10大ニュースを振り返っています。

「10大ニュース」に短いコメントを付け、国防長官等の発言を引用する簡単な構成ですが、これを「肴に」、ザックリと昨年を振り返りたいと思います

一般の読者に皆様には、「Force of the Future」や「Multiyear Budget Deal」や「Tech Outreach」は日本のメディアで取り上げられることが無く、聞き慣れない事項かと思いますが、米国防省的にはとても重要で、同盟国としても頭に置いておく必要がありますので、可能な限り触れてみたいと思います

まず、いわゆる「10大ニュース」のリストですが
1. The Fight Against ISIL
2. Force of the Future
3. Asia-Pacific Rebalance
4. Multiyear Budget Deal
5. European Security

6. Tech Outreach
7. Afghanistan Mission
8. Women in Service
9. Welcoming New Chiefs
10. DoD Disaster Response

第10位:DoD Disaster Response
米国防省web表現
→4月に発生した1万人の死者を出したネパールでの大地震を受け、「救援の手」作戦を実施。5月12日には、救援ヘリの事故で6名の米海兵隊員と2名のネパール軍人が死亡したが、ネパール軍も懸命の捜索に加わり、その勇気、自己犠牲、ネパール救援への貢献を讃えた
Christmas Drop.jpg航空自衛隊がXマスプレゼント投下に参加
---12月5日から約1週間、航空自衛隊のC-130輸送機がミクロネシア、パラオ、北マリアナへのいわゆる「クリスマスプレゼント投下」に参加。日米豪の共同訓練との目的だが、マスコミの突っ込みがなかったのがちょっと不思議
---航空自衛隊webサイトのトップページの「トピック」に、12月17日付発表「ミクロネシア連邦等における日米豪人道支援・災害救援共同訓練について」としてリンクが張られているが、リンク先が消去されたのかアクセス不能になっている

航空自衛隊webサイト
http://www.mod.go.jp/asdf/
当該プレスリリースのURL:なぜかリンク不能
http://www.mod.go.jp/asdf/news/release/2015/ocd/Etau/ 
米空軍関連web記事
http://www.yokota.af.mil/news/story.asp?id=123464991

第9位:Welcoming New Chiefs
Dunford2.jpg2月にカーター長官が就任し、9月末にはDunford統合参謀本部議長(海兵隊大将)が、副議長にSelva空軍大将(輸送機操縦者)が就任。空軍を除く3軍のトップも交代
●Dunford議長が就任直前の議会証言で、F-35調達総機数について再精査する必要があると発言し物議をかもし、新海軍トップRichardson海軍大将も議長に協力すると発言をフォロー

「統参謀議長が削減に言及」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-11
「新議長の情勢認識」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-07-10
「新海軍トップ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-10-25
「海軍内では信頼薄い!?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-14

第8位:Women in Service
米国防省web表現
woman open.jpg→12月、2016年1月から「例外なく」全ての職域を女性にも開放をするとカーター長官が発表。2015年中でも、陸軍レンジャー学校を女性3名が卒業、海軍潜水艦に女性下士官38名を配置のニュースも
→女性兵士や文民女性を支える「Lean In Circles」システムを導入。
ゲイやレズに関する「言わない、聞かない原則廃止」の影響調査を開始を指示。同時に主要幹部や指揮官に対する「多様性(受け入れ&理解促進)ブリーフィング」を制度化

●「一応:米軍全職種を女性に開放」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-05
---最後まで残っていた陸軍のレンジャーや戦車兵、海軍のSEALS、海兵隊歩兵、空軍の救命救助員、特殊部隊等の体力的に厳しく、極限状態でチームとしての機能発揮が求められる職域も開放
---ただ、「例外なく女性に開放」は3年に及ぶ検討の末の結論で言葉通り間違いないのですが、職域基準をクリアした者のみが対象で、結果の平等ではなく機会の平等であり、強制的な女性枠は無く、部隊全体の効率性も念頭に、他国軍との共同にも配慮等々の「運用指針」を併せて発表し、4軍指揮官(特に最後まで反対していた海兵隊とDunford議長)の「言いたいこと」に配慮した「全開放」

第7位:Afghanistan Mission
米国防省web表現
10月にオバマ大統領が、2016年中は現兵力9800名を維持すると発表し、引き続き2つの任務、アフガン軍の訓練を行い、対アルカイダの対テロ作戦を支援すると表明
→John F. Campbell在アフガン米軍司令官は「危険に満ちた地域で過激派の再興に対処するため、またアフガン側との長期的な戦略的関係を構築するための能力を与える大統領の決断である」と(大人の)表現

第6位:Tech Outreach
米国防省web表現
Hybrid electr.jpg→米国防省のハイテク強化は2015年の最重要目標の一つであった。4月にシリコンバレーを訪問した長官は、同地域の最新技術を取り込む機関「DIUx」設置を発表し、スタンフォード大学ではサイバー戦略を語って国防省ネットの防御が最重要任務だと述べた
→8月には薄い膜のような曲げられ装着可能なセンサーをイメージした「hybrid electronics」開発のための企業との連合体を創設を発表。更に11月には企業派遣で国防省の人材育成を促進する計画の拡大を発表

「人材確保・育成策第1弾」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-19
「FlexTech Alliance創設」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-08-31
「サイバー戦略事前説明」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-19
「技術取込機関DIUx」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25
「スタンフォード講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25

技術開発担当次官によれば問題認識は
---「国防省の装備は、特に電子装備やIT分野で、民間製品より遙かに長い開発期間が掛かっている」、「国防省が10年以上と多額の投資をして中断した通信機器開発の最中、一般社会ではスマートフォンが遙かに早く普及している」
KendallDOD.jpg---「国防省はより効率的に必要で有効な民生技術を見いだして装備品に適応しなければならない」、「我々の相手は既にそうしている」
---「競争不足・欠如」が問題である。また「データリンクでは真の競争導入に苦慮している」と具体例を挙げて問題点を指摘
---コスト見積もりをより精緻に行い、計画通りに進んだ開発計画にインセンティブを与え、要求性能を決定する過程で情報分析部署と調達部署の連携強化をすすめる

技術優位追求の方向「Third Offset Strategy」解説by副長官
脅威対処の方向性は、艦艇対艦艇や、戦闘機対戦闘機との視点では敵と差が付けられないとの問題認識から、正面対決から「Offset」し、優れた人的資源や頭脳融合により、従来とは異なる側面から技術的優位を確保して「圧倒的優位」を確保し、通常戦力抑止を確立

「CNASでの講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-12-15
「11月のレーガン財団講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-15
「9月のRUSI講演」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-12
「Three-Play Combatを前線で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-09
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2015 Review.jpg第6位のTech Outreachhaは第2位のForce of the Future(将来を見据えた人材確保・育成策)とも密接に関わりがあり、11月18日のGeorge Washington大学での講演で第1弾を発表した「人材確保・育成策」では、技術優位の確保のための人材について力を入れています

また技術優位策では「第3のOffset Strategy」の方向性や重点項目が明らかにされ、今後の動向が注目されます。ちょっと長くなりましたので、第1位から5位は後半の明日ご紹介します
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より民間研究者の視点で2015年の世界を見ると、以下のような視点が浮き上がってきます。米国防省の公式見解を見るうえでのご参考にどうぞ!

奥山真司氏のブログより
「グローバルなトレンド5つ」→http://geopoli.exblog.jp/25198136/
---中国の減速
---3つの災難(温暖化、テロ、政治事情で発生の難民)
---BRICsという神話の崩壊
---敗者に注意せよ(中国でなくロシアが不安を)
---ゲームを変えたもの(原油価格の下落

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