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電子戦EWの革新は縦割り排除から [安全保障全般]

CSBA-ECM.jpg1日、シンクタンクCSBAが米軍の電子戦体制整備に関する提言レポートを発表し、2日に議会軍事委員会のメンバーらと議会内で発表会見を行いました

お馴染みの上級研究員Mark Gunzinger氏とBryan Clark氏によるレポートは、技術よりも運用コンセプトの革新や縦割り装備開発調達の弊害を訴え、脅威の変化に対応した提言を試みています

米空軍が導入を要望しようとしているJSTARS後継機案(ビジネスジェットに機材搭載)をバッサリ切り捨てる等、久々に「脅威の変化」を考える機会ですのでご紹介します
報告書のタイトルは「Winning The Airwaves: Sustaining America’s Advantage In The Electronic Spectrum」です

CSBAの関連webページ
http://csbaonline.org/publications/2015/12/winning-the-airwaves-sustaining-americas-advantage-in-the-electronic-spectrum/

Forbes下院軍事小委員長らも会見に同席
Clark-CSBA.jpg2日、CSBAの上席研究員である2名は、議員4名と共にレポート発表会見を行い、中国やロシアに対する電子戦分野での優位性を確保維持するため、米国防省は電子戦について再考すべきだと訴えた
●レポートの著者は国防省に対し、相手に発見されないような技術や敵防空網を混乱させる技術により投資すべきだと主張し、ステルス機や電子妨害機材やデコイ、更に安価な使い捨て海空における無人装備が重要だと例に挙げた
●また、より低い出力での敵センサー妨害技術や、低出力でのセンサーや通信技術に投資をシフトすべきだとも主張した

●Clark氏は、AESAレーダー米海軍の次期(航空機搭載?)妨害装置や艦艇搭載電子戦システムSLQ-32は良い傾向だが、多くの新技術を国防省は十分に活用できておらず、新たな作戦コンセプトが技術の活用には必要だと主張した
●同氏は「新しい技術が出現しても、その技術を旧来のコンセプトに当てはめてしまい、従来の模倣レベルの装備に押し込めてしまっている」と表現して問題点を指摘した
CSBAGunzinger.jpg●また同氏は、個々の電子戦システムのネットワーク化や、周波数や出力の柔軟性、多機能性や小型化への投資を重要だと指摘し、現有の電子戦装備を低価格無人機に搭載して敵領域深くに送り込む等の活用を例に挙げた

●Gunzinger氏は、縦割りの電子戦装備調達を問題視し、軍種間や軍種内でのセクショナリズムが電子戦作戦の新コンセプト開発を停滞させていると訴えた
●同氏は「この様な縦割り行政では、多機能な装備開発は生まれにくく、レーダーとジャマーとサイバーを一つに組み込む素子開発などが進まない」、「米国防省の中で、この様な新装備をとりまとめて開発を主導する者は存在するか?」と語った

JSTARS後継機がやり玉に
●Gunzinger氏は、国防省が再考すべきプログラムとして米空軍が検討中のJSTARS後継機を取り上げ、今後ますます作戦エリアの防空能力が強化される中、ステルス性の無いビジネスジェットを母機とする構想に疑問を呈した
JSTARS recap4.jpg●Clark氏も、米空軍は中東のような地域で数十年JSTARSで偉大な業績を上げてきたが、現状のJSTARS作戦コンセプトは「既に役に立たなくなっている」と表現した。同氏は、ロシア製S-400のような防空システムが拡散すれば、(JSTARSのような)高出力センサー搭載機はすぐ発見されてしまうと主張した

●Gunzinger氏は、「ISRとbattle management」任務を分割し、ISRを低出力センサーやパッシブセンサーを搭載した(ステルス?)無人機で行い、battle managementは戦域から離れた地上(海上)の施設で実施する方式を示唆した
●同氏は「太平洋や欧州や中東などの、ますます厳しくなる防空環境を考慮すれば、どのような装備が使用可能かを問うべきである」とも語った

JSTARS後継機構想は、国防省内の予算優先順位争いの渦中にある。米空軍は自身の構想を強力に推しているが、他の手段でより安価に必要な能力を確保可能だとする手法を押す勢力もある。2017年度予算案を巡る攻防では、確かなものは何もない
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レポート現物を読まずに、Defense-News記事で紹介しているので「?」の部分も多いと思います。

Electronic Warfare.jpg特に敵から発見されないように「低出力:low-power」な妨害やセンサーを追求せよと主張する当たりは、レポート現物に当たり、また中露の防空システムの特徴を把握しないと「ストン」と理解できないと思います。ご興味のある方はご自身でどうぞ・・・

「縦割りの弊害」は電子戦分野だけではないでしょうが、極めて専門的で秘密の多い世界なので、特に横の繋がりが生まれにくく、閉鎖的になりやすいものと考えられます

Clark研究員レポート等
「疲弊する米海軍艦艇部隊へ対策」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-11-22
「PGM対処とその活用」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-24
「米の潜水艦優位が危機に」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-13
「米海軍情報レポートに意見」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-27

Gunzinger研究員のレポート
「精密誘導兵器をどう扱う」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-24
「ビーム兵器に優先投資せよ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-20
「根本軍改革を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-21
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