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どろ沼必至?:LRS-BはNorthrop Grummanに [米空軍]

Northrop LRS-B3.jpg27日午後、株式や債券市場が閉じた時間を見計らい、カーター国防長官やJames空軍長官等が次期空軍爆撃機LRS-Bの機種選定結果を発表し、「Northrop Grumman」が勝利し「BoeingとLockheed合同チーム」が敗れました。

結果として、米空軍の3大航空機開発(3大優先事業でもある)は、LockheedがF-35を、BoeingがKC-46Aを担当することから、仲良く3分担が成立することになります。

米軍事メディアは「LRS-B発表お祭り状態」で、多様な背景&影響分析、今後の業界再編予想等々であふれかえっていますが、27日付Defense-News記事等より、とりあえず発表の事実概要と、その他様々な憶測をご紹介します

なお、機体の性能や全体像については「非公表扱い」になっており、その辺りについては、末尾の過去記事(例:「リーク?次期爆撃機LRS-Bの概要」 →http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-07をご参照ください

米国防省の発表会見トランスクリプト
http://www.defense.gov/News/News-Transcripts/Transcript-View/Article/626146/department-of-defense-press-briefing-on-the-announcement-of-the-long-range-stri

Northrop Grummanが速攻でwebサイト開設(冒頭の写真)
http://www.americasnewbomber.com/

米国防省発表の概要は
(27日付Defense-News記事と米国防省web記事より)
LRS-B NG.jpg●契約は2つに分かれ、27日発表の開発段階は「cost-reimbursable type contract with cost and performance incentives方式」で、後の5ロット21機の生産は「fixed-price incentive fee方式」。注→「cost・・方式」は、想定開発経費を上回った場合でも、全てを企業に負担させないが、企業利益を圧縮する方式。

●米空軍関係者によれば、提案価格は100機生産前提で1機$511 million(約590億円)で、$550 million以下(630億円)との要求値を下回った。これはB-2価格1800億円より遙かに安く、またLRS-B開発経費もB-2の2兆7000億円($23.5 billion)より低く、2兆4600億円(21.4 b)と発表された

その他、米空軍の選定結果発表の概要は
---破れた「BoeingとLockheed」には、23日金曜日の段階で選定理由について説明した
---LRS-Bの大きさ、重さ、ペイロード、速度、ステルス性については言及無し
Northrop LRS-B.jpg---両提案とも、エンジン等の下請けパートナーを含めて提案されているが、これら関連企業等についても非公開とする

---仮置きの初期運用態勢確立は2025年とするが、GSCのRobin Rand司令官は状況に応じ変化しうると語っている
---LRS-Bの名称を「B-3」とするのかどうかは未確定。GSCのRobin Rand司令官のもとで検討中

種々の関連事実
●「Northrop Grumman」は国防関連事業で6番目の地位にあるが、この受注により作戦航空機分野での生存を確保し、加州等の工場を維持出来る見込み。
●主契約企業の決定は無論重要だが、非公表となった「下請けパートナー」がどうなっているかも、次第に明らかになると思われ、この方面から業界の再編に繋がる可能性がある
●しかし、例えばF-35エンジンを担当している最大手の「Pratt & Whitney社」は、「Northrop Grumman」を祝福するコメントを出したのみで、エンジン関連の質問にはコメントを避けている

LRS-B関連当面の動き
Northrop LRS-B2.jpg●機種選定段階で過去に例を見ないほど提案の成熟が確認されており、米空軍のLaPlante調達担当次官は最近、選定後はかなり早い段階で初飛行が可能になるだろうと述べていた
●関係者によれば、Northropの今後の最も大きな課題は、エンジンとアンテナを機体と融合させる事だと語っている
●LRS-Bは、今後とも米空軍の緊急能力造成室(Rapid Capabilities Office)が担当するものと思われるが、国防省が同室の働きを再確認する可能性はある

専門家のコメント
Aboulafia3.jpg●航空評論家Richard Aboulafia氏・・・次の世代の作戦機生産が決定するまでには、Lockheed Martinと第2位のNorthrop Grummanのみが作戦機業界の生存者になるだろう。
ボーイングはKC-46Aの後、McDonnell Douglasを買収する以前のように、民間航空機分野に集中していくだろう。ただし、ボーイングがNorthrop Grummanの作戦機部門を買収する可能性は残っている

●ケンドール調達担当国防次官は最近、主要な軍需産業の合併の動きについて「冷や水を浴びせるような」否定的な発言をしたが、投資企業幹部Byron Callan氏は「現在の国防省幹部では起こりえないが、2017年に政権が変われば、どうなるか分からない」と語っている

別記事より:専門家のコメント
Callan.jpg●投資企業幹部Callan氏によれば、軍需産業基盤への影響は機種選定の評価要素には含まれていない。また、調達機数については必要数を100機以上にも積もる分析も多く、機数を増加するかどうかは次の政権の判断になろう。
●仮に、LRS-B調達機数が増加したり、国防予算が削減されたりすれば、F-35予算とLRS-B予算が優先度を争うことになるが、LRS-Bを優先し、F-35が犠牲になる可能性が高いだろう

Northrop勝利を「どんでん返し」と呼ぶ軍需産業コンサルタントのLoren Thompson氏によれば、資金力や近年の作戦航空機製造実績からすれば、驚きの決定である。
敗者は昨年だけで軍用機を300機製造し、勝者はわずかに無人機9機を納入したのみである。Northropが野心的なスケジュールの次期爆撃機計画を推進可能なのか疑っている


BoeingとLockheedからの不服申し立て
LRS-B7.jpg●「BoeingとLockheed合同チーム」は「本日の発表にはガッカリした。次のステップを決定する前に関係者と議論が必要だ。価格とリスク面でどの様な評価が行われたのかに関心を持っている。我々の提案は比類なき経験と能力と企業資源に裏付けられたものであると信じているからである」と声明を発表した。(不服申し立ての可能性を示唆したものと理解出来る)

ボーイング社はミズーリ州の関連有力議員を通じ、ロッキードはテキサス州の議員を活用し、強力な不服申し立て運動を行うだろう。ミズーリのMcCaskill議員が動き出し、テキサスが支援するだろうと言われている
●下院軍事委員長のThornberry議員(共和党テキサス)は「一つの文化として不服申し立てがあるだろう。申し立ててもペナルティーはないから。この様な状況を改善する必要を他の議員も感じているし、議論が必要だろう」と語った

LRS-B8.jpg●LockheedはまだF-35があるから問題は少ないが、ボーイングは最後のFA-18を2018年に、F-15を2019年にそれぞれ生産終了するので、セントルイス工場の閉鎖がかかっている
ボーイングがセントルイス工場を維持するには、米海軍が狙うFA-18増産による生産ラインの10年間維持(これで第6世代戦闘機までつなぐ)や、米空軍の次期練習機T-Xの契約獲得が必要だが、確定したものは何も無い

Northrop Grumman社のLRS-B宣伝映像

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続々と、コメントや分析が発表されるでしょうが、「とりあえず」こんな具合です
「暴露記事」が出るのかもしれませんが、やはり選定過程は「魑魅魍魎(ちみもうりょう)」が住む世界で行われているのかもしれません

KC-46A(選定作業3回やり直しの反面教師)のような「ドロ沼」は避けてほしいものです不服申し立てが「調達の文化:acquisition culture」と言われると「ドン引き」な気分です。「不倫は文化」と言われるよりも・・・

機体概要や性能等は「推測記事」でご紹介
「リーク?次期爆撃機LRS-Bの概要」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-07
ステルス性能は、B-2爆撃機より遙かに向上(significant improvement)している。また「兵器搭載量と航続距離については、双方ともB-2より約2割減」と表現した
●機体の大きさは「米海軍のUCLASSよりは大きいが、B-2よりは小さい」と会議参加者は表現し、速度について具体的な情報は無く、「エンジンの性能によるところが大きい」が、種々の条件を勘案すれば「Subsonic:亜音速」と考えられる

爆撃機の航続距離はこれまで一般に長く、地球の反対側を迅速に攻撃出来るようなイメージであったが、空中給油能力の向上等も有り、大きな燃料タンクを保有して大型化するリスク、航続距離を維持する必要性、爆弾搭載量を総合的に検討している
●元米空軍情報作戦部長であるDavid Deptula退役中将は、「ロシアや中国のA2AD能力を踏まえれば、空中給油無しで作戦行動半径2500nmあれば良いのでは」と意見を述べている

●有人型をオプション(optionally manned)とする計画はそのままだが、初飛行は有人型で行われ、無人機型用の装備が当初生産から組み込まれるのは不明確。会議参加者の一人は「無人機型を急いで追求はしない」と語っている
引き続き「open-architecture」を重視し、継続的に新技術を導入しやすいように設計される

LRS-B関連の記事
「リーク? LRS-Bの概要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-07
「全爆撃機をLRS-Bに」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-29
「次期爆撃機cost-plus契約?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-03-06

「選定結果で業界大再編か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-01-20
「次期爆撃機の進捗は?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-08-1
「LRS-Bの提案対決は」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-26-1

「次期爆撃機に有人型は不要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-07-16-1

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