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10年ぶり米軍事衛星打ち上げに競争導入 [サイバーと宇宙]

GPS III.jpg9月30日、米空軍は2018年に打ち上げ予定の新型GPS衛星「GPS III」の打ち上げに関する提案要求書RFPを発出し、11月16日まで候補企業からの提案を受け付けると発表しました。

米国の軍事衛星打ち上げは、2006年12月にロッキード・マーティン社とボーイング社の衛星打上部門同士が合体して合弁事業であるULA(United Launch Alliance)が誕生し、1社独占体制になっていました

しかし今年5月、SpaceX(Space Exploration Technologies)社が「ファルコン9」で軍事衛星打上げ承認を獲得し、約10年ぶりに2社による競争態勢が確立しました

Space-X社は2社合体によるULAの誕生話が持ち上がった2006年、「サービスの独占による反トラスト法違反として提訴」しましたが訴えは認められず、苦節10年の承認取り付けを経て「軍事衛星打上げ」参入を果たしました

なお、SpaceXのCEOはElon Musk氏です。
Elon Musk氏について→https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%82%AF

9月30日付米空軍web記事によれば
Falcon 9.jpg●米空軍は今回の提案要求書RFPで、「完全経費固定契約:firm-fixed price contract」を求めている。これにより、米空軍の調達方針である、任務達成と作戦ニーズと打上げコスト削減と軍事衛星打上げへの競争原理導入をバランス良く実現する提案を採用する
●RFPをまとめた宇宙ミサイルシステムセンター司令官Samuel Greaves中将は、「技術革新の推進と血税の最大活用、レーザーのように確かな任務照準、宇宙アクセスの確保を強化すると期待している」と語り、競争復活に期待を寄せた

●今回の機種選定は「GPS III」1回の打ち上げを対象としているが、あと8回連続してこの様な競争による「GPS III」打上げ企業選定を行う

GPS III 2.jpg●「GPS III」は、従来のGPS衛星と比較して妨害対処能力が高く、位置情報や時刻の正確性も向上している。
●また、同じL1C信号を使用する欧州版GPS「Galileoシステム」とも相互利用が可能で、相互の信号を活用したサービスの拡大が可能となる

●米空軍宇宙ミサイルシステムセンターの打上げ産業部長であるClaire Leon博士は、「競争環境の強化のため、我々は企業と共に議論して提案要求書のまとめを行ってきた」、「SpaceXが承認を得たことで競争が強化され、納税者の血税を節約出来る」と語った
●また同博士は「国防長官室が推進するBetter Buying Power 3.0の方針に沿い、企業との早期からの意見交換で選定指針を明確にし、健全な競争を促進出来ることを嬉しく思う」とも述べた
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ちょっとよく分からないのは、商用衛星打ち上げ分野ではロッキードとボーイングが別々の企業として、それぞれアトラスⅤとデルタⅣを争って提供し続けている点です。
恐らく2005年から06年当時は、スケールメリットというか、ばらばらより統合して「ULA」を創設した方が効率的だとの意見が支持されたのでしょう

Elon Musk.jpgそれにしても、Elon Musk氏の情熱と気力はどこから湧いてくるのでしょうか?
いずれにしても、今後細切れに9回連続して行われる「GPS III」打上げ企業選定の成り行きに注目して参りましょう

「米軍事衛星打ち上げにSpaceX参入許可」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-05-27
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米軍事衛星の打ち上げには他に大問題が
ULA社の主力ロケット「アトラスⅤ」は大型衛星打ち上げの実質唯一の手段だが、ロシア製のロケットエンジンRD-180を使用している。しかし、最近の情勢からロシアがRD-180の「禁輸をちらつかせる」事態が発生している

RD-180 2.jpg米議会などは露製エンジンに依存する態勢脱却を強く主張し、RD-180の在庫がある2019年までに国産代替エンジンを開発せよと大号令。米軍需産業も何とかなるだろうとの反応
しかし、打ち上げロケット開発の難しさや種々の確認試験におけるリスクを懸念する米軍幹部や有識者は、2019年完成は厳しすぎる納期であり、露製RD-180の追加購入も行うべきと「哀願」している

露製エンジンへの依存問題
「国産開発が間に合わない」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-29-1
「露製エンジンを何基購入?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-04-30-2
「米国安堵;露製エンジン届く」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-22
「露副首相が禁輸示唆」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-22

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HIKARU MATSUDA

軍用ではULAで一体化してやっているのに、BoeingのDelta IVとLockheedのAtlas Vが商業用途では競合していることが、少し分からないと・・・
商業用途の姿がノーマルで、軍用がその当時、年間発注数量が少ないので両社が協力してULAとして生き残れるようにUSAFの意向があったと理解しています。でも現在考えると安くて良いものが生き残るのが正解で、SpaceXも
そこにうまく乗って、ULAの弱点の露製RD-180をも政治的に問題を表面化して勝負を挑んだということでしょう。
この時期、軍・政治家は納税者の顔をうかがいながら物事が進んでいるように見えます。
by HIKARU MATSUDA (2015-11-20 17:17) 

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