SSブログ

露空爆開始:NATO司令官が警鐘:在シリア露軍は何のため? [Joint・統合参謀本部]

カーター国防長官「火に油を注ぐ行為だ」

30日ロシア軍がシリアで空爆開始
各種報道を総合すると
Russia-Sylia.jpgロシア軍は30日、シリアでイスラム過激派組織ISと戦うアサド政権を支援するため、空爆を開始
ラタキア近郊の飛行場を飛び立った露軍用機は、シリア中部ホムス、ハマ両県などにあるISの複数の拠点を空爆した。露国防省の幹部は30日、「シリア領内のテロリストの拠点を正確に攻撃する航空作戦に着手した」と述べた

しかし、空爆地点がISの主要支配地域でないため、アサド政権と戦う「反体制派」を狙っているのではとの見方が浮上している
米国防省高官は「露が対ISに建設的に取り組みなら歓迎するが、30日の措置からすれば、その様にはほとんど見えない」と強い警戒感を示した

●同高官はまた、露側は在イラク米国大使館に対し、30日朝に対IS作戦を実施すると通告し、米軍機がシリア上空を飛行しないように通告してきたと語った
●米メディアによれば、上記通告は露攻撃開始の僅か1時間前だった模様

カーター長官「火に油を注ぐ行為だ!」と非難
carter-hearing3.jpg●30日、露軍用機がシリアでの空爆を開始した数時間後、カーター国防長官は記者団に対し、ロシアの空爆開始を非難し「火にガソリンを注ぐ行為だ」と表現した
●また内戦で疲弊したシリアへのロシアの軍事介入は、「失敗に終わるだろう」、「もっと意味ある方法で彼らが目的達成に向かうべきだと、ロシア自身が気づくことを望む」とも語った

米国防長官がロシアに要員派遣し協議へ
●29日、カーター国防長官がシリアでの偶発的事態を避けるため、ロシアと協議をするようスタッフに指示した。誰を、何処へは明らかではないが、近日中に訪露する模様
●国防省のクック報道官によれば、派遣した要員はロシア側に、有志連合による作戦を妨害しないこと、米軍と連携する(反アサド反シリア)反体制派を攻撃しないこと要求し、誤解や誤判断防止を図る

Farkas DOD.jpg●皮肉なタイミングだが、米国防省でロシアやウクライナを担当するEvelyn Farkas次官補代理は、10月末に退任することが明らかになっている。彼女は上院軍事委員会スタッフや欧州米軍司令官の補佐官を歴任した、その道のプロなのだが・・

/////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

「対ISのために、ロシア軍が高性能SAMをシリアに派遣する必要があるのか?」

Breedlove3.jpg28日、NATO軍司令官のPhilip Breedlove米空軍大将が講演し、ロシアが対ISを目的にシリアに派遣しているロシア軍戦力は、ISの戦力を考慮すれば明らかに過剰であり、東地中海にA2AD圏を構成するが如くだと警鐘を発しています

具体的には、対ISには不必要な高性能SAM(地対空ミサイル)や高性能戦闘機の存在を指摘し、アサド政権や地中海沿岸の港湾を西側から防護するA2AD網ではないか等々と指摘しています

同講演の数時間後には、オバマ大統領とプーチン大統領がニューヨークで会談することになっていたタイミングでの発言でしたが、議会からは軟弱なオバマ批判が吹き出す中、同大将は「対話は重要」と大人のコメントでした

28日付Defense-News記事によれば
●28日、Breedlove大将はワシントンDCの「German Marshall Fund」で講演し、露軍がシリア北西部に集積されつつある様子を例え、「軍事力バブル」だと揶揄し、ロシアが主張している「対ISのための戦力」の所用を越えるものだと主張しました
Su-30 Russia2.jpg●米国防省は、ロシアがシリアの地中海沿岸のラタキア周辺に、少なくとも500名の兵士と、戦闘機、戦車、自走砲、ヘリ等々を派遣していると発表している

●同大将は「私は、高性能SAMや高性能戦闘機で防空する必要があるような航空機を、ISが飛行させたと聞いたことがない」と語り、ロシアがSA-15やSA-22と言った高性能地対空ミサイルSAMを派遣している状況に不信感を示した
●また同司令官は「ロシアは、シリアのアサド政権を、アサドに圧力をかける勢力から守ろうとしている」と表現し、ロシア軍がアサド政権を防護する「A2AD網」の構成を進めていると警告した

●Breedlove大将は更に、既にウクライナ南部の黒海に構成されたような「極めて強力な防空網がシリア北東地域に出現しつつあり、東地中海を大きくカバーするA2ADバブルの出現を懸念している」と表現した
●またロシアの意図を推測して同大将は、「ロシアは東地中海に面した不凍港や飛行場の確保維持を欲しており、アサド政権に否定的な(西側)勢力が、ロシアの意図に挑戦してくると反発しているのだろう」と表現した
////////////////////////////////////////////////////

Breedlove.jpgDefense-News記事は柔らかめですが、DODBuzzなどは「シリアに派遣されたロシア軍は、アサド政権に圧力をかける米国や関係国に対抗するものだと見られている」とより明確な位置づけで表現しています

確かにSu-30戦闘機や高性能SAMは対ISに必要とは考えにくいですし、ロシアが守りたい不凍港周辺に露軍戦力が集中していることからも、その意図は「見え見え」です。

日本国内での報道がほとんど無いシリア軍事情勢ですが、米国内でのオバマ批判と合わせ、よく見ておくことが必要でしょう

ロシア軍のシリア展開関連
「シリアは地政学チェルノブイリ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-23
「対ISに暗雲:露軍展開とシリア兵訓練頓挫」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-21
「イラン核合意で中露が中東で好き放題へ」 →http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-09-08
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:ニュース

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0