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回避できるか強制削減:期限30日深夜 [安全保障全般]

9月30日午後、米国予算の強制削減は当面回避されることに。
とりあえず12月11日までの暫定予算が確保されたようです
http://www.defensenews.com/story/defense/policy-budget/congress/2015/09/30/house-passes-bill-averting-government-shutdown/73111782 

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Sequestration2.jpg9月30日夜11時59分までに、米議会で予算の強制削減に関する何らかの措置が講じられない限り、10月1日から2013年に短期間発生した強制削減が再来襲し、政府機関が閉鎖又は限定予算の中で最低限の運用を強いられることになります

夏休み前までは、短期的な暫定予算確保決議(CR:continuing resolution)で合意の雰囲気があったようですが、9月には入って再び不透明感が増し、先週末の時点では短期的な合意案が民主党側によって拒否された状態です

大胆に単純化すると、何とか短期的な措置で凌ごうとする共和党に対し、根本的な対策でないと混迷が深まるばかりだとする民主党側との間で、「チキンレース」が行われている状況です

今週、最後の3日間で恐らく議論される提案は、12月11日までの予算を2015年規模で暫定許可するもので、それまでの2ヶ月間で本格的な両党合意を狙おうとするものです

そんな中、25日金曜日に、議論集約の鍵を握るはずのJohn Boehner下院議長が10月末に辞任すると発表し、これがどのように強制削減対処に影響するのか、不透明感が増す形となっています

26日付Defense-News記事によれば
Sequestration.jpg●合意が形成され、強制削減が当面回避されるかについては、予想が分かれる状態にある。
●昨年まで国防省の監査官を勤めていたBob Hale氏は、2013年に強制削減が発動された直前の状態に似ていると語り、下院議長辞任が「手打ち」を呼ぶとの観測もあるが、引き続き交渉決裂の可能性は大きいと語った

●CSIS研究員で前国防省高官のAndrew Hunter氏は、「辞任のニュースが良い方向を示す訳ではないが、恐らく下院議長が民主党の支援を得て当面の回避策CRを通すだろう」と語った
●Michael Horowitzペンシルベニア大教授は、政府機関閉鎖が「少しは遠のいたかもしれない」と言いつつ、辞任を巡りどんな駆け引きがあるのか見極める必要があると語っている

continuing resolution2.jpg●AEIのMackenzie Eaglen研究員は、辞任が何らかの短期的妥協に結びつくことを信じたいと述べる一方で、短期的な妥協は、すぐ数週間後に訪れる次の期限時に、何の対処案も準備できていないことを示す点で、更に大きな問題を積み残すだけだと語っている
●「下院議長辞任のニュースには良い中身は何もない。その向こうに惨めな機能不全な議会の姿が見えるだけだ」とEaglen女史は付け加えた

米国防省は大変な危機感と士気低下
●強制削減の可能性が目前に迫ったことで、Work国防副長官は25日、強制削減状態に置かれた際の対応要領に関する指示を発出した
14ページの文書http://www.airforcemag.com/DRArchive/Documents/2015/September%202015/092815shutdown.pdf
●暫定措置等が成立しなかった場合、国防省の約72万人の文民職員の約半数は直ちに「強制無給休暇」に直面し、前線の作戦運用に直接関係しないあらゆる分野での予算執行が滞る可能性がある。

Sequestration3.jpg出張旅費や訓練経費、維持整備経費も執行が暫定的な範囲に限定され、民間企業との契約も暫定予算では制約される等々、組織活動が大きく阻害される恐れがある
仮に数ヶ月間の暫定CRが可決された場合、その数ヶ月間の対応を国防省はそれなりに可能だろう。しかしそれは、数ヶ月後に長期的な合意が達成され、予算の長期的見通しが可能になるとの前提でだ

●仮にCRが1年間の暫定予算で問題を先送りすると、固定経費のKC-46空中給油機契約や長期的な支出計画が必要なF-35開発のような主要計画を、再検討しなければならなくなると国防省高官は悲鳴を上げ始めている
ケンドール調達担当国防次官は「1年間に及ぶ暫定措置CRは、国防省に破壊的な結果をもたらす」と訴えている
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予算の強制削減は、財政赤字削減のために歳出削減を義務付ける法律を根拠に、赤字削減策を政府や議会が打ち出さなければ自動的に発動されることになっています

continuing resolution.jpg赤字削減の半分を国防省が担う事が定められた、「オバマ政権ならでは」の法律ですが、「レイムダック状態」と言われる現政権に赤字削減策を取りまとめる能力はなく、与野党対立が先鋭化する中、無理矢理国防予算を一律10%カットの「強制削減」が迫っています

「強制削減」が如何に馬鹿げ、負の効力を持つことは誰もが合意納得しているのですが、それを避ける話し合いが約3年経過してもまとまりません
これまで、暫定措置CRでしのいできましたが、2016年度予算に関し、交渉期限が来ているわけです

対ISなどの中東問題、ウクライナを巡るロシア対処、「サイバー攻撃はしない」と言った中国対処等々、難問山積の国防環境の中、今日もワシントンDCは機能不全が続いているようです

強制削減を巡る嘆きと検討
「フロノイも悲観的観測を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-06-18-1
「ゲーツ氏が嘆く強制削減」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-11-01
「強制削減対処の検討SCMR」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-08-01

2013年強制削減時(Sequestration)の解説
「辰巳由紀さんの解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-02-09
「強制削減を辰巳さんが解説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-28

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