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米海軍は空母の代替検討やる気なし? [Joint・統合参謀本部]

Ford Class CV.jpg23日付米海軍協会web記事によれば、空母の価格高騰を厳しく追及している有力議員からの圧力を受け、米海軍が価格競争原理が働くような空母の代替手段について検討を開始した模様です。

2016年に就航する新型空母フォード級の1番艦(Gerald R. Ford:CVN-78)は、価格高騰を重ねて約1兆4000億円にまで価格が跳ね上がっており、この背景に建造出来る造船所が1カ所(Huntington Ingalls Industries’ Newport)しか無いことがあるのでは、との疑念もあるようです

検討開始とは言っても、米海軍からの発表は「歴史的に前例のある検討」、「米海軍によるコスト削減と効率性追求に関する継続的な取り組みの一環」と淡々ベースの検討を臭わせており、結論を出す時期も濁しています。

まんぐーすは代替案など持ち合わせていませんが、今の空母価格を考えれば更新調達が不可能になるのは目に見えているのですから、真剣に考えたら良いのに・・・と思います

23日付米海軍協会web記事によれば
Ford-Class-Carrier.jpg●18日、マケイン上院議員からのフォード級空母建造の継続可能性や経費的妥当性や費用対効果に関する質問に対し、米海軍省のSean Stackley調達担当次官は「(現在10隻が就航している)ニミッツ級の空母の代替手段を検討し、その実行可能性や有効性を吟味する」と答えた
●同次官は「現在の10万トン級空母が生み出すパワー投射能力同能力を、より費用対効果良く与えてくれる良案があるかを検討する」と付け加えた

●20日、別の米海軍関係者は海軍協会に「上院での質疑で明らかにしたように、米海軍は空母を含む大型航空機搭載艦艇の構成について、可能性を含めた検討を行っている」と述べた
●また「本検討は、脅威対処に必要な装備をより低い価格で入手する努力と、艦艇建造に競争原理を導入するとの調達戦略追求する努力とを継続的に実施してきた米海軍の取り組みの一環である」と説明し、

●更に「同様の検討には先例もあり、戦闘能力の向上と効率性追求を続けてきた海軍の検討の延長にあるものである」とも語った。ただし、今回の検討の終了時期については言及しなかった
●そして「現在実施中の検討については言及出来ないが、検討結果は、現在計画されている艦艇建造計画以降の将来計画に活用される」と語った(逃げた)
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Ford-Class-CV2.jpg米空軍が2000機以上のF-35調達計画が予算的に不可能であることを知りながら計画に変更は無いと言い張っているように、米海軍が予算的に不可能なのに空母と戦略原潜の更新の同時進行に固執しています。
破綻することは目に見えているのに・・・。

例えば、米海軍は戦略原潜の更新だけで現在レベルの予算を食い尽くしてしまう・・と過去の国防長官は警鐘を鳴らしていました。強制削減の話が出る前の段階でそんな状態でしたから、強制削減で状況は更に悪化しているはずです。
「ゆでガエル」にならないよう、お互い注意したいものです・・・。

温故知新で・・・
2010年の米海軍協会総会でゲーツ国防長官は
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-04-1
●海軍の空母戦闘群を中心とした海軍戦略は1942年以来全く変化がない
米海軍艦艇の総排水量は世界最大で、少なくとも追随する13カ国の総排水量をも上回っている。しかも13の内、11カ国が同盟国である。
●海兵隊は10隻もの大型上陸作戦用艦艇を保有している。しかし世界には同型艦を3隻以上保有している国はないし、保有国はすべて同盟国である。

gatesCultureSV.jpg●このような現状の過大(overmatch)な状況を認識してほしい
●同時に、敵の対艦能力の向上を見てほしい。フォード級空母に航空戦力が搭載された1.5~2兆円もの価値が危機にさらされているのである

●資源配分の議論をすると、常に能力不足分野に関する話題になる。そしてその際解決策として提示されるのは、常に現有装備の増加かバージョンアップである。
●このようなアプローチは、限られた資源しか持たない敵が我々に想像力あふれる非通常型の画期的な手段で対峙してくることを無視している。

海軍海兵隊が肝に銘ずるべきは、現在想定されている程度から急激な予算の伸びは無いことである
●我々は最終的に、5千億円の艦艇、7千億円の潜水艦、1兆円の空母を本当に調達し続けられるのかを問いかけなければならない。

ゲーツ海軍協会講演の続き
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-07
gatesCGSC.jpg●今日の艦艇や潜水艦は80年代と比較し3倍高価になっている。計画を中断したDDG-1000は典型である。建造費が2倍以上になり、当初32隻建造予定が7隻になり、現時点では3隻にまでなっている(現時点では1隻のみ)。

●「次期戦略ミサイル潜水艦SSBN-Xにも注意が必要だ。6千億円のモノを12隻装備する計画になっているが、このままで行けば7~8年後には海軍の艦艇建造予算のほとんどをSSBNが占めることになる
●我々は単に、益々少数しか配備できない、ますます高価な装備品が無駄な装備(Wasting Assets)になることを甘受できないのである
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上記のゲーツ講演から5年が経過していますが、基本的な状況は変わっていないと思います。

中国の海軍増強は加速度的に進んでいますが、それでも米海軍戦力は圧倒的ですし、必要なのは脅威の変化に素直に向き合い、装備体系や投資優先を再検討することだと思います

空母型護衛艦「いずも」が就航しましたが、米海軍大学のヨシハラ教授は「日本版A2ADでは期待されない多用途駆逐艦や高性能航空機は、(平時に)シーレーンやエアスペースを保護する能力を持ち、日本の経済力に見合った国際的な責務を果たすことに役立つ」と表現し、ヘリ空母には小さく小さく平時の災害対処や人道支援に期待しています
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-18

2010年:米海軍と海兵隊に告ぐ
「前半」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-04-1
「後半」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-07

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