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後半:RANDが大レポート:中国軍の問題点 [中国要人・軍事]

米海軍大学Andrew Erickson氏が大絶賛

RAND.jpg11日、米政府の米中経済安保レビュー協議会(USCC)の委託を受けたRAND研究所が、増強し変革し脅威度を強める中国軍の課題や問題点を指摘したレポートを発表しました
中国軍の軍備増強や技術発展を取り上げるレポートは多いのですが、それだけでなく、しっかり弱点も見極めて有効な対処戦略案出に繋げようとの試みです

タイトルを「China's Incomplete Military Transformation: Assessing the Weaknesses of PLA」とするレポートは、300以上の中国共産党出版物の論文や、7名の著者の多様な知見を元に体系的な分析を行っています

後半の本日は、「核戦力」、「技術開発」、「人的側面と規律」、「西側の中国軍評価と軍事交流」等の側面から、膨大なレポートを紹介します。
現物が巨大(6.3MBで約200ページ)で、種々の解説報道も長いものが多く消化し切れていませんが、取りあえずご紹介を試みます

11日付Defense-News解説記事によれば

核戦力の動向と通常兵器
RAND-china-issues.jpg中国指導者は、核兵器が引き続き戦略抑止の中心だと考えるだろう。しかし、もし中国指導者が核兵器の戦略的役割の低下を感じたなら、長距離通常兵器や宇宙兵器やサイバー兵器により重点を移すだろう
●また中国の戦略家も、引き続き核兵器を、核による脅しを抑える手段と考えるだろう。しかし、仮に中国が核兵器をより戦術的に有効だと考え始めたら、これまで戦略家が不必要で不安定化要因だと見なしてきた戦術核兵器の開発につながるだろう

●中国が米国の核を主な対象と見なしていると見ているが、インドが核の近代化を継続すれば、戦域レベルの核抑止や戦力に焦点を移さざるを得なくなる
●また今後も中国は、核兵器と通常兵器の近代化をトレードオフすることなく進め、核抑止戦力の質的・量的強化を継続する。
●中国は今後も、人材確保と訓練、作戦遂行と維持整備、広範な装備近代化(特に空母、ステルス機、宇宙アセット等)に莫大な予算を組むだろう。

技術開発や装備品の課題
USCC2.jpg●ますます複雑化する装備や兵器の融合が問題となっており、それに伴う訓練、支援装備、宇宙や電子スペクトラム防護能力不足が懸念されている
●中国の軍需産業は多くの問題を抱えたままである。広くはびこる汚職、競争の欠如、納期遅延、コスト超過、品質管理の不備などの問題を抱えている
中国発の革新的軍事技術が出現するとは考えにくいがエネルギー兵器や超超音速技術エリアで飛躍を遂げたなら、将来の中国軍の作戦を変える役割を果たす可能性がある

3軍の勢力関係
●海軍や空軍に対する伝統的な優越を持つ陸軍が軍の改善や再構築を主導するが、陸軍はその立場を守ろうとするだろう
●陸軍の影響力が強いため、大陸思考が意志決定や作戦思想を支配するだろう

人的側面の状況
Beijixing-PLAN.jpg●短中期的には、中国軍の人材採用や短期間での人員新陳代謝は大きく変化しないだろう
●中国軍を人的側面で見れば、引き続き、訓練不足と経験不足な幹部に犯され、近代化兵器を将来の統合運用で有効に活用しようとする試みを妨げるだろう
●言い換えれば、中国軍の上級幹部が望むような迅速で決定的な戦闘力発揮は、中核となるべき軍の士官や下士官があまりに少数な上に訓練不足・経験不足で不可能だろう

中国軍の規律と「一人っ子政策」
●中国軍内部のプロ意識欠如は広範な問題で、モラルや規律問題から明白である。この問題の多くは、中国の「一人っ子政策」が生み出した「小皇帝(甘やかされたわがままな子供)」に原因があると考えられる
●中国軍への新規入隊者の8割近くが「一人っ子」で、軍の規律に耐えられない従えない兵士を多く生み出している

西側の中国軍評価と軍事交流について
USCC4.jpg西側の中国ウォッチャーは自身の分析力を過信し、中国の軍事演習等の評価と中国軍能力の評価が正確ではない
●最近ゲーツ元国防長官やウイラード元太平洋軍司令官が指摘した、米国は中国の軍事力の革新や急速な追随を継続的に過小評価しているとの言葉に耳を傾け、中国軍の見積もりを大幅に再考すべきである

中国内では、学者達と実際に軍で作戦指揮する幹部達との間の意見差が大きく、米国に取り軍事対話や交流事業は難しい。作戦指揮を執る軍幹部達は概して「タカ派」で、外部の影響をほとんど受けていない

ロシアとの関係
中国とロシアの関係に変化(悪化)が見られる。これにより中国の安全保障環境が変化し、中ロ国境付近に再び中国軍を増強する可能性がある。
ただし両国の関係が改善すれば、ロシアは引き続き欧州を威嚇し、米軍も兵力をNATO諸国に増強し、アジア太平洋回帰は後退する
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下記に示した「RANDのレポート紹介webページ(要旨、主要ポイント掲載)」を先に眺めていただいた方が良いかもしれません。

China-Navy5.jpg「Defense-Newsの解説記事」は、公開直前に事前に入手した「報告書」を急いで読んで、11日当日にアップしたものであり、こなれていないのは致し方ないと思います
それでも、少しは具体的な事例や例示があった方が分かり易かろうと、「解説記事」を取り上げました。

多くが「どこかで聞いたような」「そういえばそんなことも」的な中身かもしれませんが、体系的にまとめたことに大きな意義があると思います
200ページもの報告書ですので、具体的な数値や図表も多く含まれていると思います。是非参考にしたいものです

「前半:RAND中国軍の弱点レポート」
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2015-02-15

レポート現物(6.3MB)
http://origin.www.uscc.gov/sites/default/files/Research/China%27s%20Incomplete%20Military%20Transformation_2.11.15.pdf  

RANDのレポート紹介webページ(要旨、主要ポイント)
http://www.rand.org/pubs/research_reports/RR893.html 

Andrew Erickson氏が自身のwebサイトで絶賛 
http://www.andrewerickson.com/2015/02/chinas-incomplete-military-transformation-assessing-the-weaknesses-of-the-peoples-liberation-army-pla/
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