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米空軍の重要装備調達の現状と課題 [米空軍]

Pawlikowski.jpg19日、米空軍省の調達担当副次官であるEllen Pawlikowski中将が記者団に対し、米空軍の重要装備調達品目の状況や課題について語りました。同ポストは、米空軍の装備品取得全体を計画して実行する役割を担っています

本日は会見の中から、次期爆撃機(LRS-B)、次期練習機(T-X)、次期空中給油機(KC-46A)、宇宙ロケットエンジン問題、E-8C JSTARSの後継機に関する部分の概要をご紹介します

なおPawlikowski中将(女性)は、化学工業分野で博士号を取得した後に空軍に入隊し、レーザー、衛星通信、偵察分野の開発計画に携わり、空軍研究所の所長や宇宙ミサイルセンター所長も経験している技術開発分野のエキスパートです

次期爆撃機(LRS-B)と6世代戦闘機
LRS-B4.jpgLRS-Bはヘーゲル長官が打ち出した技術優位確保政策「offset strategy」の主要対象であろう。なぜならLRS-Bは長官が同戦略の狙いとしていた、世界中を攻撃対象を厳しい環境下で目標にすることを想定し、「family of systems」の一部として機能するからである
●また、何が現状で可能かを良く把握し、どの技術が活用可能かを見極める点で、国防長官の戦略に上手くフィットしている。ただし現時点では、現在想定している製造機数80-100機を増やす必要性はない。「family of systems」の一部として機能するからである

●6世代戦闘機についても同じようなことが言える。6世代機もプラットフォームや機体自体の意味する部分は小さく、「game-changing」技術を搭載することに力点がある

T-38の後継:次期練習機(T-X)
T-38 tx.jpg●次期練習機(T-X)の選定では、既存の実績がある機体が対象であるかのように思われているが、新規設計機首を除外しているわけではない。性能とコストが条件に合えば、新型機にも参入の余地はある
●既存の機体でも、米空軍の要求に適合させるための改修が必要と考えられるが、コストの振れ幅は大きくない。新型機の場合は、入手希望時期に合うかも必要な確認項目になる
●更に、T-Xで飛行した操縦者が、F-22やF-35に円滑に移行できるかが重要。またシミュレーターでどれだけ訓練が可能かも重要なポイントである

計画に遅れ:次期空中給油機(KC-46A) 
KC-46A.jpg●11月10日の週にボーイングから開発進捗レポートがあり、2017年8月の初期運用能力(IOC)獲得は可能だが、機内配線で見つかった問題を解決しなければならない事が明らかになった
●機内配線の課題は、当初予期していたよりも困難な問題である。スケジュール調整に努力し、予備時間内で解決できるよう取り組んでいる
●空中給油機能のないKC-46A型機の完成が遅れているが、年末までには入手できるだろう

宇宙ロケット用:露製エンジンの代替
RD-180.jpg米軍の宇宙ロケットが依存している露製RD-180の代替エンジンを確保するため、来年2月に提出の2016年度予算案に必要な計画を盛り込む
●米空軍は国防省と連携し、国際的な打ち上げ市場で競争力のあるエンジンを選択したい。国際的市場を得ることで、民間資金を集め、製造数を増やし、コスト低減を図りたい
●細部の調達戦略を練っているところだが、米空軍は市場を注視しており、幾つかの企業が開発に動くだろうと考えている。それが答えになるだろう

E-8C JSTARSの後継機検討
JSTARS.jpg来年の1月か2月に、E-8C JSTARSの後継検討が前進することを願っている。2015年当初にケンドール国防次官(調達担当)が了解してくれれば、関係製造企業とより緊密にコストと性能について話が開始できる
ボーイングやNorthrop Grumman等々と、可能な選択肢について議論を深めたいが、機体とセンサーと統制装置を別々の企業から購入するのは、システム構築上でリスクが大きいと思う
主契約企業1社を決めることが良いのでは、と考えている。2015年中には何らかの提案要求書をまとめ、2022年には運用可能な状態にしたい
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pawlikowskiLTG.jpg盛りだくさんに、舌足らずですが取り上げました。
「family of systems」とは、一つのアセットだけで問題に対処するのではなく、航空機、ミサイル、ISRアセット、電子妨害装置等々を全て組み合わせての戦力発揮を念頭に、一点集中ではなく、「family」全体で脅威に対処しようとの考え方です。

「露製RD-180の代替エンジン確保」に象徴されるように、民間の力に「おんぶにだっこ」し、コストを極力抑えたい気持ちが前面に出たのが技術優位確保政策「offset strategy」であり、Pawlikowski中将の会見にも、そんな思いが随所に垣間見えます

関連の過去記事
「第3次のoffset strategy」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-09-06-1
「次期練習機(T-X)は2年凍結?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-19
「固定経費規約のKC-46A」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-07-25
「露製RD-180への依存は?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-08-22

「レーザーとPawlikowski中将」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-01

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