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衝撃:オバマの新軍事戦略@陸軍士官学校 [安全保障全般]

第13回アジア安全保障会議(シャングリラ・ダイアログ)絶賛詳報中!
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-05-27
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米国の直接的脅威でない問題には、同盟国やパートナー国で対応

Obama-westpoint1.jpg5月28日、オバマ大統領は陸軍士官学校の卒業式でスピーチし、米国の新軍事戦略と報道される考え方を明らかにしました。
米国に直接攻撃が無ければ、軍事力使用の敷居を上げる
米国の直接的脅威でない問題には、同盟国やパートナー国による対応を促す

などなどの表現でメディアが紹介していますが、アジア太平洋に関しほとんど言及の無いこの演説を、本日は米空軍協会webの要旨解説記事でご紹介します

大統領のメッセージは明確だった・・
●イラクやアフガンでの戦いが沈静化する中、ウクライナへの露軍の侵攻や太平洋での中国の力による領土要求にも、米軍は大規模な派遣や動員を行わない。しかし、問題地域の同盟国や友好国への助言や装備品提供をしっかりやる
●米軍の大規模介入なくテロとも戦い、米軍の過剰な活動で新たな敵を作ることを避ける

Obama-westpoint12.jpg●もちろん過去6年間言い続けてきたように、必要ならば、国益の核心が侵害され、国民や同盟国の安全が危険にさらされたなら、国際社会の承認を得ることなく、一方的にでも軍事力を使用する。
南ウクライナや南シナ海で侵略行為があれば、同盟国にインパクトを与えることになり、米軍事力を呼び込むことになろう
ただし、そのような状況は稀だろう米国はエネルギーの独立を築きつつあり、同盟のリストを拡大しており、脅威が差し迫った時にだけ戦争に向かう場合は、常に同盟国等と共に立ち向かう

●世界の懸念でも、米国の直接脅威でないならば、仮に単独行動でないにしろ、米軍軍事作戦の敷居は高めなければならない。米国はウクライナでそうであるように、外交や制裁や孤立化策を用い、国際法規に訴え、真に必要な場合も効果的で多様な軍事行動を最後の手段とするべきである
中国に関し、サイバー攻撃による深刻な問題を抱えており、我のネットワークと国民を守るため規範の設定に取り組む。南シナ海の係争に関し、国際規範基づく解決に向け取り組む。
最も高価な過ちは、我々の抑制からではなく、結果を良く考えず軍事行動に突き進むことによってもたらされる。24時間のメディアが世界事象をカバーする中、米国の対応も変化すべきである


中道の道:同盟国を支援して
Obama-westpoint13.jpg米国は中道の道を歩むべきである。つまり、自己中心的に事態を解釈し、シリアやウクライナや中央アフリカでの事象は米国の問題ではないとの姿勢と、米国の関与意欲が世界中の混乱防止の安全ガードであり、シリアやウクライナでの米国の失敗は暴力の加速を招くといった姿勢の間であるべき

●ウクライナへのロシア軍戦車の侵攻が懸念される中でも、米国への最大の脅威は依然としてテロである。
●アルカイダの中核リーダーを粉砕しても、その分派や末端派閥が中東やアフリカで活動を続けている。議会に5000億円の対テロ協力援助資金を要求し、地域の友好国へ提供し、関係国の能力を強化し協力してより効果的に対処する
無人機による選択的な攻撃を今後も許可し、継続的で差し迫った脅威に対してのみ、周辺への被害を極限に最大限配慮して行う。

ロシアや中国との冷戦ではない
ロシアや中国の状況はあるが、これは冷戦ではない。ロシアのウクライナへの冒険主義は、経済制裁やG7の制裁で抑止できている。暴力に訴えることなく、米国のリーダーシップは効果的に発揮されている
米国は不可欠な国家であり続け、世界をリードする。しかし、そのやり方は変化する。米国の国際機関や地域同盟への関与も、急速に変化する世界情勢に対応するため、変化する(どのように変化するかには言及せず)

Obama-westpoint14.jpg私の言いたいポイントはこうだ。米国は常に世界をリードする。米国がやらねば誰もやらない。君たちが選んだ米軍は今後も米国のリーダーシップの背骨だ
しかし、様々な全ての状況において、米国の軍事行動が必ずしも、米国の唯一の、又は主要な、リーダーシップの構成要素であるわけではない

以下、世界の安全保障懸念国(イラン、シリア、エジプト、ビルマ、ウクライナ)に個別に言及した。北朝鮮とベネズエラには言及なし
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猛烈な破壊力のある演説です。私がロシアや中国高官だったら、飛び上がって喜びます。世界中で好き勝手にできると・・

china-russia.jpgヘーゲル長官はシャングリラ会合で、このオバマ演説を米外交政策の「次のフェーズ」を示すもので、アジアへのリバランス政策は「リアリティ」だとフォローしましたが、アジア諸国に「自助努力」を訴え、米国は装備品売却と訓練で貢献するとの主張を繰り返していました

読者の方から、米空軍協会webの解説記事は「かなりオバマ演説を曲解している」とのご指摘も頂いています。その通りかもしれません
一方で、米軍よりの米空軍協会機関誌の編集長がこのような解釈を行うと言うことは、これまでのオバマ大統領の軍への態度やその経緯を知る国防省や米軍関係者にとって、「オバマ演説」はこのような意味を持つのだとも思います。

日本でほとんど報道されていないながら、重要演説だと思いますので、あえてセンセーショナルにご紹介しました

まんぐーすの解釈に異論のある方もいるでしょうが、今後様々に「オバマの新軍事戦略@陸軍士官学校」は分析されるでしょうから、その際のご参考に供します。

ホワイトハウス発表の演説トランスクリプト
http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2014/05/28/remarks-president-united-states-military-academy-commencement-ceremony

本演説を批判する岡崎研究所の論評
「重要事項に言及しない空虚なオバマ演説」
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3982
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安野正士

まんぐーすさん

いつもブログ記事を参考にさせていただいており、大変勉強になります。この記事は、かなり衝撃的な内容でしたので大統領のスピーチをYoutube(http://www.youtube.com/watch?v=fG_hX_XM4Ks) で聞き、リンクを貼っていただいているトランスクリプトも読んでみました

私の見たところ、Air Force Magの記事はかなり解釈が入っていて、要約としては信頼できない記事だと思います。

例えば「助言や装備品の提供」を主にやる、と大統領が述べたのは他国からの脅威にさらされた同盟国について言ったのではなく、破綻国家の問題を解決する手法として、PKO等に要員を出している国の軍隊に対して訓練や装備品を提供する方が効率的だ、という文脈で言っています。

また、オバマさんは米国には直接脅威とならない事態への対処で、軍事力使用の敷居を「これまでよりも高める必要がある」とは言っていません。原文は "threshold for military action must be higher"ですが、自然に読めばこれは、その直前に述べた「米国の核心的利益が危機にさらされた場合」に比べれば、「そうでない場合には軍事力行使の敷居はより高く設定する必要がある」という意味であると分かります。

全体としてオバマ大統領の演説は、同盟国の責任分担を強調し、アメリカの軍事力の役割を抑えようとしたニュアンスのものであることは疑えませんが、Air Force Magの記事をもとにすると、ややニュアンスを読み誤る可能性があるかと思います。

影響力のあるブログですので敢えて長文のコメント失礼しました。


by 安野正士 (2014-06-02 19:49) 

まんぐーす

安野正士さま コメント有り難うございます。トランスクリプトをしっかり読んでいないまんぐーすにとって、まことに貴重なご指摘です。お恥ずかしい限りです。

一方で、米軍よりの米空軍協会機関誌の編集長がこのような解釈を行うと言うことは、これまでの経緯を知る国防省や米軍関係者にとって、「オバマ演説」はこのような意味を持つのだとも思います。

日本でほとんど報道されていないながら、重要演説だと思いますので、あえてセンセーショナルにご紹介しました。
by まんぐーす (2014-06-02 20:28) 

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