SSブログ

進化するイージス艦IAMDを学ぶ [Joint・統合参謀本部]

Aegis2.jpg7日付米海軍協会web記事が、益々高度化する各種ミサイル等脅威に対処するためのイージス艦への施策である「NIFC-CA」構想や、新型イージス艦用システム「BASELINE 9」の現状について解説し、併せてイージス艦独自の取り組みも紹介しています

「NIFC-CA」構想や新型ソフト「BASELINE 9」については、その存在をご紹介してきましたが、本日は海軍司令部のイージスシステム担当副部長であるJim W. Kilby大佐へのインタビュー記事を通じ少し具体的に開発状況をご紹介します

7日付米海軍協会web記事によれば
1980年代、マッハ2で侵攻するソ連のTU-22M爆撃機対処のために開発が始まったイージス防空システムだが、今や兵器の発達に対応し、マッハ20の弾道ミサイル対処までを想定するようになっている
●一方で巡航ミサイルの発達も目覚ましく、弾道及び巡航ミサイルの両方に同時対処を求められ、IAMD(Integrated Air and Missile Defense)と呼んでこれに取り組んでいる。

新イージス艦システム「BASELINE 9」
Aegis.jpg●「BASELINE 9」は、イージス艦や地上配備イージスシステムに新たなハードやCPUチップを付加し、イージスシステムに航空機、巡航ミサイル、弾道ミサイルに(柔軟に)対処できる能力を与えるものである
●旧システムでは、脅威の距離や種類に応じてレーダーを選択して対処を考える必要があった。しかし今や、対処モードの切り替えにより、BMDやIAMDや通常防空を個別に選択できるようになった

●「BASELINE 9」には数種類ある
9A: BMD機能のないTiconderoga級に提供するタイプ
9C: Arleigh Burke級を能力向上し、BMDと防空の切り替えを可能にするタイプ
9D:上記9Cを新造艦用にしたタイプでJohn Finn (DDG-113)以降に適用
9E:地上配備イージスシステムに適応のタイプ


NIFC-CAの状況
イージス艦システムをNIFC-CA構想で空母艦載機のレーダーやISR情報と連接することにより、イージス艦レーダーの探知範囲外の目標に対処可能になる
●また、従来の射程約100nmのSM-2ミサイルに代わり、自立シーカーを備えて「打ちっ放し可能」なSM-6ミサイル(ネット情報では射程230nm)と組み合わせ、対処可能範囲を拡大する

USS Chancellorsville.jpg●「Baseline 9」を最初に搭載した巡洋艦Chancellorsville (CG-62)の艦長は、「艦艇のレーダー以遠の情報を入手できれば、SM-6の能力を最大発揮できる」と喜んでいる
●昨年11月の試験で無人標的機が艦艇に衝突して11発のSM-6発射試験が遅れたが、2014年後半には、NIFC-CA運用が可能な最初の空母Theodore Roosevelt戦闘群と共に展開して各種試験を行う


早期警戒機E-2Dの不足が課題
E-2D.jpg●海軍はNIFC-CAの開発を進め、空母艦載機を中心としたモデルを描いているが、中核となって航空機のISR情報を艦艇に送る早期警戒機E-2Dの不足が一つの課題である。
●このため、現在2隻の「Baseline 9」艦艇があるが、射程延伸能力を最大限に活用できていない

●また実際の兵器運用には、これまで必要なかったネットワークで連接する航空機との連携も必要であり、新たな手順を確立する必要がある。
●1つの艦艇内で収まっていた手順より複雑になるが、今後空母Roosevelt戦闘群との訓練や試験を通じ、この辺りを煮詰める必要がある。

●更にイージス艦関係者は、空母艦載機に頼らず「Baseline 9」の能力を生かしたいと検討している。その一つはイージス艦専用の目標探知用無人機の運用である
●海軍司令部の担当部署は、NIFC-CA構想の発展型について種々のアイディアを検討している


イージス艦部隊の不備指摘
Aegis3.jpg●2010年に行われた米海軍艦艇部隊への査察(通称「Balisle report」)は、イージス艦隊が部品や訓練不足と、十分な技能を持つ要員の不足を指摘した。これは組織への大きな警告となり、皆の注目を集めた
●この査察報告を受け、2011年に米海軍が手がけた「Aegis wholeness project」の甲斐もあり、海軍はイージス部隊を巡る問題は過去のものとなったと主張している
●そしてNIFC-CAやBaseline 9でIAMDの世界に入りつつあり、更に前進しようとの雰囲気にある
//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////

「NIFC-CA」構想や「BASELINE 9」の状況についてお勉強しました。
本年後半に予定されている、空母Roosevelt戦闘群と巡洋艦Chancellorsvilleとの各種訓練と試験に期待いたしましょう

ところで、艦艇部隊への査察(通称「Balisle report」)は初耳でした
10年以上にわたるイラク&アフガンでの戦いと、海軍への影響についてはフォローしてきませんでしたが、BMD関連で大忙しのはずのイージス艦ですらこの状況です
他の海軍部隊は大丈夫でしょうか? なぞのベールに包まれた「潜水艦部隊」なども気になります

ところで、海軍に比し、米空軍は後ろ向きな話題ばかりです。今の焦点は、空軍の要求する「A-10全廃」を米議会が認めるか・・です。認められなければ他を削減か・・です。
前向きの話がありません。F-35への固執が招いた「自業自得」ではありますが

米海軍の作戦構想関連
「SM-6で艦艇が遠方目標対処へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-27
「米海軍のNIFC-CAとは」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-01-26
「なぜ8機EA-18Gが必要か」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-03-13
「ステルス機VS電子戦機」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-22

「UCLASSの要求性能原案」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-19
「なぜUCLASSが給油任務を?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2014-04-02-1
「UCLASSで空中戦?」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-24

nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:[必須]
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

トラックバック 0