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対中国軍事構想に進展なき中で思う [ふと考えること]

Rethinking Seminar.jpg中国の軍事力増強が意味する「脅威の変化」を、つまり空中戦ではなく、弾道/巡航ミサイルやサイバー/宇宙戦への対処を考える必要があると訴えてきましたが、特に何の変化もないのを「むなしく」感じております
集団的自衛権や「グレーゾーン」を巡る政治レベルの議論が、「ため息の出る」レベルで終始している事も、この「むなしさ」に拍車をかける今日この頃です。

そんな中ですが、「ほんの少しだけ」戦いの実相を「意識した」意見も散見されるようになってきましたので、つまみ食い紹介いたします。
筆者のお立場上、不完全燃焼感たっぷりの論文ですが、それでも「精一杯」の言及でしょうから、皆様のご参考に取り上げます

A2AD対処能力構築と抑止態勢構築のジレンマ
論文の原題は「緊縮財政下の米軍とアジア太平洋での抑止態勢
国際安全保障2013年12月号P74~by高橋杉雄of防研

現状の分析&認識
TakahashiSG.jpg●何を抑止するかが重要。東及び南シナ海では、ハイエンドの武力紛争より、グレーゾーンの課題が重要な問題
●平時からグレーゾーンの課題とは、明確な侵略対処ではなく、相手の隙を見て多様な手段で圧力をかけて現状変更や膨張を行う「機会主義的漸進的拡大」で、これへの対応が重要
●このような対応で重要なのは、ISRを伴ったプレゼンスであり、前方に一定以上の戦力展開が重要になる

●しかし兵力の前方展開は、有事の際に相手A2ADの第一撃で無効化されるリスクを高める。
●第一撃での無効化を避けるため、戦力を後方に分散配備させれば、「機会主義的漸進的拡大」を促進するリスクを高める。この2つの相反する要求に応えることが、今後の抑止体制構築には不可欠

RIMPAC2010-2.jpg●その場合重要なのは、エアシーバトルが打出す領域横断的な対A2AD作戦の実効性。グレーゾーンから有事までの多様な事態に、有効に対応できる可能性がある
●ただしその際に不可欠なのは、前方展開基地の「強靱性:Resiliency」で有ることは言うまでもない。結局のところ、これなくして有効な対応は不可能

エアシーバトル議論で、(米軍の)前方展開戦力の撤退を含意するとの解釈があった。議論を主導したCSBAはそのような考えを持っている
●また確かに、空母艦載無人機UCLASSや次期爆撃機LRS-B開発重視の米軍は、その方向に向かっているようにも見える

しかし上記装備は今後10年間に実戦投入可能とは考えにくく、現在の米軍は足の短いF-35を中心とする抑止態勢を構築しなければならない。
やはり前方展開基地や空母群はA2AD下では必要で、同盟国の協力といった、能力整備だけではない要素も必要になる。米国の抑止力の有効性は、予算だけでは決定されない

2つの相反する要求に応えるためには、(米軍は)前方展開戦力を維持しつつ、その強靱性を高めていくことが不可欠


ガイドライン見直しへの含意
hagelJpDM3.jpg特に強靱性を高めるには、日米防衛協力が不可欠。ガイドライン見直しを通じ、運用レベルでの協力を強化し、日米同盟の抑止力向上を。
例えば、弾道/巡航ミサイル防衛、防空、対潜水艦作戦、基地の被害対処能力、兵力分散のための代替基地整備、「中国側の戦力展開を妨げるA2AD能力の整備・展開
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まんぐーすの勝手な解釈
obamachina.jpg●米軍がF-35の泥沼に落ち、エアシーバトル構想推進も予算の強制削減と軍種間の縄張り争いで混迷の中、「今後10年間」は前方展開戦力の撤退は先送り
●「今後10年間」は、米軍前方展開戦力の維持を支援してその強靱性を高める協力で日米同盟をなんとか維持

●「エアシーバトルが打出す領域横断的な対A2AD作戦の実効性」確保に期待しているが、例えばUCLASSやLRS-Bの現状を見るに、不透明・不確実なので触れられず。 
●前方展開基地の「強靱性:Resiliency」は不可欠だが、これが極めて困難なことはCSBAがエアシーバトルを打ち出すまでの各種検証演習で既に明らか

●だから本当は「中国側の戦力展開を妨げるA2AD能力の整備・展開」の部分を大いに議論したいが、立場上、何にも言えない


まんぐーすは思います・・
●中国のA2AD脅威を考えれば、米軍が「今後10年間」前方展開戦力の維持してその強靱性を追求するのは、軍事的合理性から見て矛盾しています。CSBAがエアシーバトルで打ち出した、長距離ステルス攻撃重視が合理的だと思います
●高橋氏が主張する日米同盟維持策は日本の基本的立場と近いでしょうが、軍事的合理性に反する方向で米国と議論をしなければならない点で、日米双方とも「話に身が入らない」「知恵が出ない」状況を招いています

おにぎりマングース.jpg●そこでまんぐーすは、脅威と財政の現実を見つめ、泥臭い方向を追求すべきではないかと思います。
●先日「作戦サイクルなど役に立つのか?」(→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2014-05-05)との小論で方向性を述べたように、被害状況を前提として、指揮統制も装備体系も、航空機中心から離れて誘導兵器などに主軸を置いた方向に頭を切り換えてはどうかと思います

平時からグレーゾーンにおける「機会主義的漸進的拡大」への対応は、空の部分では、空中給油機と限定数の戦闘機にセットで任せ、有事にはあまり期待しない方向での割り切りが必要かと思います。
●更にグレーゾーンでは、ソフトの柔軟性、つまり法的な整備により現場がより動きやすい環境を整え、より強い対応を政治的に許容することで、効果的な対応が可能になるのでは・・と思います。

まだまだ知恵が足りませんが、軍事的合理性に反する方向では、現場に軋轢を生みかねない・・・特にグレーゾーンや有事の際に日米間で・・
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