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米国防省の研究開発予算を分析する [米国防省高官]

RDT&E4.jpg20日付Defense-Newsが、米国防省の研究開発・試験評価(RDT&E — research, development, test and evaluation)予算を分析し、全体の予算額からだけでは見逃しがちな問題点や課題を指摘しています。

非常に技術的で専門的な記事でもあり、正確に記事の中身を理解できているか「?」な気もしますが、熟しつつある果実は早く収穫し、リスクを伴う研究開発には及び腰・・といった雰囲気をご紹介したいと思います

20日付Defense-News記事によれば
RDT&E.jpg2014年度予算でのRDT&Eは約6.3兆円であり、装備品調達経費より3.6兆円少ないが、2015年の要求案ではその差は2.6兆円に縮小している。指導者達がRDT&Eの重要性を認識し、予算確保の姿勢を示しているのだ
●しかし細部に目を向けると、RDT&Eの7段階のうち5段階目に当たるSDD経費(システム開発・デモ経費)は、2009年から2018年にかけ半分以下になる見込みである。

SDDは試作品(prototype)レベルに達した開発品を、生産可能で現場配備可能なレベルにまで仕上げる経費である。大まかな科学研究レベルを、作戦試験にまで仕上げる過程である
●この予算配分は、より多くの試作品を作るが、しかし実戦配備はせずに一時保管しておく事を意味する。期待できる新技術を眠らせて保管するのだ。
一方で、6段階と7段階目の予算は維持されており、近未来に成果を生むRDT&Eは、まだ受精後間もない胎児よりも優先されているのだ

●具体的に最終段階への予算配分を見てみると、オハイオ級後継艦である次期戦略原潜、沿岸戦闘艦LCSのモジュール、米空軍の宇宙観網(Space Fence)、米陸軍の戦場ネットワーク(WIN-T)、BMDレーダー投資など、投資回収が見えている項目が並んでいる。
●次期爆撃機LRS-Bも守られた分野だが、他の多くの次世代の開発技術は保管されることになる。強制削減を予期し、他の分野では「お金が準備できるまで待つ」姿勢だ

リスクを伴う研究開発を避けるな
RDT&E3.jpg●しかし国防省が目指すべきは、調達関係者が避けがちな、大きな飛躍を起こす一方で、リスクも高い研究開発分野でもある。国防省幹部は、リスク回避な姿勢を変えたいと思っている
●2015年度予算案の議会説明で研究開発担当の次官補は、リスクを恐れない投資を確保するため、各軍種のR&D予算を犠牲にして、DARPA予算を確保することも一つの方法だと語った。

リスクを伴う投資を避ける傾向は、軍需産業にも当てはまる問題だ。国防省幹部は軍需産業に、このような分野への投資を働きかけている。必ずしも軍需産業界は態度を改めてはいないが
●Defense News による昨年の分析では、1999年から2012年にかけ、主要な軍需産業はその研究開発費を約1/3も削減している。

国防省による企業の研究開発支援
国防省も企業による研究開発を促進する施策を行っている。例えば、以前特殊部隊が使用していた舟艇「Stiletto craft」を海洋システムの試験船舶扱いにし、企業が比較的気軽に試作品のテストを行える様にしている
Stiletto craft2.jpg●企業が利用した例には、無人機の離発着テスト、小型ボートの発着テスト、多様なセンサーや装備品の海上試験がある。実任務がある本物の艦艇では敷居が高いが、軽易な試験環境を提供することで、2013年には計56件の各種試験が行われた

わずか2週間の事前調整で試験が実施された例も複数あり、結果として企業の研究開発を刺激し、20件以上の正式調達装備を生み出した
●しかしこのような試みへの予算配分は流動的で、「Stiletto craft」が呼称した際の修理費は確保されておらず、代替品もない。また、全体予算削減時の「きりしろ」となる恐れも高く、組織としての認知や支援がまだまだ必要である

強制削減と研究開発費
国防省の研究開発関係者は、RDT&E予算は固定経費扱いにすべきで、少なくとも増減の少ない「フラット」で有るべきだと主張している。この考えは1990年代の冷戦終結後の国防費削減時にも提唱された考え方である
強制削減は全経費科目を一律何%カットの発想だが、これではRDT&Eを守れない。つまり将来を守れない。
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強制削減で大変だ・・と叫ぶだけでなく、このように冷静に分析して頂くと素人の頭の刺激になります
かなりハッしょってご紹介しましたので、ご興味のある方はご自身で確かめて下さい

Stiletto craft.jpg「Stiletto craft」の例のように、企業に少し便宜を図ったり、規則を緩和したりするだけで、企業の研究開発を促進できる分野が日本でもありそうな気がしますが・・・
それほど防衛省・自衛隊の負担にならず、官民が協力して技術開発を促進する手段がありそうな気がします。顔を合わせる機会が増えるだけで、ずいぶん違うような気もしますが・・

この辺りの発想は「内局のお役人」からは出てこないかもしれませんねぇ・・。

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「レーザー兵器開発の動向」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-01
「電磁兵器CHAMP開発中」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-08
「2014年度の開発重点」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-04-18
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