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米議員が指摘:露はINF全廃条約に違反 [安全保障全般]

Rubio.jpg25日、共和党のMarco Rubio上院議員がヘリテージ財団で講演し、ロシアがINF(中距離核ミサイル)全廃条約に違反して同ミサイルの開発試験を継続していると非難しました。
そして米政府に対し、ロシアとの軍備管理交渉を一切止めよと訴えました

中国や北朝鮮やイランが好き放題に中距離弾道ミサイルを開発配備する中、米国とロシアだけが冷戦時代に締結された「INF全廃条約」を維持するのはナンセンスだと指摘してきたところですが、これを機会に是非議論をしてほしいと思います

Marco Rubio上院議員(フロリダ選出)は
Rubio2.jpgロシアは、彼らが加盟している全ての兵器管理条約に違反しているとの興味深い状態にある
米国政府は、かなり以前からロシアがINF全廃条約に違反してミサイル試験を行っていることを承知していたはず。

米国政府が新たな兵器管理合意に向けた協議を模索し、例えば新START条約を打ち出した中で、ロシアの違反が広範に行われているのが実態だ
このような情報をNATO関係国に隠していることは、米国とNATOとの信頼関係に深刻なダメージを与える。

米国が真剣に吟味せずにロシアを信頼していることや、ロシアが現米大統領や政権関係者を信用していないことを、米国はあまりにも安易に扱っている
●我々はまずロシアのメディア報道によく注目し、露が日常的に複数の合意事項に違反している豊富な証拠を収集し、違反が続く限り、ロシアとの如何なる交渉も行うべきではない

「INF全廃条約」を復習します!
(INF:Intermediate-range Nuclear Forces)
INF-USRU.jpg1987年12月8日、当時のレーガン大統領とゴルバチョフ首相によって署名された同条約は、相互に射程500kmから5500kmの地上発射弾道ミサイルの廃棄と保有禁止を約束するもの。
●翌年6月1日に施行され、米側はGLCMとPershing IIミサイルを、ソ連側はSS-20中距離弾道ミサイル等を両国総計2689発廃棄することに合意

●経緯を復習すると・・
--ソ連が80年代初め、SS-20という中距離ミサイルをソ連の欧州部と極東部に配備した。
--当時のドイツのシュミット首相が、ソ連がこのミサイルで欧州の諸都市を攻撃した場合、米はNYやDCを犠牲にする覚悟で、米本土からソ連の諸都市を攻撃してくれるのかとの問題提起をして、このSS-20の配備で米と欧州の安全保障がデカプリング(切り離し)されることを問題視した。
INFinspection.jpg--米国は西ドイツの主張などを踏まえ、結局核搭載パーシングーⅡと巡航ミサイルの欧州配備に踏み切った。それを梃子にSS-20の廃棄をソ連に要求した。紆余曲折があったが、中距離核ミサイルをグローバルに全廃することで米ソは合意した。

当時、日本はデカプリング論はしなかったが、ソ連極東部へのSS-20には異議を唱えた。当時中曽根総理が力を入れた問題であった。日本は当時もろ手を挙げて歓迎した。
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Rubio上院議員は「突っ込み不足」です。副大統領候補にもなったキューバ系米国人で、若手の有望株ですが、INF全廃条約の破棄まで突っ込んで訴えて頂きたいものです。

過去のWSJ論説(ボルトン氏の主張)
●核廃絶を望んでいるオバマ政権は加盟国拡大を好むと思われるが、中国、イラン、北朝鮮がこの条約に参加する見込みはない
ロシアはINF条約の加盟国拡大がない場合、その遵守を停止すると思われる。その場合、米はロシアの条約侵犯を無視せず、米による遵守を停止するか、完全にこの条約から脱退し、INFミサイル能力の再建を考え始めるべきである。

識者の論考
Putin.jpg●イランや北朝鮮も弾道ミサイルを開発している。その射程はINFの射程に至る。直ちに米本土への脅威にはならないが、わが兵力や同盟国などに脅威になる。
2008年4月にプーチンがINF条約存続について疑義を出している。ロシアは中国と北朝鮮と国境を接しており、イランにも近いので、この問題を我々以上に深刻に考えている。

●この条約は今の勢いでは廃棄と言うことになる可能性がかなり高いと判断している。
ロシアが中距離核ミサイルを持つ脅威と、中国などが中距離ミサイルを展開している現状への対応策をどうバランスして考えていくのか、国際情勢判断としても政策問題としても難しい問題であり、真剣に取り組むべき問題である。
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陸軍は中距離ミサイルでミニA2ADを
CSBD副理事長の主張
Thomas-CSBA.jpg中国は弾道ミサイル部隊「第2砲兵」を編成し、他国の陸軍相手ではなく、他国全体や海からの接近阻止に備えている。
この中国部隊は最新A2ADシステムをリードし、防空網や宇宙兵器や最新戦闘機や静粛な潜水艦やサイバー兵器とともにA2ADを支え、米国が戦力投射するコストを押し上げ、米軍による遠方での作戦と統合作戦をより困難にしている。

●特にA2ADは陸軍の派遣展開活動を困難にしている。展開に陸軍が利用する港や空港は敵A2ADの容易な目標で、装備の集積場所も簡単な目標である。先端の潜水艦や機雷は、海上交通路に脅威を与える
米軍戦闘機の展開先も同様で、将来は一時的な移ろいやすい航空優勢獲得が精一杯だろう

●海空軍はエアシーバトルでA2AD対処を考えているが、陸軍は排除されたと考える必要はない。しかしその為に陸軍は、伝統的な展開しての地上戦指向から、前線展開のミサイル部隊構築に焦点を変更しなければならない。現在も限定的ミサイル部隊を保有しているが、射程300km以上や対艦ミサイルが欠けている。
中国やイランに学ぶと、米陸軍は独自のA2ADミサイル部隊ネットワークで、前方展開の海空軍部隊を守り、一方で敵航空機、艦艇、地上目標を攻撃できる。技術を生かして新たな移動発射機も準備すべきだ。これらは海軍艦艇の発射機とは異なり、対空、対艦、ミサイル防衛ミサイル等、多様なミサイルに対応可能であるべきだ

DF-21D 4.jpg●陸軍のミサイルは、第一列島線沿いの日本から南西諸島やフィリピンまで、対艦ミサイルや隠蔽可能なミサイルを展開でき、中国海軍の行動の自由を奪うだろう
●地上配備ミサイルは、海空アセット装備のミサイルより多くの点で有利である。衛星通信でなく、地下の光ファイバー通信網を活用でき強靱で、電子妨害にも強い。多数の弾薬を保有することが出来、また艦艇に比べ運用コストも低い
●ミサイル防衛分野では、実用化が間近なレーザー兵器や電磁波兵器が地上では活用しやすい。これら兵器は攻撃単位のコストを劇的に低下

中距離ミサイルを保有する場合、米国はロシアと締結しているINF全廃条約を破棄する必要がある。射程500kmから5500kmの地上配備ミサイルの保有を禁じたこの条約は、中国やイランや北朝鮮がINFを保有するに至って無用の縛りとなっている。ロシアも破棄を願っているだろう
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日本の環境を考えれば、脆弱でいざという時にほとんど役に立ちそうもない戦闘機だけに投資するのではなく、戦車や大砲や災害対処に固執して陸自に組織防衛させるのでもない、上記のようなアイディアを是非日本にも導入したいモノです
「INF全廃条約」の縛り解除は、その第一歩です

本件関連の重要な過去記事
「米陸軍にA2ADミサイルを」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-14
「INF条約25周年に条約破棄を」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-12-10

鳩山政権時の日米共同訓練訓辞で更迭された中澤1佐
→「米国の軍事専門家が共通して主張するのは、南西諸島における地対艦ミサイルの配置である。彼らの論はコンセプトの段階ではあるが、十分、傾聴に値する
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-10
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