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ガイドラインへ提言:Front OfficeとBack Office概念で [安全保障全般]

Schoff-report.jpg16日、カーネギー財団のJames L. Schoff上級研究員が「How to Upgrade U.S.-Japan Defense Cooperation」との論文を発表し、今年12月を期限に進められるガイドライン見直しへの提言を行っています。
従来のガイドラインでは日本の役割が「rear-area support」限定であった点を改め、小売業界で用いられる「front officeとback office」概念における「back office」機能を担うべきだと主張しています

日本の内政や国民感情を踏まえつつ、中国や韓国との関係にも配慮し、いきなり「敵地攻撃能力を持て」と迫るのではなく、現代の戦いで極めて重要な役割を担うISR(宇宙状況掌握も)、海洋安全、サイバー、電子戦、対潜水艦、ミサイル防衛面や兵站支援で米国等とより直接的にリンクする「back office」任務を期待し、これを通じて日本により深い作戦計画への関与を図るとの提案になっています

ガイドライン改定議論を要求した日本政府の思惑と、Schoff上級研究員の提言がどの程度リンクしているのか不明ですが日本や中韓豪等のアジア情勢にも配慮した提言なので、何時ものように「つまみ食い」紹介させて頂きます

James L. Schoff上級研究員の経歴等
http://carnegieendowment.org/experts/?fa=745

現状の認識
schoff.jpg最初のガイドラインは、ソ連の海軍軍拡等を背景として1978年にまとめられた。これを基に日本は、1000マイルのシーレーン防衛を打ち出すまでに至ったが、基本的に米国が槍で日本が盾の役割となっている
●北朝鮮を巡る朝鮮半島情勢の緊迫を背景に、1997年にガイドラインが改正された。これで日本は「日本周辺地域」において米軍の「rear-area support」を行うこととされたが、憲法上の制約もあり米軍の作戦を直接支援することは出来ず、戦闘地域での活動を避けるモノに活動は厳しく制限され、かつ都度国の承認が必要とされている

●今時の見直しでは、日本はより意味のある信頼に足るパートナーになるべきであり、米国だけでなく広範な関係国との関係でもそうなるべきである。また周辺国の誤解を避けるためにも、明確なコンセプトが必要で「front officeとback office」の概念が有効

「front officeとback office」の概念
小売店の活動を例に考えると、現ガイドラインでは米国が人事管理、商品調達、在庫管理、会計、IT設備管理、店舗の保安、消費者調査等とを全て行っている。日本はこの店舗運営から離れた場所で、商品倉庫の場所や職員の住居や訓練場所を提供し、病気の職員の手当を行う程度。
●商品を店舗に届けず、近くまで持ち込むだけで非効率であり、孫請け企業程度の役割で店舗運営のパートナーとは見られていない

Japan2013-9.jpg●新しい概念では米国は引き続き店舗運営の「front-office」任務を果たす。しかし日本も店舗運営に直接リンクする「back-office」任務を担う。会計や市場調査、ITや店舗の保安、商品配達や種々の支援がこれに当たる
●国防任務に当てはめると、「back-office」の責務はISR(宇宙状況掌握も)、海洋安全、サイバー、電子戦、対潜水艦、ミサイル防衛面や兵站支援等に相当するだろう

●「back-office」での任務とは、後方地域だけで日本が関与する事を意味しない。その任務は「店舗」での事象に直接関与することであり、前線の米国や関係国と緊密に協力して効率的な任務遂行を示す
●例えば、日本はより前方地域での偵察を支援するし、補完的にGPS防護のための電子戦を遂行したり、敵通信の妨害も想定できる。多くの選択肢があるが、日本がどれだけ許容できるか、また周辺国が需要可能かによって中身は変わりうる

本コンセプトの利点
同盟の生産性を高める。後方地域にいては判らない教訓を共有でき、すぐに修正できる。小売店の業務運営と一緒である。
●安倍総理による国防改革の取り組みはあるが、日本国内に「後方地域」からの急な変化を求めるのは極めて困難である。「back office」概念はより段階的な変革として受け入れやすいだろう

seoul.jpg●周辺国、特に韓国は、日本の朝鮮半島への海外派兵を示唆するような改革に難色を示すだろう。その点この「back office」アプローチは、日米同盟強化が韓国の利益であると理解されやすいし、日本が米国から離れて軍事力を強化する懸念を押さえることが出来る
●また、機能アプローチは能力に着目するので、ガイドライン検討を特定の脅威に焦点を当てすぎずに実施可能である。中国有事だけを目的に検討が行われているとの印象を与えず、中国に平和的な対話を求める事も妨げない

日米同盟での具体的なBack Office任務
●ISR (including the use of space), cyber-security, research and development, force protection and missile defense, consequence management, interdiction and maritime security, anti-submarine and electronic warfare, and more comprehensive logistical support
●上記は、現在の日本の支援活動に含まれるsearch and rescue, refugee assistance, rear-area supply and medical services等々に追加されるモノである
尖閣諸島での想定されているグレーゾーン紛争に関しては、日米の役割は逆転するだろう。つまり日本が「front office」機能を果たし、米国が「Back Office」で支援する。

その他の提言
Schoff-carnegie.jpg1997年ガイドラインで謳われた「2国間の調整メカニズム」を活性化すべきである。機能別の作業部会を文民と軍人が感化して構成し、シナリオを想定して議論すべきである
米側は多様な機関を巻き込むべきである。国防省、国務省、太平洋軍、在日米軍、在韓米軍、統合参謀本部、NSCや議会等である。そこでは次官補レベルの協議が重要である

●議論は本年12月だけを期限とすべきではなく、ガイドライン修正後も継続されるべきである。
●日米協議の状況は、協力国となり得る韓国や豪州に周知されるべきである。また必要な部分は中国やロシアにも知らせるべきである
●以上の提言はあるが、日本の役割変化は日本が判断することであり、米国単独でも任務が遂行できる体制は維持しておくべきである。日本の貢献を完全に当てにしてはいけない
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どの程度の影響力がある提言か承知していませんが、ガイドライン改定を巡る基礎的なお勉強として紹介しました。
日本では当面、集団的自衛権や武器輸出3原則の件が話題になるのでしょうが、より重要なガイドラインについて全く聞こえてきませんので取り上げた次第です

ET2.jpg分かるようでよくわからない、なんとも雲をつかむような話で、想像力をたくましくするしかないのですが、何かスッキリしません・・・。ところで「Back Office」は日本語でどう表現できるでしょうか? 「裏方」、「後方」、「支援」???。

Schoff氏が日本に期待する個々の役割を「シナリオ」で想像すると、「front-office」任務と同じ活動エリアで、同様のリスクを背負いながら「Back Office」任務を担当することになります。
何となく、うまく米国に丸め込まれているような気がしてなりません

中国や韓国などへの配慮を理由に、「軍事面で日本が米国からより自立」することを避ける提案だとアピールしている点が気になります。日本人としては複雑です。
「Back Office」機能を果たすだけでも大変なことは理解できても、見たくない現実を見せられたようで・・・

でも何よりも、どのような戦いを想定するのか? 中国の各種ミサイル攻撃やサイバー攻撃に脆弱な日米軍に、どのような戦いを求めているのかが気になります。
米軍が脅威の変化を受け止めていないなら、正に「心中」になりかねません・・・ 

日米「2+2」共同発表
http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-10-04

カーネギー財団が日本語版を発表
http://carnegieendowment.org/files/upgrade_us_j_def_coop_Japanese.pdf
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