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戦闘機命派の主張を嘆く [安全保障全般]

DF-21D.jpg戦闘機命派である航空自衛隊OBが、国家安全保障戦略、新防衛大綱、新中期防衛力整備計画を「安保3本の矢」と名付けつつ、その実態に疑問を投げかけています。
このOBは、F-35の国内組み立てを担う重工メーカーの顧問で、戦闘機中心の防衛力整備とそれを支える戦闘機パイロットの利益代表たる人物です。

空自OB(現役を含め)には対外的な発言が可能な人材が皆無ですが、唯一の例外的人物で、これまでも議論に活用させていただきました。
同OBが防衛省自衛隊によるデタラメな防衛力整備計画を棚に上げ、財務省や政府の姿勢を批判する小論を発信しましたので、これを「肴」に「愚痴らせて」頂きます

とりあえず、同空自OBの指摘を確認
ASEANPlus.jpg●今回の新大綱は、従来の基礎的防衛力の考え方を完全に脱し、想定事態下での「能力評価」を実施して最低限必要な防衛力を割り出したのだから、速やかにこの防衛力を構築すべき。
●しかし筆者の経験から言えば、新中期防の実現可能性は低い。新中期防の予算総額1.8%増(年割)の24兆6700億円が妥当性のある予算額に見えるが、これにはカラクリがあるのだ
●よく見れば新中期防の最後に「調達改革等を通じて防衛力整備の合理化効率化に努め、約7000億円の財源の確保を図る」との一文があり、実質的には前中期防比で5800億円増の0.8%増(年割)にしか過ぎない

●まず、5年間に5800億円増だけで、消費税アップ分や円安差損といったマイナス要因も全部これで飲み込み、新中期計画が掲げる55機の航空機の調達数増、2隻の護衛艦建造数増、76両の車両調達増は無理である
●また、5年間で7000億円の合理化も途方もない数字である。中期初年度の26年度予算で、防衛省は660億円の効率化合理化を図っているが、27年度以降の4年間で毎年約1600億円の合理化(26年度の3倍近い)をしなければ、新中期防は達成できない。これはまず不可能
●更に、26年度防衛予算は前年度比2.8%増と報道されているが、人件費増を除くと前年度比0.8%増に過ぎず、消費税3%増と円安差損を加味すると実質マイナスの予算である。

BMrange.jpg●予算と共に「人」の問題も深刻である。「安保3本の矢」では装備は増強され、艦艇数、部隊数が増加する計画だが、奇妙なことに「人」を増強する計画は入っていない。まるで手品を見ているようだ
●防衛と財務の折衝の結果、従来も表面を取り繕うことが多かった。つまり装備調達は防衛省要求に近い格好にするが、5年間の総額では財務省は絶対譲らないで双方が妥協する。そして中期防の5年間が終わってみると、防衛大綱が示す防衛力には到達せず、まやかしの中期防が明らかになる

●組織横断的な安全保障政策のためにNSCを作ったはずである。実現可能性のない計画を取り繕って、見かけ上の整合性を保つようではいけない。「3本の矢」の「空文化」「画餅化」を政治主導で回避しなければならないNSCの真価が問われている。
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まず空自OBが指摘する新大綱と新中期計画の実態
●「軍事力強化」と報道される防衛予算の実態が、実質マイナスであること
●装備品の増加に付随するはずの「増員」が無い、支離滅裂な計画であること
●よって、防衛大綱や中期防は達成不可能が明白な妥協の産物であること

次にまんぐーすが「愚痴」したいこと
China-UAV.jpg●同OBは国防費優遇を国策として求める「ありがちな方向」で議論を終えているが、日本の財政状況や少子高齢化を考慮すれば実行可能性は無いに等しく、内輪受け狙いの無責任な議論である
財務省にも優秀で真っ当な愛国者は多く、手前味噌だが本ブログの愛読者も多く、陸自やF-35や各種組織防衛の問題をかなり的確に把握しており、現状の防衛省の装備品や防衛費増額要求がデタラメのその場凌ぎであることをよく承知している。

最大の問題は、大綱や中期計画が「達成不可能が明白な妥協の産物」であることを知りながら、空自で言えば「亡国のF-35」導入だけで予算が底をつくことを計画段階で十分に承知しながら、戦闘機以外にも力点を置くかのように「国民」や「隊員」を欺く空自戦闘機命派の存在である
自衛隊OBの使命は、今米国で起こっている国防費の構造改革問題や日本の財政状況を踏まえ、かつ世界の戦略&軍事情勢を冷徹に捕らえ、防衛省・自衛隊内で行うべき「スクラップ&ビルド案」を大胆に軍種横断的に提言することであり、このような偏狭な利益誘導論を発信することではない

更にグチ愚痴言えば
Waterdrop.jpg●新防衛大綱や中期計画の議論の過程で、「能力評価で最低限必要な防衛力を割り出した」と戦闘機命派OBは結論づけているが、恐らく結論ありきの作り話である。本当にウォーゲームでもやれば結果は明らかなはず。同OBは現役時代、戦闘機機数の要求根拠が如何にいい加減かを語っていたとの話もある
●そうです。津波被害にあったF-2戦闘機(1機120億円)18機に対し140億円もかけて修理可能かどうか検査し、その内6機を1機130億の修理費を投入して修理させることに成功した某重工メーカーMの顧問がこのOBです。
全ては根拠無き「戦闘機数と戦闘機飛行隊数」の「教義」を守る、戦闘機命派の「パブロフの犬」反応から生まれたものです

自由に発言できるOBで有りながら、海空自衛隊強化の必要性にのみ触れ、陸上自衛隊には一切言及しない姿勢で「陸自の増員」や「海兵隊化」に暗黙の抗議を行う「軟弱な」姿勢に甘んじている。陸自の定員削減に踏み込めば、財務省との妥協点が見えることを十分承知していながら・・・。


このOBの記事タイトルは「日本初安保戦略の牙をこっそり抜いた財務省」ですが、まんぐーす的には「日本初安保戦略の付け焼き刃を抜いてくれた財務省」ぐらいでもOKかと思います

同空自OB関連の記事
「戦闘機命派の包囲網強化」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-17
「F-Xはステルスに拘るな」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-16

「戦闘機の呪縛から離脱」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2013-04-16
「脅威の変化を語ろう!」→http://crusade.blog.so-net.ne.jp/2012-10-08
「戦闘機修理に1機130億円」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-07-12-1

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