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書籍「失敗の本質」の視点で「今」を見る [ふと考えること]

sippai.jpg1984年に出版された書籍「失敗の本質」は、ノモンハン事件、ミッドウェー作戦、ガダルカナル作戦、インパール作戦、レイテ沖海戦、沖縄戦と第二次世界大戦前後の日本の主要な失敗策を通じ、日本軍の失敗の原因を追究する手法に、歴史研究と組織論の視点を組み合わせた学際的研究書です。

大前提として「大東亜戦争は客観的に見て、最初から勝てない戦争」だったとしつつも、それでも個々の作戦ではもっと良い勝ち方、負け方があったのではないかとの疑問を著者等は持って分析に臨んでいます。
そして各作戦の失敗は、日本軍の組織特性によるのではないかとの「仮設」を証明する形で、戦争史に対し一部難解な組織論分析が行われます

防衛大学校に勤務する戦史研究者と野中郁次郎などの組織論研究者との共同研究によって生まれた本で、現在までに50万部以上を売り上げたこの種の書籍では異例のロングセラーです。
ただ、出版された当時から戦史個々の事例解釈や分析には様々な批判があり、出版後30年間の戦史研究で明らかになった多くの新事実を踏まえ、本書を批判的に見ることも可能ですし、そのような意見も耳にします

sippai3.jpgしかし一方で、初版出版から30年が経過する今も、2012年に野中氏が続編的な「失敗の本質 戦場のリーダーシップ編」を発表し、ビジネス書としての解説本が新たに出版されるなど、多くの人を引き付けているのも事実で

本書は、冒頭紹介の6つの事例研究を通して日本軍の組織的な敗北に迫るものですが、人気の背景には、細かな史実の描写や分析より、全体を俯瞰した分析に「あの頃と何も変化していない」との思いを現代の読者に強く抱かせる力が在るのだと思います

そこで新年にあたり、本書が描き出した「失敗の本質」を「今」を見る視点として活用し、まんぐーすが思う事を綴らせて頂きます。いつものように勝手に呟きますが、「おとそ気分」のほろ酔いの中で、相変わらずの新年TV番組に飽きた際の「箸休め」に、ご活用いただければ幸いです

まず、視点となる同書籍が指摘の「失敗の本質」とは

大きな結論
●日本軍は環境に過度に適応し、官僚的組織原理と属人ネットワークで行動し、学習棄却(知識を捨てての学び直し)による自己革新と軍事的合理性の追求が出来なかった

細部分析
sippai3.jpg作戦目的が曖昧で多義的があった。つまり、大本営の考え方と末端の組織の考え方に統一性無し。
●戦略志向は短期決戦型で、戦略策定の方法論は科学的合理主義というよりも独特の主観的微修正の繰り返しだった
●戦略オプションは狭くかつ統合性が欠如雰囲気で決定した作戦には柔軟性はなく、敵の出方等による修正無し

●本来合理的であるはずの官僚主義に人的ネットワークを基盤とする集団主義が混在人情を基本とした独自の官僚主義を昇華
システムよりも属人的統合が支配的であった。組織よりも、作戦の責任者たる人間の才能により成功・不成功が支配

sippai2.jpg●資源としての技術体系は一点豪華主義で全体のバランス欠如。列強は航空機攻撃を中心も、日本は戦艦での艦隊決戦を中心に
学習が、既存の枠組み内でのみ強化され、かつ固定的。そして業績評価は結果よりもプロセスや動機が重視
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「大結論」にまんぐーすが「今」思う事
●「環境への過度の適応」との言葉に思うのは、専守防衛や憲法9条の生み出す特異な環境にあまりにも特化し、その中で生き延びる思考パターンをDNAレベルにまで刻み込んでしまっていること
●特異な環境下で国防組織を存続させるため、「官僚的組織原理と属人ネットワーク」を駆使してきた結果、「特異な環境」だけに有効な「官僚機構と属人ネットワーク」を極めて強固なものにしてしまったこと

sippai10.jpg●強固な「官僚機構と属人ネットワーク」は、文民組織だけでなく、「特異な環境」で生き残りを強いられた軍人組織にも生まれ、そしてDNAレベルにまで浸透したこと
●「官僚機構と属人ネットワーク」は急激な環境の変化への対応や危機管理への対応を苦手とするが、正に今の日本は中国と米国と軍事技術拡散の3面からの急激な変化にさらされ、変化を求められていること

●軍人組織のDNAレベルにまで浸透した「特異な環境下で国防組織を存続させるため」の思考パターンは、学習棄却(知識を捨てての学び直し)による自己革新と軍事的合理性の追求をほぼ不可能にしていること
●その結果、「今」の日本の軍事組織には、以下のような顕著な「負の側面」が確認できる陸上自衛隊の「なりふり構わぬ国防無視の組織防衛」、海上自衛隊の「統合議論を徹底的に回避する組織風土」、航空自衛隊の「戦闘機数の維持だけが組織目的」といった組織風土である

続きはあした・・・良い初夢をご覧ください

陸上自衛隊を非難する!
「ブラックホール化する陸上自衛隊」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-23
「後半:失敗の本質から見る今」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-31-1
「中澤大佐が南西諸島で組織防衛」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-12-10

タグ:失敗の本質
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