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中国の対艦弾道ミサイルは脅威か? [中国要人・軍事]

DF-21D.jpg12月号の米空軍協会機関誌が「China’s Carrier Killer: Threat and Theatrics」との記事を掲載し、中国A2ADを語る際に必ず登場する「空母キラー」の異名を持つDF-21D対艦弾道ミサイル(ASBM)の脅威について、「Theatrics:はったりやポーズでないか」冷静に考えようとの意見を紹介しています

2010年頃は「米海軍の戦力投射能力を脅かすモノ」とか「米海軍はもはや西太平洋を支配しているとは言えない」等の専門家の発言もあったようですが、そのターゲティングの複雑さからすれば、対処の方法が無いわけではないとの見方が広がりつつあるようです

一方で、DF-21D評価の変化の背景には、様々な思惑が背景にあるような気もします
当初は脅威を強調して予算の獲得を狙っていたモノの、米国や米軍のアジア回帰への疑問が広がるにつれ、脅威を強調しすぎてはマイナスとの意向が米国防省内で働いたのかもしれません(あくまで邪推ですが)

まずDF-21Dの概要を
DF-21D 4.jpg●NATOコードネーム:CSS-5 Mod 4は中距離弾道ミサイルDF-21シリーズの一つで、この兵器の登場により高価な空母の有用性が議論される事が増えた
●2段式の固体燃料ミサイルで射程は1800~3000kmと推定されており、他のDF-21シリーズと異なり、大気圏内再突入に際して弾頭部のSARレーダーや光学センサーで目標を補足して自立的に目標に向かう能力を備えている

●中国の軍事文献には、第1波の攻撃で空母の航空運用機能を破砕し、第2波攻撃で空母を撃沈する構想が描かれている
中国のA2ADは、多様な弾道ミサイルで沖縄、日本本土、韓国、更にはグアムの航空戦力基盤を無効化する事が重要要素だが、DF-21Dは空母の戦力投射能力を無効化する兵器である

2010年頃の専門家の見方
2010年、CNASのPatrick Cronin氏は「中国のDF-21Dに代表される対艦攻撃能力は、冷戦後初めて我が海軍の戦力投射能力を阻止する能力として登場した兵器だ」と表現し、海軍大学のヨシハラ教授も米軍が攻撃可能な位置に到着する以前の段階で、中国は我が軍を攻撃可能になった」と述べた
●ゲーツ国防長官(当時)も2010年には「中国の弾道ミサイルを含む対艦能力が、米国の航空戦力や空母による戦力投射を脅かしている」と語っている

DF-21Dは運用可能状態なのか?
DF-21D 2.jpg●2010年のDF-21D配備が開始されたとの中国発情報を受け、当時の太平洋軍司令官もDF-21Dが初期運用能力IOCを獲得したと発言していた。現太平洋軍司令官も本春、議会で「初期配備の対艦弾道ミサイルは我が空母を狙っている」と証言している
●中国は、時速60km以上で航行可能な空母の位置特定に、まず中国は誤差が数十マイルあるOTHレーダーを用い、更に3基ある偵察衛星の情報も活用する。

●可能で有れば、潜水艦や水上哨戒機も位置特定に活用するだろうが、我の早期警戒機やF-18やイージス艦を回避するのは容易ではない
●これら目標発見から発射準備と発射には複雑な指揮統制が必要で、「キルチェーン」と呼ばれる一連の情報の流れは極めて脆弱だとの指摘もある

●一方で、DF-21Dの試験は明確に確認されておらず、ゴビ砂漠上の空母型地上図目標に2つのクレーターがあるのを撮影した写真が台湾報道機関から公表されたことはあるが、移動する目標では確認されていない
●CSBA研究員のJan van Tol元海軍大佐は「中国がまず移動目標で試験を行い、次に海上で移動目標試験を実施し、更に海面が荒れてレーダー探知が困難な状況下でも移動目標攻撃に成功したとの話は全く聞かない」と語り、「DF-21Dが初期運用力を獲得したとは考えにくい」と見ている

国防省の中国軍事に関する年次レポートも「中国が第一列島線を越えて目標情報を入手し、飛翔体にタイムリーに情報提供できるか明らかではない」と慎重な表現をしている
●2011年7月の中国参謀本部Chen Bingde大将の発言「DF-21Dは研究開発段階にあり、運用状態にはない」を引用しつつ、CSBAのBarry D. Watts研究員も「中国は海上移動目標に対する一連の試験をまだ実施していないと考えるのが穏当な見方」との見解を示している

DF-21Dへの対抗策
DF-21D 3.jpg●米軍幹部は中国の仮想敵とするような発言を避けており、特定装備への対処法を語ることはないが、DF-21Dを意識したような発言はエアシーバトルに関する発言から読み取ることが出来る。
●海空軍トップの連名論文(5月16日:Foreign Policy)では、必ずしも敵の領土奥深くを攻撃する必要はなく、まず敵の指揮統制や通信を「disrupt」する重要性を述べ、電子戦や敵ISRシステムの「disrupt」で発射されたミサイルを無効化できると記している。

海空軍トップが連名で発表した2つの論文概要
「2012年2月の論文」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-06-19
「2013年5月の論文」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-05-21

物理的にミサイルを破砕する事も念頭に置いている。2012年に海軍トップのグリーナート大将は、DF-21DをTHHADやSM-3で、またペルシャ湾での試験で巡航ミサイルを撃墜したレーザー兵器等で迎撃することを考えており、最後の手段として改良型のSeasparrowもあると語っている
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ASBM DF-21D2.jpgDF-21Dを海上の移動目標で試験すると成れば、渤海や東シナ海や南シナ海が試験場でしょうが、そのような話を聞いたことがありません

衛星破壊兵器の試験を突然行い、米国防長官の訪中初日にJ-20ステルス機の初飛行を成功させ、本格的なSLBMの試験を世界が注目する中で継続している中国ですから、DF-21Dだけ隠密に開発しているとは思えません。

勿論、この記事は公開情報を元に書かれたモノで、陰でこそこそ開発が進んでいる可能性はありますが・・・。
逆に、海空軍トップが語る「disrupt」や「destroy」や「defeat」もそれほど容易だとは思えません。完成すれば、それは恐ろしい兵器だと言うことでしょう。

「エアシーバトル公式文書の概要」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2013-06-07
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