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存亡の危機:国防省Net Assessment室 [米国防省高官]

Andrew Marshall2008.jpg15日付defense-Newsが、「知る人ぞ知る」国防省Net Assessment室(ONA:Office of Net Assessment)が予算削減から存亡の危機にあると報じており、各界からの懸念の声を紹介しています

国防省や統合参謀本部等の主要司令部組織は、ヘーゲル長官の決断により今後5年間で約2割の人員削減を計画しており、その検討の一環だと思われますがエアシーバトルの採用をゲーツ国防長官(当時)に進言しする等、1973年の創設以来、米国の安全保障に関し提言を行ってきた小規模組織だけに注目を集めそうです

10名程度で構成されているONAが特別なのは、創設以来40年にわたり、ただ一人の人物が室長を継続して勤めている点からも明らかです。その人物は現在約93歳?のAndrew Marshall氏です。

最近では、CSISのエドワード・ルトワック氏に「自滅する中国」(邦訳:奥山真司)の執筆を進めた事で知られていまが、国防省のみならず内外から安全保障関係者がその意見を聞きに訪れるという「伝説」の人物です

15日付defense-News記事は・・・
Air Sea Battle.jpg●国防高官はまだ何も決まっていないと言いつつも、ONA組織再編等が検討対象になっていることを否定しなかった。
●上院軍事委員会の委員長である民主党のレビン議員は、ONA閉鎖の検討について問われると、顔色を変えて「No!」と答えた。「良いアイディアとは思わないしが、国防省の考えも聞かなければならない。決める前に相談に来るだろう」と述べた

●下院のシーパワー小委員会委員長のRandy Forbes議員は、11日付のヘーゲル国防長官への書簡で「Marshall氏が率いてきたONAの過去40年間にわたる極めて重要な貢献と長期戦略思考の中心と沿い手の役割を振り返るとき、その廃止の検討は大きな誤りである」と述べている
●また同議員は「ONAはその歩みの過程で、我が国の長期戦略に多大な貢献をした人材を、数多く鍛え訓練してきた。・・・私はヘーゲル長官に対し、米国の安全保障と国益のため、今後も継続的にONAに適切な資金提供を行うことを求める」と記している

●研究機関からも声が上がっている。レキシントン研究所のDan Goure氏は「規模が大きく、予算が膨大な組織ならいざ知らず、10人程度で予算も年間数億円の組織に手を付ける前に、やるべき事があるはずだ。廃止によって作戦機1機も救えないような経費しか捻出できない一方で、ONAの識見を失う方がよほどダメージが大きいはずだ」と批判的にコメントしている
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冒頭の写真は、2008年に「Presidential Citizens Medal」をAndrew Marshall氏が受賞した際の写真です。

ONAやAndrew Marshall氏の功績をもっと説明できればよいのですが、色んなところで、色んな方から、断片的に聞いたり読んだした覚えはあるのですが、キチンと説明できません。申し訳ありません

引き続き明るい話題がありません。デフォルトはどうなることやら・・・
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読者の方からONAの重要性について教えていただきました!

●ONAですが、その効用はなんと行っても、実際にその部屋の中で行われている活動もさることながら、室長のアンディ・マーシャル御大に鍛えられた研究者が、国防政策のディベートで中核を占める戦略家として成長していく点にもあります。「戦略家養成所」としてのONAの目に見えない貢献は計り知れないものがあります。

Krepinevich3.jpg代表的なところでは、CSBA所長のアンドリュー・クレピノビッチ氏
Air-Sea Battleについて公の場で論じた論文を一番最初に出したのは、彼のところで研究員をしているJan Van Tol氏です。彼の指導のもと、このシンクタンクでは、次世代を担う戦略家たちが国防省を出たり入ったりしながら知見を磨いています。


あとはGordon Adams 氏
AdamsGordon.jpg国防予算はいつか減る、だから国防省はもっと予算の使い方に賢くならなければ!とイラク・アフガン戦争の真っ只中から言い続け、当時は「何言ってんだ」という目で見られていましたが、2011年以降、実際に予算が減り始めたことで、世論が彼に追いついた形です
●彼は大学でも教えているので、彼の授業を受けた学生が、どんどん、戦略家の卵となり、議会や議員事務所で予算の専門家となり、と巣立っています。

この二人は前者は保守的、後者はバリバリのリベラルですが、どちらもマーシャル御大に若かりしころ鍛えられています。お二人とも結構いいトシ(クレピノビッチ60歳台、アダムズ70歳代)ですが、どちらも、たまーにマーシャル御大と話すと、今でもダメだしをされているとか。
●・・・というわけで、ONAが持つ「戦略家養成所」としての価値はプライスレスです

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