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パネッタ長官の中国講演:なぜ米中軍事関係が重要 [パネッタ国防長官]

China12ACdemy.jpg19日、パネッタ長官が中国軍の工兵士官学校(Engineering Academy)で講演を行い、米中軍事関係の発展をなぜ望むのかを説明し、学生からの質問にも対応しています。

内容は従来ご紹介してきた米国の考え方ですのでポイントのみとし、最近米国内で台頭しているらしい「対中協議はほどほどに論」とゲーツ前長官の考え方を併せてご紹介し、「秋の夜長」に供したいと思います

パネッタ長官による講演の概要
●米中両国の協力が重要なのは、2大パワー、2大経済大国の協力関係が世界の安全保障や21世紀の繁栄にに必要不可欠だから
●数ヶ月前、私は米国の海軍士官学校卒業式でほぼ同様の内容を話した。それは、アジア太平洋地域の平和の鍵の一つは、米中の軍事関係の恒久的な基礎を築くことだという点である

「新海軍士官にア太平洋重視を」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-05-30

●安全保障関係者の間で最近しばしば両国関係に関し、協力と関与の代わりに懐疑と信頼感の欠如を耳にする。共通の利害関係や協力可能性のある国防分野ではなく、不同意の分野に光が当たる傾向がある
●アジア太平洋における米国防戦略は単純な現実に導かれている。21世紀の米国の安全保障と繁栄は、他地域よりもアジアの平和と繁栄に密接にリンクしているという現実である

China12ACdemy3.jpg明確な脅威がある。テロから天災、海洋安全保障から大量破壊兵器の拡散、海賊から麻薬取引等々である。そこで我々はアジアの他国との協力強化を図ろうとしている。
共同訓練や演習を増やし、新たな軍事関係を地域の国々と結ぼうとしている。また、新たな軍事プレゼンスの手法を編み出そうとし、能力や協力強化に効率的に投資し取り組もうとしている。

代表的な例がミサイル防衛である。なぜか? ここは明白にしておきたい。これは北朝鮮からの脅威だけを対象にしたモノである。米国が北朝鮮からの弾道ミサイルの脅威を懸念していることに何の秘密もない。我が同盟国、米本土、前方展開中の米軍兵士を守るためである

●我々の中国を含むアジア太平洋への関与は、基本的な原則に沿った強固なモノである。その原則とは、まず自由で開放的な商業行為、次に国家の権利や責任を重視して法の精神を重視する国際秩序維持、最後に紛争を武力や脅しではなく平和的に解決することである
●この関与のゴールは、健全で安定的で信頼感のある、継続的で透明性のある軍事関係を構築することである

質問:米中関係と軍事同盟たる米日関係の違いは?
China12ACdemy2.jpg●A 米国は世界の国と安全保障同盟を結んでいるNATO諸国とは同盟により義務を負い、イスラエルとの安保関係でも幾ばくかの義務を負っている。同様の事がアジア太平洋の国でもある。日本などがその例である
●A しかし同盟関係にあることは、同盟国の全ての行動を受け入れることを意味しないイスラエルとの関係が一例である。米国はイスラエルの安全保障に幾分かの義務を負っているが、イスラエルには明確にイランを攻撃する適切な時期ではないと伝えている。外交的努力でイランとの相違を解消する段階だと伝えている

●A 他国についても同様で、日本にもそうである日本の指導者にも明確に伝えてきた。我々は問題を平和的に解決する責務を負っていると。これが我々の立場である。領土問題に関し、どちらの立場も取らない。日本と中国が地域と両国にとってより良い安全保障環境を提供するため、相違を乗り越えるためともに協力することが重要である

13日付WSJ紙でAuslin米AEI日本部長は
Auskin-AEI2.jpg●米国は各レベルで米中対話を行って来たが、中国にとっては対話それ自体が目的で、内容の進展はないので、今後の政権は、重要な課題があり、その解決が必要な時だけ中国と対話すべきである。
●米国側は、首脳会談から年次戦略経済対話、軍人の相互訪問に至るまで各種対話を行って来た。しかし、双方の価値観も世界観も全く異なったままである。中国側は米国の言っていることを完全に理解しているが、それに同意する気は全く無い

無意味な対話を続けることは理想主義に過ぎない。中国にとって対話はそれ自体が目的であり、理解を深めるためのものではない。米国は対話による問題の解決ではなく、それを継続することだけに関心を集中させられている。   
次の米政権は、必要な時だけに中国と対話をすべきである 米国は単なるおしゃべりで誤魔化されないということを中国に分らせるべきである
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ゲーツ前長官は、長年CIAやNSCスタッフとして旧ソ連との交渉に当たっていた経験から、交渉が直接的な結果に繋がらなくても、対話や交渉の場を持つ事で相手の反応を確認出来たり、カウンターパート同士の関係から誤解や誤判断の防止に多少でも役立つ可能性がある、とその必要性を強調していました

gatesCGSC.jpg例えば、旧ソ連の対外交渉団が自国のICBM数や配備を良く承知しておらず、米国の資料でそれを知り話に乗ってきたこと、相手の反応が普通でないので背景となる事情に別ルートで探りを入れたこと等々の「副次的」な効用が無視できないと強調していました

民主主義国はそのような悠長な交渉を受け入れる度量が試されるわけですが、ゆったり構えることが出来れば、結果を期待せず偵察と思って対応できれば良いのですが・。米国にも日本にも、その余裕はないのでしょう・・。

「1月ゲーツ長官の中国訪問」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-09-1
「米中軍事交流の今後」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-23
「米中軍事交流再開へ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-10
「米中対決シャングリラ」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-10
「シャングリラ演説」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-05

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