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久々に中国国内情勢を [経済情勢]

RoundUpWorld.jpg9月7日放送(配信)の「伊藤洋一のRound Up World Now」が恒例の中国特集を行い、お馴染み富士通総研主席研究員の柯隆さんが登場しました。
伊藤洋一氏との対談形式で行われる恒例の中国特集ですが、4月以来久々の中国特集でもあり、経済情勢、経済政策、少子高齢化、政権移譲、尖閣問題等々、広範な話題を判り易く短節に伝えています。

ちなみに柯隆さんは1963年中国南京市生まれ。88年来日。94年名古屋大学大学院で経済学修士。長銀総合研究所入社。98年から富士通総研経済研究所で勤務。
財務省関税・外国為替等審議会委員などを歴任。中国問題御意見番で論文、著書多数。中国のCCTVにも毎週のように登場している方です。

中国の経済成長率
●最近の経済情勢から、今年の経済成長目標7.5%が難しいとの見方があるがむしろ逆。7,8月だけで地方政府が90兆円にも及ぶ公共事業投資を打ち、短期的には加熱を懸念。
●一方で銀行借り入れ資金が原始なので、オーバーヒート後の崩壊も懸念される。ただ今年は8%程度の成長率だろう

RoundUPITO.jpg欧州の通貨危機で中国の輸出不振を主張する人がいるが、必ずしもそうではない。経済不況で低価格製品に注目が集まり、結果的に安価な中国製品への需要が高まる効果もある
●中国景気減速の原因は、明らかに温家宝首相をはじめとする中央政府による過剰な引き締めである。これに地方政府が反発し、レイムダック化が進む温家宝を無視した公共事業投資が乱発されている

格差拡大の背景
●中国はパイの拡大には成功したが、その分配になんら有効な政策が打てていない。利益の労働分配率は、日本が6割に対し中国では4割国や企業が搾取しているのである
●所得額に応じた累進課税になってはいるが、相続税が無く、贈与税制度も機能していない。従って裕福な家計は子孫まで裕福であり続ける
●相続税や贈与税を有効にしたくても、各個人の資産調査が出来ない(機能しない)ので実行可能性が無い状態

少子高齢化の進展と対策
Child-One.jpg●中国は国際的な基準で2006年に高齢化社会の水準になり、2017年には人口減に転ずる模様。
●中国政府は「一人っ子政策」の撤廃を検討しているが、全国には「一人っ子政策」違反を取り締まり、罰金を徴収して財源にしている部署があり、この雇用が650万人に及ぶといわれている
●雇用だけでなく地方政府高官への「罰金」の還流も伝えられ、その変更にはこのような様々な抵抗が予想される

中国経済を将来牽引する業界は
●安価な製品群を輸出に当てているイメージが現状だが、国内的・内需対応では住宅関連産業は発展するだろう。住宅関連は裾野が広いが、鉄鋼、建材等々は確実に拡大する
輸出関連では半導体産業が期待できる。企業家精神が旺盛で、エリート育成に躊躇が無い社会なので、格差拡大の半面で突出した技術や人材が出る可能性を秘めている。

政権交代を巡る予想や変化
roundup2.jpg首相人事はまだ予断を許さない李克強が本命であることに変わりはないが、王岐山の可能性は決して排除されていない。6対4の確率であろう
●単純化すると胡錦濤は悲観主義者で過去10年は「失われた10年」とも表現できる。一方で習近平はロマンチストとも表現できる。ただし、長老2名(江沢民と胡錦濤)とその勢力への気遣いや、直面する課題を考えれば、習近平の色を出せる可能性は5割程度と考えられる

●政治改革は中国の中心的課題だが、現実的に進める第一歩は、党内の主要人事を何らかの公式な手法で行うことから始めることであろう
●現状では、江沢民も胡錦濤も習近平も、誰に選ばれたのか誰も説明できない。国や国民のために仕事をするモチベーションが自然に生まれない形を変えるべきである。

尖閣問題を考える
chinaecono.jpg尖閣問題で国家主席と首相が一度も発言していない。冷静に、この問題が容易に解決できない課題であることを理解しているからであり、韓国大統領の稚拙な行動とは対照的
中国国営TV(CCTV)も国民をあおるような報道は無く、淡々と事実と専門家的な論評を行うだけ。私(柯隆)は毎週のようにCCTVに出演するが、必ず言われるのは「尖閣問題に触れるな」である。

●ロンドン五輪報道でも、中国選手の活躍を過剰に伝えるのではなく、他国選手のトピック的な話題や文化面を広く紹介している
政府は国民の不満がデモに発展することを非常に懸念しており、その不満が対日問題より国内問題にあることをよく理解し、慎重に対応している
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中国が難しい舵取りを迫られていることが伺えます
伊藤洋一氏や柯隆さんをどのような人物と判断するかは、読まれる方にお任せします

政治と軍部の関係について同番組では取り上げていませんが、最近は欧米日の識者・研究者から防衛白書まで、「PLAは共産党の軍だから、完全な統制化にある」とは見ていないようです。共通する見方は・・・
ChinaGenChenBingde.jpg●衛星攻撃実験やJ-20初飛行等々の事例から、軍部が政府に相談無く、対外的影響の大きい行動に出ている
●軍への予算配分や装備品開発で、軍部の発言力が増していることは確かである
●一方で、中央軍事委員会や政治委員として、特定の政治勢力と結びついたり影響を与えたりといった段階には無い模様

過去の「Round Up World Now」中国特集
「中国経済と指導者交代」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2012-04-15
「中国を多様な視点で」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-12-31
「中国製にせ部品との戦い」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-10
「中国を見る視点:経済」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-11-06-1
「バイデン訪中と密約」→http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-09-12

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