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イスラエル空軍:変化と苦悩の最前線 [安全保障全般]

Israel Nehushtan.jpgイスラエル空軍は、米空軍と並んで脅威の変化や技術拡散の影響をもっとも受け、そしてその対応に苦悩している組織です。
2006年に始まったレバノンのヒズボラとの戦いは、まさに非対称戦。敵が旧式で安価なロケット弾をイスラエル市街地へ大量発射し、最先端の誇り高きイスラエル軍は陸軍と空軍が全力でこの阻止とヒヅボラ撲滅に当たります。

イスラエル空軍は、1968年の第3次中東戦争(6日戦争)で周辺アラブ諸国空軍をわずか6日間で完全破壊また1981年のイラク原子炉攻撃ではイラク軍に察知されることなく無誘導爆弾をほぼ完璧に原子炉に直撃させ完全に破壊に成功した輝かしい空軍でした。

しかし・・・神出鬼没なヒズボラは安価なロケット弾を大量に巧妙に隠し、撃っては逃げの戦術でイスラエル軍を翻弄・・・。イスラエルの陸軍と空軍の連携不足や旧来の空軍力を過信した結果、国民のイスラエル軍への信頼は大きく揺らぎました

そんな中、苦しみながら空軍建て直しに取り組み、残り任期が1年を切ったイスラエル空軍司令官ネフシュタン少将(Maj. Gen. Ido Nehushtan)へのインタビューが行われていますのでご紹介します。15日付「Defense News」が掲載したものです。

陸軍との連携強化、F-35選定を巡る国を二分した議論、空軍基地の脆弱性への見方等々を踏まえ、空軍パイロットとしての誇りを持ちつつ、組織を背負いながらも、時代の変化に少しでも対応しようとする組織のリーダーとして苦悩と、信頼感や安定感を感じます。

ネフシュタン空軍司令官は・・

Israel Nehushtan2.jpgQ:レバノン戦から5年。地上軍との連携は進んだか?
A1:反省を基に、08年から09年にかけてのガザ地区ロケット対処では陸軍と空軍は緊密に連携した。地上指揮官と共に過ごし、話し合い、彼らを航空機に搭乗させ、旅団指揮官に空アセットの指揮を任せたりもして効果を上げた。
A2:小規模な組織単位ではこのような連携が出来たが、より大規模な連携については今後の課題である。しかし道筋は見えている。

Q:今後地上戦が主体となるとの見積もりから、地上軍の近代化に投資すべきとの意見が参謀本部内で強いと聞くが。
A:必ずしもそうは思わない。地上戦は避けて通れない。しかし航空戦力は我々に大きな選択肢を与える。我々にとって、地上戦によって生ずる国民生活や経済への負担は、外交上の課題ともあわせ望ましいモノではない。
A:適切な情報に支えられた正確な航空攻撃により敵の消耗を図ることは、より効果的で決定的な地上戦への導入である。バターはナイフで切る前にオーブンで数分暖めるとよい

Q:エジプト正面も複雑なする中、資源配分をどうするか。空軍の優先事項は
A:海上や地上戦力への要望が多いことは承知している。しかし長い多方面に渡る議論の末、我々にはF-35が必要だとの結論に達した。もちろん高価であるし計画に遅れもある。しかし現時点では2016年末か2017年には導入可能である。
A:運用上のリスクが少ないことから空軍型のF-35Aをメインに考えているが、我が飛行場へのミサイルやロケットの脅威も勘案し、垂直離着陸型のF-35Bにも引き続き注視していく。

Q:長距離の精密誘導攻撃システムの方が、より費用対効果が良いのではないか
A:世論の議論に立ち入るつもりはない。特にこの微妙な問題に関しては。言えるのは、我々の滑走路は脅威下で運用しなければならないだろうが、滑走路を運用不能にするのはそう簡単ではなく、同時に我々は飛行場が機能停止に陥らないような準備を行っている点である。

Q:他に今後新たに購入や強化を考えているのは?
A:→■ Multilayered air and missile defense network
■ Advanced trainers、C-130J aircraft、Remanufactured Longbow AH-64D helicopters
■ Multimission UAVs
Precision weaponry
■ Improved intelligence

Q:新たな脅威に対しては
A:大規模なデモや海上を浮遊してくる危険物に対する対応を、陸海軍と連携を強化して考えている。
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Israel Nehushtan3.jpg敵のミサイル攻撃等による空軍基地への被害について、ある程度のシュミレーションや見積もりを基に、高価でリスクもあるF-35購入に踏み切った経緯が伺えます。
これだけの議論に基づいていれば、後生の歴史的判断にも供するでしょうが・・・・。

空軍司令官も基本的には「戦闘機命派」なのでしょうが、国内の様々な議論と正面から向き合って乗り越えてきたから今があるのでしょう
そうでない「戦闘機命派」は国賊ですね。1機100億円近い買い物を・・・・。

「イスラエルがF-35で苦悩」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-01
「前モサド長官イラン攻撃は馬鹿」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-12
「イスラエルのBMD:ARROW」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-02-23
「イスラエルのロケット弾対処」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-01-10

「空自OB FXはステルス無しでも」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-16
「なぜ空自にステルス機?」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-11-26-1

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