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政治家よ目をそらすな議論を [ゲーツ前国防長官]

これまでの分析では、政治家がこれまで避け続けてきた分野にも踏み込んで(予算削減を)行わなければならない結果になっている。

gatesAEI.jpg24日、ゲーツ長官は自ら依頼してシンクタンクAEI(American Enterprise Institute)で「DCでの最後の政策スピーチ」を行いました。このシンクタンクは共和党系のメジャーな組織で、基本的に軍事費削減はけしからんと主張をしている所です。

主題はもちろん4月13日にオバマ大統領が宣言した「安全保障関係予算を2025年までの間で約35兆円削減」への取り組みと影響についてです。公開されたスピーチ原稿はA4サイズに細かい字で5枚もあるので全部はご紹介できませんが、概要とランダムにエピソードをご紹介します。 
国防省改革へのゲーツ長官の取り組みを自ら整理して語っているところが、資料として貴重でもあります。

あらすじは・・・
●国防費が原因ではないと考えるが、米国は財政上の危機に直面している。私は着任以来、2つの戦いを勝ち抜くために、国防省の業務要領や装備品取得の優先順位を改めるように取り組んできた。また研究開発や単価の高騰、組織の無駄、人員や高官の無駄等々にも政府機関の一員として取り組んできた。
●同時に、世界情勢を考慮した上でこれだけは削減できないもモノのみを選択して残したつもりである。

gatesAEI2.jpgしかし今回の大統領要求は、これらの延長では対処できない。これまでの国防省内の検討では、人件費つまり、補償費、年金、定年制度、退職者の医療費等々、過去政治家が判断を避けてきた分野にも踏み込まざるを得ないとの方向性が明らかになってきている。

●このほかにもまず、4軍の兵力構成をどうするのかも重要な課題である。1970年代や90年代に行ったような、政治的にありがちな全領域での一律予算カットが破滅的な結果をもたらすことは、過去の結果から明らかである。訓練や装備が不十分なまま、組織だけが残っている最悪の状態を生み出す。
●冷戦後継続してきた2つの大規模地域紛争を戦いうる戦力との前提を、情勢見積もりを操作して換えることはたやすいが、全ては敵が決めることであることに留意すべきである。

●この規模の予算削減を行うならば、オプションとそれぞれに付随する影響を提示するので、正面からきちんと議論しなければならない議論のための議論や臆病風に吹かれて議論を避けてはいけない。私はこの世界のリーダーシップを我が国が取るべきとの信念を変えるべきとは思わない。それが全ての同盟国やパートナーや他国の利益であり、なんと言っても最大の利益享受者が米国民だからである。
国民が10年に及ぶ戦争に飽き飽きしていることは理解できるが、米軍のパワーとその到達力を維持することが米国の平和を維持し侵略を防ぐ抑止力であることに変わりはない。

ランダムに細部を拾っていくと・
●レーガン大統領時代の1980年代に大量に調達した装備が依然として主力であることは確かである。幾つかは手をかけて延命措置をするが、他を全て新装備に更新しなければならない理由はない。大部分は世界的に見てまだまだ優位を保っており、制空戦闘機のような例を除けば、多額の経費をかけて改修等する必要はない。

将来も必要性が高いモノとしては、制空能力、空中輸送力、長距離攻撃力、核抑止、海洋アクセス、サイバーと宇宙戦争への備えである。
●具体的には例えば、次期空中給油機、制空攻撃戦闘機、減少を続ける艦船数を補う船、10年の戦いで疲弊した陸軍や海兵隊の装備、戦略ミサイル原潜などがある。ミサイル原潜は6000億円を1700億円削減したが、まだ4300億円もする。過去には20億円の野戦砲、400億円のヘリや1800億円の爆撃機などもあったが

gatesReagan.jpg●削減したモノの中には、25兆円もかけて延々と開発中で有りながら、前線兵士が被害に遭っている仕掛け爆弾対処に向いていない、平らな底面で薄い装甲の車両も含まれていた。また大型のB747に弾道ミサイル発射段階での迎撃を意図したレーザーを搭載し、敵の防空脅威下でのんびり在空しているような運用コンセプトのモノを大量に導入しようしていた。(写真左はレーガン大統領を偲ぶ会で)

●昨年8月から効率性追求のためJFCOMも閉鎖を検討した。その過程で国防省内の組織は「いくら予算を使い、いくら人を使っているのか」との質問に満足な回答を得ることが出来ないことが分かってきた。JFCOMのケースでは、最初は200億円ほどだったが、わずか4ヶ月間の間に400億円にまでなった。複雑に他組織の予算や人を誰も把握しないままに組み合わせて使っている結果がこのような状態を招いている。
この種の経費には年間5兆円以上が使用されているが、昨年からの見直しでも2%以下の経費節減しかなしえていない。国防省全体で、少しはこの種の見直しを行う機運が出てきたが、まだまだ必要性が曖昧な過剰な司令部、高官ポスト、関連機関、部外契約者等々が存在している。

経費縮減関連
「更なる予算削減に備えて」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-04-23
「オバマ35兆円削減宣言」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-05
「4段階で経費削減に臨む」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-05-20

「14兆円精査案で政府議会と」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2011-01-07
「兵士と将来に9兆円捻出」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-29
「ゲーツの取得開発改革指針」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-09-15-1
「ゲーツ改革のまとめ」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-17

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