前モサド長官:イラン攻撃は馬鹿げている [安全保障全般]

5月10日付ワシントン・タイムズ紙が「モサド前長官:イラン空爆は馬鹿げた考え。核の脅威を統御する最善の方策は破壊戦術」との見出しのの記事を掲載したようです。
なお、メイル・ダガン前モサド長官(モサドはイスラエルの対外情報機関)は1月に8年間勤めたモサド長官を辞任したばかりですが、最近行われたヘブライ大学でのシンポジウムでかなり「奔放に」発言されたようです。
ダガン前長官の発言
●イラン核施設空爆は馬鹿げた考えである。イランを攻撃する者は地域戦争を始めかねないことを理解しなければならない。イランやヒズボラからミサイル発射がなされる。我々は戦争がどう始まるかは知っているが、どう終わるかは分からない。イランは何カ月も1日2-3発のミサイルをイスラエルに発射する能力をもっている。

●戦争は多くの代替手段の一つの選択肢にすぎないことを思い出すのが重要である。外国勢力がイランに工作したとメディアで報じられていることは効果を発揮している。(注:イラン科学者の暗殺やイラン核施設のコンピュータへのSTUXNETというウイルス感染、イランへの欠陥ある装備のフロント・カンパニーを使った売却などがこれまで報じられてきた)また、イランは諸勢力間の終わりのない権力闘争で分裂している。
●「アラブの春」は「変化の津波」ではなく、単なる指導部の交代であり、エジプトでは同じエリートが引き続き統治している。貧しいアラブ人はコンピュータを持っていないので、デモはインターネットの効果ではなく、ムバラク夫人スーザンが息子のガマールを後継者にしようと固執して反発されたのが主要原因である。
●エジプトの対イスラエル政策はあまり変化しないであろう。エジプトのエリートは、対イスラエル関係の悪化がカイロの経済的・政治的利益を損なうことをよく知っている。
●シリヤについて、アサッド退陣はイスラエルにとり良いが、アサッドは生き残るのではないか、勝つか死ぬかのいずれかであることを彼らは知っている。
茂田氏(元イスラエル大使、国際情報局長)の見方

●イランを攻撃し、戦争になった場合の危険を大きなものと評価する一方で、破壊活動が効果をあげていると考えている。秘密工作で当面は対処するということであろう。
●「アラブの春」への評価については、変化の津波というより指導部交代としている。未だ事態は流動的であり、変化の津波になる可能性も十分にあるし、指導部交代にとどまる可能性もある。エジプトでの選挙の結果やリビヤ、シリヤ、イエーメンの今後はまだはっきりしない。
●バーレーンは、3月14日にサウジ軍を主体とする湾岸諸国軍がバーレーン入りした後、反政府派の弾圧に乗り出して反政府派を逮捕し、起訴している。
●起訴事由は「外国のために働いているテロ組織」との連携であるが、政府は反政府派はイランの手先ということで強硬に弾圧している。米も第5艦隊の基地があり、バーレーン政府批判を控えている。
●そういうなかで湾岸は政府への不満を潜在化しつつも一時的には安定化の方向にある。
●私がイスラエル大使の頃ダガンは内閣のテロ担当をしていたので、会ったことがあるが、情勢分析能力の高い人との印象がある。(以上茂田氏の記事)
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しかしそうは言ってもモサドはやっぱりモサド。その長官をシリア、ヒズボラ、ハマス、イラン等々が暗躍するイスラエルで8年間も努めてきた御仁の発言ですから重みが違います。

しかしそれでもなお・・・引退後も母国のためにディスインフォメーションやってるかもしれないし・・との疑念も消えませんが・・・
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茂田宏氏の立派なお仕事
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2011-07-27 05:00
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