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2/2対中国で北東から南東アジアへシフト [Air-Sea Battle Concept]

ASEANPlus.jpg1月号の「AirForce Magazine」が「Pacific Push(太平洋での攻勢)」と題した記事を掲載しています。
Richard HalloranというNY Times紙でアジア全体や軍事問題を扱っていた人物による記事で、対中国を巡る米国戦略で南シナ海が鍵となりつつあり、その対応のためにグアム諸島の強化や東南アジア諸国との連携強化が進んでいる様子を紹介し、反面日本との関係が停滞・退化している状況を伝えています。

後半の本日は、「グアムでの活動活発化と抗たん性強化」と「東南アジア諸国の巻き込みと日本の停滞」についてご紹介します。

★グアムでの活動活発化と抗たん性強化

●中国から1800nmのグアム島は、中国弾道ミサイルの射程内にあり、北朝鮮からの脅威下にもある。しかし、米軍幹部は「(中国に対する)我々はここにあり、ここに存在し続ける、とのメッセージだ」と説明した。

グアム島関連の強化策を列挙すると・・・
GuamRQ4-2.jpg--RQ-4グローバル・ホーク3機の配備。3機で24時間の連続偵察活動が可能で、ソウルからシンガポールまでをカバー可能。カーライル前13空軍司令官「監視されていると知ると、相手のお行儀が良くなる」
--空母機動部隊の修理・停泊施設の設置。ハワイに寄港する時間を節約し、(中国からの攻撃に脆弱な)日本やシンガポールへの依存を低減する。
--600名規模のBMD部隊の配置
--B-52やB-2爆撃機がCBP(継続的爆撃機プレゼンス)を行っている。またF-15やF-22が定期的に展開している。空母ジョージワシントンも。

--グアム島の北約100nmにあるテニアン島に海兵隊の訓練施設設置。空軍が代替飛行場としての活用調査
--グアム島施設の抗たん性強化(滑走路、格納庫、弾薬庫、通信施設、燃料施設 ※ただし公式には最大規模の台風とマグニチュード7の地震に耐える施設の準備)

--訓練の強化。東南アジア諸国とのValiant Shield演習(F-15,F-22,B-52,P-3C,FA-18,E-3,KC-135等計106機がグアムから参加)等々・・ハワイのヒッカム基地に所在の613th Air and Space Operations Centerが中心となって実施。 → その教訓はレポートとなり、ワシントンでのAir-Sea Battle計画取りまとめに活用される。

「対中国の空軍司令官交代」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-18
「太平洋軍のAir-Sea Battle検討」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-08-05
「グアムのB-52が存在感」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-09

★東南アジア諸国の巻き込みと日本の停滞

インドネシアとの関係強化
世界最大のイスラム教と人口と海上交通路に面する国家でありながら、東チモールでの人権問題等で米国は関係強化を控えていた。しかし昨年、米国防省が議会や政府を説得し、慎重に軍事関係構築に踏み出した
対テロ演習のモニターやスタッフの議論からスタートしている。
「インドネシアと関係強化」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-23
「マレーシアと関係強化」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-11-10

ベトナムとの急速な関係改善
GuamViet2.jpg36年前まで約10年間に渡って血なまぐさい戦いを敵同士として行っていた両国が、ここ15年、対中国の旗の下にドラマチックに関係を改善させてきた。
クリントン国務長官は昨年2回ベトナムを訪れ、ゲーツ長官は史上3人目のベトナム訪問国防長官となって以降、対話を加速させている。
またシンボリックなイベントとして、ベトナム難民だった男性が米海軍士官学校を卒業し、米イージス艦の艦長としてベトナムを訪問している。海上警備や救助訓練を実施した。
「元難民が故郷に錦」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-11-18-1
「ASEAN Plusに参加」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-11

日本との関係
日本の政治情勢は混乱している。米国大統領が3人しか替わっていない17年間に、日本の首相には12人がついており、何ら変化を生み出していない

日本の外交官は「日本は置き去りにされている(has been marginalized)」と述べている。知日・親日の米国人専門家も「日本は日本自身の最悪の敵となっている」と述べ、「米国の共和党も民主党も日本をby-passしたくないのに、そうせざるを得ない状況にある」と嘆いている。
東南アジア諸国と対称的に、日本と韓国は、これまでのように米国の広範なアジア戦略の中で「リンチピン」や「コーナーストーン」とは見なされていない

せめてもの明るい話は、米軍と自衛隊のカウンターパートが仲良くやっており、35600人の米兵が日本にいることだ。しかし横田基地の米軍幹部は、日本との関係について多くを語りたがらない。

韓国とは・・
自国の国防力を強化して米軍の役割を自ら担おうとしてきた韓国は、政権交代を機に最近態度を変化させ、戦時作戦統制権の移管を2015年まで延ばしてほしいとオバマ大統領に懇願し、米国の編力削減を28500人を下限とするよう要請してきた。(2000年には36000だったのが、2008年には25000人にまで減少していた)
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gates3NT.jpgこの記事だけでは全体像がはっきりしませんが、Air-Sea Battle Conceptに基づく諸施策は出来るところから開始されています。どこまで進められるかは資金次第でしょうが、投資の優先順位はこのconceptを基礎に取捨選択するのでしょう・・
財政が厳しい米国は、まっとうな地域情勢分析に基づき日本には応分の負担を求め、戦略の変更に共に取り組もうと働きかけています。

その場しのぎの表面だけ繕った「新防衛大綱」を作ってしまった日本・・・これからどうすることやら・・・

新防衛大綱とAir-Sea Battlehttp://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-12-19

Air-Sea Battle関連記事
「CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
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「5CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-21-1
「6CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-24
「最後CSBA中国対処構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-30
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米国防政策と最近の日本
「QDRから日本は何を読む」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
「2QDRから日本は何を読む」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-01-1

長距離攻撃(LRS)システム構想
「序論:長距離攻撃システム構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-25
「本論1:長距離攻撃システム構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26
「本論2:長距離攻撃システム構想」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-10-26-1

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