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イスラエルがF-35で苦悩(パワープロジェクション時代の先へ) [亡国のF-35]

IDF-F-16.jpg29日付 Aviation Week電子版は、イスラエル国内での高価なF-35導入に関する国論を2分する議論を紹介しています。
イスラエルの置かれている国際環境は日本のそれとは異なる部分も多いのですが、国防を熱く議論する点ではかないません。
またその議論は本質を突いており、副題として掲げたように、考えさせられる点も多いのでご紹介します。(写真はイスラエルの最新F-16 イスラエルが独自に大幅な改良を加え、兵器システムや航続距離が大幅に改良されている)

議論の対立は、F-35の第一弾契約を19機約2500億円で予定通り進めるべきか、それともF-35を止め、既存のF-16やF-15に最新の長距離・高速・ステルス兵器や最新のセンサーを積んで経費を抑え、ISR能力強化や精密長距離ステルス誘導ミサイル等に投資すべきか、にあります。

同様の議論は、攻撃型ヘリや情報収集用航空機でも行われており、退役軍人が政財界で主要な位置を占めるイスラエルならではの産軍学が入り乱れた様相を呈しているようです。しかしこの議論は、イスラエルのみならず軍事力の将来に関する多くの示唆を含んでいます。

まずは、F-35をめぐるイスラエルの議論から

●ハルーツ元軍参謀総長(Dan Halutz 空軍人で初めての3軍のトップ) 
Halutz.jpg装備の高額化で多数の装備保有が難しい時代には、質の高いものを持つ必要がある。F-35ほどの能力があれば、既存の戦力との組み合わせで多様な状況に対応できる。  
ただし、従来の4機編成を基本とする考え方を改め、単機や2機での運用を考える等、伝統や慣習の改革を行わないと、高価な装備品はこれまでの考え方では運用できない。
ただ、F-35のステルス性や巡航飛行能力は他に変えられない。F-35は4世代機1機以上に置き換えられるが、分析によればそれほど全体の機数を現在数から減らせるわけではない

●イーランド元国家安全保障会議議長(Giora Eiland 軍情報部長等歴任)  
Eiland.jpg他にも投資すべき分野が多数ある。我々のF-16やF-15は最新のタイプで、これに更にシステム改良を加えれば十分であり、多くを節約できる。  
その資金を、極めて精密な攻撃が可能な地上発射ミサイルや空中発射スタンドオフ兵器に使用することが出来る。 航空機だけに資金を投入などできない。(以上がAviation Week記事)
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Jim Thomas CSBA.jpgAviation Weekの記事にコメントする軍事サイト「Defense Tech」は、CSBAのJim Thomas(元国防次官補)の主張を「前振り」で紹介しています。

つまり・・・
目標特定とISRネットワーク力を備えた防御側が、安価で容易に使用可能なステルス性のある長距離精密誘導兵器を使用するようになれば、「戦場は防御側に有利になる」との主張です。名付けて「post-power projection era(パワープロジェクション時代を越えて)」とThomas氏が主張する時代への突入です。

パワープロジェクション用の高価な装備を追求しても、安価で高性能なミサイル等を多用することで防御側に有利な時代にはいるのでは・・・、との疑問です。
「Defense Tech」は、経済情勢が厳しい中、この議論は陸海空全ての分野で行われるだろう、と指摘しています。
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smallおにぎりマングース.jpgHolylandの理解としては、防御・攻撃に分けて有利不利を議論するのではなく、軍事力を測る物差しが戦闘機や爆撃機や空母や戦闘艦艇だけではなくなってきた・・・てな具合でしょうか。
また、非対称とかISRとかネットワークと言われる分野や誘導兵器、弾道ミサイルだけでも強烈なかなりのインパクトを持つようになってきた・・・との整理でしょうか。

「専守防衛」の看板を下ろすだけで、かなり選択肢が広がるような気がします。しかも費用対効果にも優れた選択肢が・・・
(関連記事)
「空自OB FXはステルス無しでも」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-07-16
「米空軍の戦闘機削減が本格化」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-28-1
「米空軍OBが断末魔の叫び」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-05-1
「なぜ空自にステルス機?」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-11-26-1
「嘉手納から有事早々撤退?」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13
「州空軍の戦闘機がピンチ」

CSBAと「Joint Air-Sea Battle Concept」の関連記事一覧はこちら
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f351.jpg(追伸 10月9日)
10月7日、ニューヨークで会見を行った駐米イスラエル大使は、イスラエルと米国が20機のF-35を約2200億円で購入する契約を結んだ、と発表しました。
契約では、F-35は2015-17年の間にイスラエルに提供される予定になっている模様です。
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