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中西輝政氏に助言する [Air-Sea Battle Concept]

nakanishi2.jpg月刊誌「VOICE」の8月号が「民主党が論じない東アジア暴発危機」と題し、中西輝政京大教授や石破元防衛大臣などの論文を掲げ、脳天気な国民やマスコミの状況を憂えています。

中西教授は「人民解放軍が米軍を駆逐する日」のなかで、朝鮮半島情勢が緊迫する中で「トキの卵がカラスに食われた」話がNHK夜のニュースのトップで在る様子を嘆き、米国や米軍の動向を踏まえつつ、日本が真の自主防衛の覚悟を持つことの必要性を訴えています。

そして具体的には、防衛費の増強、専守防衛の見直し、集団的自衛権の行使、憲法改正などをあげ、その為には現在は少数派になっている保守勢力が「新・保守合同」を達成して国家の危機に立ち向かう他にない、と呼びかけています。
Holylandはこの全体の主張にいちいち物申しあげるつもりはありません・・・

ただ米国防省を評価する以下の見方には不同意です

VOICE8.jpg6月12日付日経新聞によると、「ゲーツ国防長官は、今後5年で約1兆ドルの国防費の削減を表明、F-22の生産を中止は発表済み、空母11隻体制の見直しやC-17輸送機の調達撤回の方針も示すと見られる」とまで書いている。
もし本当ならばこれは(中国の大軍拡を考えれば)非常に危うい、日米同盟の未来を危機にさらすニュースである。
中国が2015年前後に日本周辺だけで5隻の空母の艦隊編成を考えているのに対して、明らかに東アジアにおける米中の軍事バランスは決定的に変化し、その傾向に歯止めが利かなくなってしまう。

nakanishi.jpg米国は日本にF-22に売らないことを決め、187機で生産をうち切ったが、これは多くの日米同盟専門家が指摘するように致命的な誤りだった。
●2015年を越える頃には、東経140度より西では米軍は制空権をとれない。皮肉な言い方をすれば普天間問題も一挙に解決、黙っていても米軍はグアムに引き上げるからだ。(以上、中西教授の主張)
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要するに、中西教授は「東京の郊外より」をお読みになってないので、ゲーツ国防長官が進めようとしている改革の方向性全体を正しく理解されていません

つまり対中国の軍事問題を、旧来の思考(ゲーツ長官が治療不可能な「次の戦争狂」と見なす軍人と同じ)で見ているために判断を誤っています
空母対空母、戦闘機対戦闘機が主流だった戦いの物差しで、中国の真の脅威や米国の動きを評価していることから、誤った見方を導いてしまっていると思います。

中西教授は以下を読むべし
 → CSBAと「Joint Air-Sea Battle Concept」の関連記事一覧はこちら

更に・・・
(ゲーツ長官かぶれ)Holylandの助言
gatesMarine.jpgゲーツ長官による各種の見直しは、世界情勢や経済情勢、更には脅威の変化を見据えた、極めて合理的かつ軍事的妥当性に基づくもの
●真に中国に対応しようとすれば、高性能のミサイル一発で無力化しかねない空母は壮大な無駄になる可能性有り、ニッチな能力しかない足の短い戦闘機は運用基盤基地が限定された西太平洋地域では有効性が低い。
C-17は、各種シュミレーションや見積もりに基づき、これ以上不要との判断を米空軍が数年前から下しているのに、軍需産業や工場地元対策のため議員が要求しているだけのもの。

●中国が空母をまともに運用できると考えているのはセンセーショナルなマスコミや防衛力整備に活用したい関係者。中国専門家(茅原氏)や軍事専門家(織田元空将)等は、過剰評価を戒めている。

●中国に対応するため、米国はAir-Sea Battleコンセプトを作成し、それにあった装備体系を模索し、無人ステルス爆撃機や長距離ミサイルやPGSや衛星の代替手段を考えている。そしてその実現のため空母や戦闘機のスクラップ・アンド・ビルドが必要なのである
●その原型と考えられるシンクタンクCSBAのレポートは、中国の軍事論文や諸研究を良く吟味し、軍事的合理性に基づいたコンセプトである。
gatesclimull.jpg同コンセプトが日本にとって厳しいのは確か。在日米軍がシャドーフォース化や空洞化する方向は間違いないであろう。しかし中国の脅威を真摯に見つめれば、米国はそのように進まざるを得ず、物事の道理にかなっている。
●大国が制する大陸に面した島国の防衛はかくも難しいのであり、日本国民には重大な決意・覚悟が必要なのである。
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中西教授の誤りも理解できます・・・普天間問題でこれだけ本来の安保問題が「空転・休業」状態にあるのですから・・・まともな情報が日本で報じられない状況ですから・・・

gatesCENTCOM.jpg米国の軍事的な動きを表層的にみて批判する中西教授のような論調が、保守派の方の中に多く見られるようになってきました。
まず第一に中国の脅威というのは「ハイエンドで非対称な」大変困難な脅威であること、第2に米国はそれなりに必死に考えているが日本が旧来の思考の延長で考えているため、厳しい現実に向き合えていない、のが問題です。
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