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ロシアとロシア軍演習を斬る [安全保障全般]

sigeta.jpg茂田宏大使(元イスラエル大使、朝鮮半島問題担当大使、外務省国際情報局長、同ロシア課長等々)は、現役間そして今も、世界のロシア・ウォッチャーがその意見を聞くために足を運ぶといわれる我が国随一のロシア分析者です。

その茂田氏が、6月20日から7月8日まで行われたロシア軍の「東―2010」軍事演習とロシア首脳部の動きを分析されています。夢と幻想を排し、現状を歴史的経緯を踏まえて分析すると以下のようになるようです。厳しい現実です。(7月7日 国際情報センターより)

●結論は・・・
・メドヴェージェフ発言を見る限り、ロシアは日本との協力に期待はしていないと判断すべきであろう。ロシアが経済の近代化を図る上で、日本の協力を求めるであろうとの説が日本国内にはあるが間違いであろう。
RussianPair.jpg・ソ連帝国に傾倒し、スターリンの功績を強調するプーチン・メドヴェージェフ政権は、北方領土問題について話し相手にならないと指摘してきた。この政権は、標準的ではない独創的な考えで解決を、と言った舌の根も乾かないうちに、旧来の立場を繰り返すような政権である。

・北方領土問題解決について、ロシアが経済の近代化のために日本との協力を必要とし、いま「機会の窓が開いている」などと言う人は、国際情勢判断が出来ない人である。今度の一連の事件は、そういう人の目を覚ます効果を少なくとも持つだろう。

●演習自体の状況は・・・
・7月5日付モスクワ・タイム紙によると、演習には約2万の兵士、火砲その他の軍事装備5000以上、40隻以上の艦船、約75機の航空機やヘリが参加
・この演習の一部が択捉島での行われるとの報道に関連し、7月2日、岡田外相は択捉島での演習は、北方4島に対するわが国の法的立場に鑑み、受け入れられないとしていたが、ロシア軍は7月5日、択捉島で兵員1500名以上を投じて、仮想敵殲滅のための偵察・捜索、戦車や自走砲部隊の砲撃などを行った。

●ロシア大統領の発言・・・
・演習を視察したメドヴェージェフ大統領は、「我々はここ(アジア・太平洋地域)に存在する諸問題を考慮して・・わが国の安全を保障する準備がなければならない。
他の地域に比べ、それほど多くの問題があるわけではないが、ここでも問題はある。・・・こういう類の訓練はこの地域での課題を解決する我々の能力を示さなければならない」と述べた。
・演習に先立つ経済関係会議で、メドヴェージェフは中国、インド、韓国、モンゴル、米国その他との協力に言及したが、日本についての言及は全くしなかった

●領土問題との関係・・・
hoppou4.jpg・2月初めにロシアが発表した軍事ドクトリンで、ロシアへの脅威として「ロシアへの領土要求」が明記された。ドイツやフィンランドや中国や東欧諸国はロシアに領土要求をしておらず、領土要求をしているのは日本しかない。
・この演習が日本を仮想敵とし、ロシア主張領土に上陸した日本軍を追い落とすために上陸作戦や空挺部隊降下の訓練をその一部として含んでいること、日本への示威も意図したものであることは、メドヴェージェフの発言からも、明らかである。(以上、茂田宏氏のコメント)

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懲りない面々、とはロシア首脳を表現するのに有るような言葉ですね・・・・。こちらから「尻尾を振る」ようなことがあっては成りません・・・。
ところで・・・『いま「機会の窓が開いている」などと言う人は、国際情勢判断が出来ない人』との表現がありますが、これは誰のことでしょうか? ご存じの方いらっしゃいますか?
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追加:ブログ「海洋戦略研究」7月9日付記事より
   ●中国での関連報道は・・・
ChinaRussiaB.JPG6日中国「東方ネット」は、「ロシア軍事平等ネット」の報道を引用しつつ演習の概要を説明した後、今回の演習地点の選定や、兵力と装備の配置方式から「ロシア軍事演習は、中国に実力を見せつけるためだ」と主張している。
・東方ネットは、ロシア中西部から極東及び中国と隣接する地区に大量の部隊と装備を迅速に調達したとレポートし、「その動きは、国の中心部から極東地区に大量の兵力を迅速に調達する能力を持っているとのメッセージを中国に送り、中国の軍事脅威を牽制できることを証明するため」と分析している。

●ロシアの狙いについて・・・
第一は、北極航路を守るための地上からの支援、広域機動展開能力の維持であろう。シベリア鉄道と北極航路の連結であろう。なお、中国も同様に中国国内鉄道と真珠の紐戦略を連結する考えがあるようである。
第二は、日本の北方領土に対する緊急展開能力の誇示であろう。
第三に、周辺国に対する緊急展開能力の誇示であろう。
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おまけ:「ゲーツ改革のまとめと整理」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-17
「400記事記念 反響大の記事特集」http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-06-18

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