産経の誤り X-51Aは初期実験段階 [米空軍]

【ワシントン=佐々木類】初の飛行実験を25日に行う米空軍の超音速航空機X-51Aは、核兵器を削減する一方で新たな通常兵器の実戦配備により軍事的優位を確保し、これを抑止力とするオバマ政権の新戦略の柱となる。
オバマ政権は4月、「核戦略体制の見直し」の中で、核兵器削減などの大胆な方針転換に踏み切った。同時に、潜水艦搭載の核搭載型巡航ミサイル「トマホーク」の退役も発表。「核の傘」への懸念を示す日本側に対し、大陸間弾道ミサイルや潜水艦発射弾道ミサイルで抑止力をカバーするとしていた。
こうした大胆な戦略転換を可能とした背景に、「地球の裏側でも1時間以内に攻撃できる」(米空軍研究所)という、通常即応グローバルストライク(PGS)と呼ばれるX-51Aの開発成功があった。

ただ、高高度を飛ぶX51Aが核弾頭を搭載しているかどうか識別が難しく、米国による先制核ミサイル攻撃と誤判断する恐れがあるとロシアは反発している。(以上記事の引用)・・・・・
(Holylandコメント)
重要な話題なので産経の報道姿勢は評価しますが、この記事には大きな誤りがあります。X-51Aは米空軍研究所がボーイング等と長く研究しており、米時間25日に試験が行われるのは確かで、先週21日に米国内で発表会見の模様が伝えられていました。B-52爆撃機から投下する形でスクラム・ジェットの試験を行うようです。
しかし、産経の言う「X-51Aの開発成功があった」(過去形表現)は誤りだと思います。
米空軍HP、先週の各種報道や空軍研究所のブリンク(Charlie Brink)研究責任者によれば・・・
●超超音速飛行を支えるスクラムジェットはこれまで水素を燃料として検討(X-43等)されてきたがタンクが巨大となり、最長でも10秒間しか飛行できなかった。そこで炭化水素を燃料とするX-51Aのスクラムジェットの開発を目指しているが、これまではうまくいっていない(haven't gone well)。

●これは実験的なテストであり、非常に複雑なモノである。「ハリケーンの中でマッチに火をつける様な難しさ」がある。5分間の飛行テストでデータを収集する。この300秒の試験でスクラムジェットの飛行について多くを学べるだろう。
●予算と実験場の確保問題から開発は遅れている。本年度は昨年12月から4回試験を実施予定であったが、25日の1回だけになってしまった。経費不足のため、本試験後は来年度まで試験は出来ない。もし本試験が成功すれば、ジェットエンジンの登場に匹敵する時代の変革になろう。成功すれば、超超音速兵器や宇宙ロケットの上昇過程の一部で使用でき、ロケットを小型化できるかもしれない。

産経の「ワシントン=佐々木類」君には正確性を今後は追求していただきましょう!!! 日本の安全保障にとっても、非常に重要なCSMやPGSに関することですから・・・。
「核抑止の代替?CSMについて」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-25
「PGSのHTV-2試験失敗」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-27
「CSBA中国対処構想」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「嘉手納から有事早々撤退?」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13
「(Ver.2)QDRから日本は何を読みとるべきか」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-01-1
「米の対中国新作戦はJoint Air-Sea Battle」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-05
「どんな兵器を:Anti-Access環境対応」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
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