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海軍海兵隊とも全面対決へ [ゲーツ前国防長官]

注意!! → Holylandを防衛研究所の菊池茂雄氏や高橋杉雄氏と勘違いしている人がいますが、間違いです。大変迷惑しています。「はてなアンテナのvon-mansteinさん」には訂正をお願いし、修正していただきました。

gatesNAVYL.jpg3日、ゲーツ国防長官は海軍協会の定例総会(Navy League’s annual Sea-Air-Space Convention)で、居並ぶ海軍・海兵隊幹部や関連企業関係者を前に講演を行い、「空母11隻態勢は今後30年間維持すべき態勢か」、「再び大規模な着上陸作戦があるのか」などと疑問を投げかけ、更に「米国が抱えている多大な過剰戦力(overmatch)と敵対者が備えつつある対艦能力について考えるべき」と述べ、60年以上変わらない旧態然とした思考体系(Embedded Thinking)を厳しく批判し、「将来も艦艇建造予算の伸びは期待できない」と突き放しました。空軍だけではなく、海軍・海兵隊にも矛先が向き始めました。

国防省HPの記事から概要を紹介します
 記事は →http://www.defense.gov/news/newsarticle.aspx?id=59000
 Transcriptは →http://www.defense.gov/speeches/speech.aspx?speechid=1460

現状認識
海軍海兵隊は変化する世界と共に変化していかなければいけない。新たな挑戦、新たな技術、新たな任務に適合するようにデザインされなければならない。
2006年、非国家主体であるヒズボラは入手した対艦ミサイルでイスラエル海軍を攻撃し、イランは弾道ミサイル、巡航ミサイル、対艦ミサイル、機雷、高速艇などで地域の海軍に対抗しようとしている。

gatesNAVYL2.jpgしかし海軍の空母戦闘群を中心とした海軍戦略は1942年以来全く変化がない。米海軍艦艇の総排水量は世界最大で、少なくとも追随する13カ国の総排水量をも上回っている。しかも13の内、11カ国が同盟国である。
搭載ミサイルに至っては追随20カ国の合計より多い。空母は他国の総計の2倍以上を保有している。このような現状の過大(overmatch)な状況を認識してほしい。同時に、敵の対艦能力の向上を見てほしい。フォード級空母に航空戦力が搭載された1.5~2兆円もの価値が危機にさらされているのである

海兵隊は10隻もの大型上陸作戦用艦艇を保有している。しかし世界には同型艦を3隻以上保有している国はないし、保有国はすべて同盟国である。
(注→5月9日のテレビ東京日高義樹のワシントンリポートで大げさに報じていたエセックスもこの10隻の中の1隻です。)

対艦兵器の射程が延伸して作戦発起点がより沖合に遠のく中で、もう一度大規模な着上陸作戦を行うことが自然かどうかをよく考えてほしい。第2次大戦で日本軍を破ったドクトリンが、その能力が依然として起こりうる将来のシナリオに必要なのかを再考すべきではないか

●変化の兆しと期待される方向性
海軍海兵隊は既に21世紀の課題に挑み始めている。ギニア湾で、ジブチで、南東アジアで、アフリカの角で、ハイチで、そしてメキシコ湾で・・・。数万の水兵が陸上で陸軍や海兵隊と勤務し、アフガンのPRTで多様な任務に就いている。アフガンではタリバンにより荒廃した村を海兵隊が立て直した現場をこの目で確認した

しかし、依然として革新的な戦略や統合への指向が必要である。海軍と空軍が「Joint Air-sea battle concept」開発に合意したことに勇気づけられる。20世紀後半の「Air-land battle」を思い起こさせる本コンセプトは、21世紀の抑止力たる可能性を持っている。
しかし軍はまた、フルスペクトラムの戦いに備え、より遠方を監視し攻撃できるシステムに投資をシフトしなければならない。遠距離を飛行、給油攻撃できる無人機やISR能力が海軍に求められるのではないか。

●旧態然とした思考体系(Embedded Thinking)を批判
gatesNAVYL4.jpg私のバランスのとれた戦略を、今の戦いに力を入れすぎている、と非難する声がある。しかし現実には、ローエンドに特化した予算配分は全体の僅か10%程度に過ぎない。
過去2回の予算編成サイクルで、私は必要なシフトを指示した。しかしそれは決して劇的なものではなかった。特に海軍関連の明らかな過剰装備(overmatch)を考えれば・・・
資源配分の議論をすると、常に能力不足分野に関する話題になる。そしてその際解決策として提示されるのは、常に現有装備の増加かバージョンアップである。このようなアプローチは、限られた資源しか持たない敵が我々に想像力あふれる非通常型の画期的な手段で対峙してくることを無視している。

海軍海兵隊が肝に銘ずるべきは、今の戦いが収まろうとも、陸軍や海兵隊の再構成のため、また部隊やその家族のケアのために外せない支出が長期的に必要なことだ。言葉を換えれば、現在想定されている程度から急激な予算の伸びは無いのである。
我々は最終的に、5千億円の艦艇、7千億円の潜水艦、1兆円の空母を本当に調達し続けられるのかを問いかけなければならない。

gatesNAVYL3.jpg●Holylandの感想
最後の部分では、現場で出会う海軍海兵隊兵士の働きには目を見張るものがあり、彼らが将来を担ってくれるものと確信している、と結んでいます。しかし裏を返せば、今の幹部達には期待していないよ・・ともとれる表現になっています。耳が痛い人が・・・日本にも・・世界中にも・・

ゲーツ長官が米シンクタンクCSBAの研究者の考えを伝え、無駄戦力を語った」と、CSBAのサイトはお祭り騒ぎの喜びようです(5月6日現在)。
 → http://www.csbaonline.org/2006-1/index.shtml

「CSBA中国対処構想」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18

「嘉手納から有事早々撤退?」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13
「ゲーツ長官が国防省と議会にも宣戦布告」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-09

(空軍との対決宣言)「ゲーツ長官が空軍へ最後通牒」
   → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2009-09-17
「(追加)海軍海兵隊とも全面対決へ」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-07

(付録)
「Air-Sea Battle Conceptの状況」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-23-1
「QDRから日本は何を読みとるべきか(Ver.1)」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
「(Ver.2)QDRから日本は何を読みとるべきか」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-01-1

「どんな兵器を:Anti-Access環境対応」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
「Anti-Access環境への対応コンセプト」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-03
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