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核抑止の代替?CSMについて [安全保障全般]

注意!! → Holylandを防衛研究所の菊池茂雄氏や高橋杉雄氏と勘違いしている人がいますが、間違いです。大変迷惑しています。「はてなアンテナのvon-mansteinさん」は訂正をお願いします。

CSMTRAJECTORY2.jpgCSMとはConventional Strike Missileの略で、一般的には「非核攻撃ミサイル」と日本語で置き換えられることが多いようです。
6日に発表されたNPR(核態勢見直し)関連で改めて注目を集めることになりました(とは言っても、フジテレビのニュースで短い紹介があったようくらいですが・・・)。このCSMは、益々複雑化する世界の脅威に対応するPGS(Prompt Global Strike:全世界の標的を射程に入れた即時攻撃)構想を支える兵器です。

特に、NPR発表直後の週末ニュースTV番組に登場したゲーツ国防長官が以下のような受け答えをしたこともCSMやPGSへの関心を高め米軍の空洞化が懸念される日本の安保関係者の注目を集めるきっかけとなりました。

11日のABCとNBC番組でのやりとり要旨
Q→ 大量破壊兵器拡散の中で、北朝鮮やイランの核開発の中で核兵器を削減して問題ないのか? ブッシュ政権時に国防長官だった頃は、核兵器の削減など考えなかったのではないか?
A→ 冷戦当時とは状況が変化した。我々は冷戦当時は保有していなかったミサイル防衛システムの配備・改良を日進月歩で進めつつあるし、通常兵器による代替であるPGSを進めつつある。NPRや新START条約によっても米国は力強さを増す。

それではCSMとはどのようなものか(かき集め情報です。要注意)
●これまでのICBMの弾頭に非核の弾頭を搭載します。ICBMとの違いは、ICBMが一度大きく宇宙に出て宇宙から降るように着弾するのに対し、CSMは最短距離である大気圏内を超音速で飛翔して目標に着弾します。これにより7千マイル先の目標では到達時間が51分が45分に、9千マイルでは76分が52分に短縮すると言われています。
●ちょっと気になる発言では、本年2月にシュワルツ空軍参謀総長が「PGSで地球の裏側が数分(in a few minutes)で攻撃できる様になる」と発言している点です。数分は少し大げさでは・・昔みたいに宇宙空間にミサイルランチャーを配置しておくならまだしも。

CSMtop.jpg弾頭には3種類ほどのオプションが検討されており、クラスター爆弾風、電柱大の貫通金属棒(槍)、金属片高速広範囲散布がその候補です。後者2つはいずれもマッハ20もの高速で飛来し、強烈な衝撃で面や点を制圧するものです。後者2つは、なんと核開発に携わってきたサンディア国立研究所の「ロッズ・フロム・ゴッド(rods from god)」とローレンス・リヴァモア研究所の「ヘルストーム」というものです。
米空軍はミニットマンⅢの弾頭部分を活用して、海軍はトライデントを活用して研究を行っている様です。ブッシュ政権時にあまり進展しなかったのは、「発射時にICBMと区別ができず、誤解から混乱を招く」との議会の反対があったからです。

CSM開発の進捗状況は・・・
minittomann.jpg●海軍の進捗は分かりません。米空軍は大気圏内を超音速で飛行する際に弾頭を保護するPDV(Payload Delivery Vehicle:ペイロード運搬体)の試験をカリフォルニアのバーデンバーグ基地を拠点行っている模様で、本年2回目の試験がある予定です。左記を報じるAir Force Magazineの昨年7月号は、2012年予定のミサイル全体の試験開始に向けPDVに目処をつけ、2015年にはCSMを米戦略軍で運用開始する予定と報じています。
●米空軍は参謀総長が2月9日に発表した「2010年米空軍態勢ステイトメント」(The 2010 Air Force Posture Statement)でPGSやCSMに関し、「国防省が通常弾頭PGSを分析し、配備されれば戦略的安定に寄与する同システムの効果を調査する」(the Department of Defense also plans to analyze conventional prompt global strike prototypes and will assess the effects that these systems, if deployed, might have on strategic stability)と記述している。

CSMTrident-II.jpg米海軍に関してはよく分かりませんが、NPR公表後、米主要軍事情報サイト「DefenseTech」が「海軍が研究開発に取り組んできたトライデントのPGSはどうなるんだ」、「中国のDF-21を黙ってみているのか」、「日本や韓国もDF-21の脅威下にあるのだから、彼らにも危機感を持たせろ」との論陣を張っています。

そもそもPSGの発端は・・・
●核兵器の使用はハードルが極めて高い(使えない)
●核兵器維持の財政的負担 老朽化弾頭の維持管理、セキュリティーの問題。
●加えて核戦力運用部隊の志気維持が極めて難しい課題
●移動式発射能力を備える傾向にある対象国のミサイル部隊を攻撃するには、発見から攻撃までを短時間に行えるシステムが必要
●発達してきたISR能力を生かせるグローバルな攻撃能力がほしい・・・ 等の背景があります。

よくわからない点も多く、まだまだ開発に時間がかかりそうです。オバマ大統領が核を減らしたいと言ったので、後付で復活したような雰囲気もありますが・・・米軍の有人部隊が空洞化しそうな日本にとっては何とか実用化してもらいたい兵器です。
(関連記事)
「PGSのHTV-2試験失敗」
→ http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-27

「CSBA中国対処構想」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-18
「嘉手納から有事早々撤退?」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-13
「ゲーツ長官が国防省と議会にも宣戦布告」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-05-09
(付録)
「Air-Sea Battle Conceptの状況」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-23-1
「QDRから日本は何を読みとるべきか(Ver.1)」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
「(Ver.2)QDRから日本は何を読みとるべきか」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-04-01-1
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