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米海軍航空戦力の将来(前編) [Joint・統合参謀本部]

f35c.jpgAFA発行Air FORCE Magazineの12月号に、米海軍航空戦力の将来(近未来)に関する記事「A Specter Haunts the Carrier」が掲載されました。空軍関係者への雑誌に掲載されただけあってわかりやすくコンパクトで参考になるので2回に分けて紹介します。

記事全体に、「太平洋のnear-peer脅威」との表現で中国を明確に意識した表現や海軍幹部の発言があり、国防長官をはじめとした政治家レベルの表現と異なり極めて明確に中国を仮想敵扱いにしています。
海軍航空戦力の整備に関しては、全般にゲーツ国防長官の改革による荒波をそれほど受けず、米空軍への「引き潮」QDRとは対照的に、改革開始前に必要なものを確保した状況が伺えます。ただし戦闘機不足は空軍と共通のものがある一方で、空母への無人機搭載への取り組みが極端に消極的であることが印象的です。

Holylandの印象としては、「イラクとアフガンが終わったら、また空軍とともに世界に展開するぞ」との幹部の発言が示すように、ゲーツ国防長官が嫌う古典的思考に捕らわれた「次の戦争狂」(第2の湾岸戦争を待ち望む治療不可能な旧思考の軍人)が幅を利かせている世界のようです。
本日は前編として、脅威認識、航空戦力整備全般、ファイターギャップについて取り上げます。なお、明日の後編では空母、艦載無人機の検討及び新早期警戒機E-2Dを取り上げます。

●脅威認識関連
walshpaf.jpgウォルシュ太平洋海軍司令官(Admiral Patrick M. Walsh 写真)「君たちの航空機、戦術、センサーを打ち破れると確信する敵と対峙することになろう」、クラフト米海軍情報部長(Rear Admiral Terry B. Kraft)「次の10年で、中国海軍は米海軍よりも多くの艦船を保有するだろう」等の高官の認識が紹介されています。
中国の防空能力、航空機や弾道ミサイルは大きな脅威である。空母を標的にしたDF-21が典型。空母を直撃できる能力までいかなくても、少なくとも空母の防空能力を飽和させる程度の攻撃能力は、中国が近く保有するだろう。このような攻撃は空母の航空機運用能力を著しく低下させる。米空軍との違いはステルス機を保有しないことである。等々の身に迫った脅威を危惧する見方が根本のようです。

●米海軍の航空戦力整備全般
空軍予算が「引き潮」状態にあるのとは対照的に、09年と10年予算を比較しても海軍航空戦力予算は約4000億円の増額を享受しています。
ea18grow.jpgbams.jpgFA-18スーパーホーネットは97年から09年の間に449機を調達。電子戦攻撃機EA-18(写真)、新早期警戒機E-2D、新対潜哨戒機P-8、グローバルホークを改良した陸上発着型ISR機BAMS(Broad Area Maritime Surveilance:写真右)などの初飛行や開発が過去数年順調に進められている模様です。BAMSは68機、P-8は108機が調達予定だそうです。

●ファイターギャップ(戦闘機不足への対応)
fa18sh.jpg現有F-18を現在のペースで運用続ければ、米海軍は2016~2020年の間に戦闘機不足に見舞われます。現在11隻の空母に対し、10個航空団を維持してローテーション対応していますが、FA-18の退役に伴い、継続的な運用に必要な1航空団44機態勢を維持できなくなります。
後継機のF-35を海軍が受領するのは海兵隊や空軍の後になるため、不足が生じることになります。緊急避難的な措置案として、1機当たり約20億円の延命措置やスーパーホーネット買い足し案があるようです。

●F-35への期待
F-35の海軍バージョンはF-35Cですが、海軍関係者の期待は非常に高い模様です。ステルス能力を発揮しての戦闘開始緒戦の敵防空網制圧だけでなく、その後の地上支援任務などのも柔軟に対応できる能力が高い期待を集めているようです。

前編はここまでとします。明日の後編では空母、艦載無人機の検討及び新早期警戒機E-2D等を取り上げます。

(付録)QDR対中国の新作戦構想に関する部分(Holyland推定
   → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-05

「QDRから日本は何を読みとるべきか」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
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