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核抑止に関する「はてな?」の議論 [安全保障全般]

春名幹男.jpg来年3月で休刊が決定した月間情報誌「フォーサイト」2010年1月号で、名古屋大学の春名幹男教授が米国のアジア核戦略について述べています。僅か1ページのエッセイ風のもので、著者の主張や疑問が曖昧でよくわからないのですが、日本の雑誌にQDRやNPR(Nuclear Posture Review:核態勢の見直し)について掲載されるのこと自体がまれなので、取り上げます。

ちなみに、春名氏はNPRを「核体制見直し」と訳していますが、政府の各種公式文書では、NPRはより具体的な運用概念までを包含した「態勢」との訳になっており、なぜ「体制」にしているのか伺いたいところです。NPRはエッセイのキーとなる話なので、単なる誤訳(多分そうでしょうが、)ならがっかりですが・・・。

春名氏のエッセーでは・・
ロス級全体.jpg●09年3月にオバマ政権に入る予定の友人から、「日本はどんな拡大抑止が必要なのか?」と質問され、答えに窮した。
●「米国の戦略態勢に関する委員会」の報告(09年5月)の中に「アジアの拡大抑止は、原潜搭載の核巡航ミサイルに大きく依存しているが、これが2013年には退役予定である。(中略)委員会の作業の中で一部の同盟国がこの退役を強く懸念している」との記述がある。そして「一部の同盟国」とは日本である。
●英紙によれば、オバマ大統領はQDRとNPRの検討作業で「(核の削減に)臆病すぎる」と国防省の案を一蹴した。
●米情報機関は中国海軍の増強に危機感を示し、「米空母攻撃ミサイル」や「対艦巡航ミサイル」を脅威に挙げ、その他活動活発化にも警戒感を示している。
●QDRとNPRは在日米軍再編・辺野古移転と密接に絡む。核巡航ミサイルがなくても、潜水艦発射弾道ミサイルで抑止力は維持できるが、なぜ日本が核巡航ミサイルにこだわるのか不明。日本が巡航核ミサイル存続派と見られる恐れがある。

cruise missle.jpgHolylandは、射程が長く重みのある弾道ミサイルだけでなく、小回りの利く核巡航ミサイルも存続した方が運用の柔軟性が確保され、段階的で実効的な抑止力に繋がると思うので、日本の態度は当然だと思うのですが・・・。辺野古移転の話と核抑止の強引なリンケージも意味不明なのですが・・・。また核ミサイル専門から巡航ミサイル型へ4隻改修されたオハイオ級との関連も触れられていませんし・・・。

cruise.jpgましてや、中国の軍事増強に対してゲーツ国防長官が「特に海外基地と空母機動部隊に対して(中国の軍事増強は脅威)。これらは足の短い戦闘機の有効性を殺ぎ、いかなる形であれ遠方攻撃能力の重要性を増す。」と公言している最中ですから、「プラハ演説」の雰囲気に惑わされないで、日本に米国を引き留める努力が必要だと思うんですが・・・。まあ春名氏は以前から、旧帝大教授の割にはちょっとセンセーショナルなトピックを安保分野に提供して世間を渡る「週刊ポスト」みたいな方ですから・・・

(付録)
「どんな兵器を:Anti-Access環境対応」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-04
「Anti-Access環境への対応コンセプト」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-03-03
「QDRから日本は何を読みとるべきか」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-07
QDRにおける対中国の新作戦構想に関する部分(Holyland推定
   → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-05
「Joint Air-Sea Battle Conceptは平成の黒船」
  → http://holyland.blog.so-net.ne.jp/2010-02-09
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